石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

「彼の名はザンダーだった」 自死したトランス少年をSNSユーザが追悼

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Tumblr / clasesdeperiodismo

2015年2月15日、米国ジョージア州の15歳のトランスジェンダー少年が、Tumblrに遺書を残して自死しました。無理解な家族に苦しめられ、葬儀にも女性名と女性代名詞を使われた彼に追悼をささげるキャンペーンがSNSで広がっています。

詳細は以下。

Tumblr Users Honor The Memory Of Transgender Teen Who committed Suicide

彼の名前はザンダー・マハフィー(Zander Mahaffey)。サウスコブ高校の1年生でした。以下、Tumblrの遺書から引用します。

ぼくの名はザンダー・ニコラス・マハフィー(出生時の名前はサンドラ・ニコール)。ぼくは男です、たとえそう見えなくても。心の中では自分は男だとわかってます。

My name is Zander Nicholas Mahaffey (at birth, Sandra Nicole.) I am a boy, even if the word doesn’t see me as one. But I know in my heart I am a boy.

ここから先を読んでいくと、もう本当にどこにでもいる15歳の子供なんですよ彼。コーラが好きで、ゲームが好きで、アニメも好きで、いちばん好きなアニメは『家庭教師ヒットマン REBORN!』。遺書の中には、『ダンガンロンパ』や初音ミクつながりで仲良くしていた友人たちに宛てた部分もあって、今どきのよくある高校1年生な感じ。

でも彼には性的暴行を受けた過去があり、家族からは精神的な虐待を受けていたのだそうです。3000語を超える長い長い遺書の末尾には、こうあります。

こういう時に自分のことばっかり考えていてごめんなさい、ほんとうにごめんなさい。このことで傷ついたりショックを受けたりする人がいるだろうということはわかっています。ほんとうに、ほんとうにごめんなさい。他に何と言っていいかわかりません。ただ疲れてしまったんです、疲れてしまって、眠りたいだけなんです。

I’m sorry, I’m so sorry that I only think about myself in this situation. I know there’s going to be people hurt and devastated by this. And I’m so, so, sorry about that. I don’t know what else to say. I’m just so tired, I’m so tired and I just want to go to sleep.

彼の家族は死亡告知でも葬儀でも「サンドラ・ニコール・マカフィー」の名前を使い、女性扱いで通しました。

何が衝撃的って、米国ではこのほんの2ヶ月半ほど前に別のトランス・ティーンが死を選んだばかりだということ。オハイオ州のこの少女、リーラ・アルコーン(Leelah Alcorn)さんもまた、無理解な親に最後まで自分のジェンダーとは違う代名詞を使われていました。リーラさんの「社会を直して。お願い」(Fix society. Please.)という悲痛な遺書は大きな反響を呼んだのに、まだ全っっ然直ってないわこの社会。

ザンダーさんの死を受けて、Tumblrなどのソーシャルメディアのユーザの間で、ハッシュタグ#HisNameWasZander(訳すと『彼の名はザンダーだった)」を用いた追悼キャンペーンが繰り広げられています。たとえばTumblrには、こんな投稿が。

左の手のひらに「#HIS NAME WAS ZANDER(彼の名はザンダーだった)」、右の手のひらに「#HER NAME WAS LEELAH(彼女の名はリーラだった)」。両手の甲を合わせると「REST IN POWER(安らかに眠れ)」。ザンダーさんとリーラさんの両方をしのぶメッセージですね。

以下、Twitterでみつけたメッセージをいくつか貼ってみます。

リーラ・アルコーンさんが亡くなったとき、トランス女性のMya Adriene Byrneさんという方が、トランスジェンダーの人々が自死したり殺されたりすることは社会に対する告発だとAdvocateで書いてらしたんですよ。これはどこにでもあることで、社会を変えなければ何度でも起こることだと。そのByrneさんが、今度は米ハフィントンポストで以下のように書いておられて、強く共感しました。

非トランスの皆さんへ。声を挙げてください。わたしたちに賛成するためにではなく、わたしたちの話を、生き方を世に広めるために、個人のメディアで、家で、ブログで声を挙げてください。わたしたちの死を正確に、礼儀正しく伝え、現在起こっていることを報道するときわたしたちのポジティブな話も含めるようにと、購読紙にはたらきかけてください。

Non-trans folks: we need you to speak up. Not to speak for us -- but to amplify our stories, our lives -- on your personal media, in your homes, on your blogs. Lobby your newspapers to report our deaths accurately and respectfully, and to include our positive stories in their coverage of current events.

ハッシュタグ「#HisNameWasZander」や「#HerNameWasLeelah」でメッセージを発信することも、この「声を挙げる」ということなのだと思います。あたしはTumbrもTwitterもやっていませんが、「日本のアニメやゲームやボーカロイドが好きだった15歳の子にこんなことが起こったんだよ、全然ひとごとじゃないんだよ」と日本語で伝えたくて一生懸命このエントリを書きました。これを読まれた方のうちたとえひとりでも、自分の子や身近な子どもがトランスキッズだったとき、間髪入れずにサポートに回って下さるよう、祈っています。