石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

米女優ケリー・ワシントン、第26回GLAADメディア賞受賞式でパワフルなスピーチ

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米ドラマ『スキャンダル』の主演女優ケリー・ワシントンが、第26回GLAADメディア賞のヴァンガード賞に輝きました。受賞式でのパワフルなスピーチが感動的だと評判になっています。

詳細は以下。

Kerry Washington Gives Powerful, Moving Speech at 2015 GLAAD Media Awards—Watch the Video and Read a Transcript! | E! Online

ヴァンガード賞とは、エンタテインメント業界でLGBTの人びとの平等な権利のために大きく貢献した人に授与される賞。ケリー・ワシントンは以前からLGBTアライとして有名な人です。

スピーチの動画はこちら。

ケリーはまず、スピーチ導入部で「月曜日の朝、みんなあの『スキャンダル』の女優が例の賞で何を言ったんだろうと思ってリンクをクリックするでしょうから、言っておくべきことがちょっとあると思うの」と軽く笑いを取ってから本題に入ります。

世の中には完全な市民権を手にしている人とそうでない人がいること、そして後者は教育、医療、結婚、選挙手続き、雇用などについて公正な扱いを受けていないことについて説明した後、スピーチは以下のように続いて行きます。

「さて、限られた権利しか持たない人たちは結束して力を尽くして戦い抜くだろうと考える人もいるでしょう。しかし歴史が示すところでは、そうではないのです。そうならないことが、しばしばあるのです」

「女性や、貧しい人々、有色人種、障害のある人、移民、ゲイ男性、レズビアン、バイセクシュアル、トランスの人たち、インターセックスの人たちは……わたしたちは互いに張り合い、『その他』のカテゴリーに分類されている自分たちのテーブルには限られた席しかないかのように思わされて来ました。

"Now, you would think that those kept from our full rights of citizenship would band together and fight the good fight. But history tells us that no, often, we don't."

"Women, poor people, people of color, people with disabilities, immigrants, gay men, lesbians, bisexuals, trans people, inter-sex people, we have been pitted against each other and made to feel like there are limited seats at the table for those of us that fall into the category of 'other.'

マイノリティ同士は拒絶し合うのではなく助け合わねばならないというのがケリーの意見。1960年代までは異性愛者であっても異人種間では結婚できなかったと述べてから、彼女はこんな風に論を進めます。

「だから、黒人が今日わたしに同性婚の正統性を信じないと言ってきたら……(拍手が起こり、スタンディングオベーションとなる)……わたしはまずこう言います。『あなたに憎悪のメッセージを注ぎ込んで、あなた自身の利益に反する投票をさせるようなことは、どんな人にだってやらせちゃダメ』。それからこう言うの、『あなたやあなたの愛について、かつて何て言われていたか知ってるでしょ。わたしたちが生きてる間に、政府が愛を法律で規制し始めるのを許したら、次は誰の番だと思う?』」

"So when black people today tell me that they don't believe in gay marriage...(applause break, standing ovation)...So, the first thing that I say is 'Please don't let anybody try to get you to vote against your own best interest by feeding you messages of hate.' And then I say, 'You know people used to stay that stuff about you and your love and if we let the government start to legislate love in our lifetime, who do you think is next?'"

おみごと。

また、レズビアン役(She Hate Me)やトランスジェンダー役(Life Is Hot In Cracktown)の経験がある女優としての、こんな発言もよかったです。

「自分がこの賞をいただいた理由の一部が、しばしば社会の末端に追いやられてしまう階層のキャラクターをわたしが演じていることにあるということはわかっています。わたしは女性で有色人種ですから、そのことについては選択の余地はあまりないんですね。でもわたしはまた、常に自分から選んで、LGBTコミュニティの人びとについての物語に加わってきました」

「しかし、ここに大きな皮肉があるのです。わたしが自分の役を演じようと決めるとき、政治的選択としてそうしているわけではありません。でも、わたしの演じる人物は、しばしばまさに政治的なメッセージとなります。なぜなら、女性や、有色人種や、レズビアンや、トランスの人や、または何であれ公民権を奪われたコミュニティの人物に物語の語り手をつとめさせるというのは、残念ながらいまだに急進的な考えであることがしばしばだからです。物語を語ることには、とても大きな力があります。そして、どんな人でも受け入れる物語や、どんな人でも受け入れる描写には、きわめて強大な力があります」

「だからGLAADの働きがとても大事なんです。もっとたくさんのLGBT描写が必要です。もっと多くのLGBTキャラクターや、LGBTの物語が必要です。もっと多様なLGBT描写が必要なんです、つまり、ありとあらゆる生き方をしている、さまざまなLGBTの人びとの描写が。それからこれが大事―LGBTの人びとをもっとたくさん雇うことが必要です、カメラの前にも後ろにもね!」(ここでスタンディングオベーション)

"I know part of why I'm getting this award is because I play characters that belong to segments of society that are often pushed to the margins. Now, as a woman and a person of color, I don't always have a choice about that. But I've also made the choice to participate in the storytelling about the members of the LGBT community.

"But here's the great irony: I don't decide to play the characters I play as a political choice. Yet the characters I play often do become political statements. Because having your story told as a woman, as a person of color, as a lesbian, or as a trans person or as any member of any disenfranchised community is sadly often still a radical idea. There is so much power in storytelling and there is enormous power in inclusive storytelling and inclusive representations."

"That is why the work of GLAAD is so important. We need more LGBT representation in the media. We need more LGBT characters and more LGBT storytelling. We need more diverse LGBT representation and by that, I mean lots of kinds of different kinds of LGBT people, living all kinds of lives, and this is big—we need more employment of LGBT people in front of and behind the camera!" (Standing ovation)

そう言えば、『スキャンダル』のプロデューサー兼脚本家のションダ・ライムズが去年面白いことを言っていましてね。「『スキャンダル』にはゲイのシーンが多すぎる」という視聴者に対し、Twitterでこんな風に返したんです。

約:「ゲイのシーンなんてありません。人間のシーンがあるだけ」。

ションダは性的少数者のみならず女性や有色人種のキャラが数多く出てくるシナリオをよく書くのですが、そのことについて最近こうも言ってました。「女性と有色人種とLGBTQとで人口の半分よりよっぽど多くを占めているのだから、(そういうキャラを出すのは)ごく当たり前のことです」。「自分はTVを(『多様化』ではなく)『正常化』してるんです」。

ケリー・ワシントンの言う、LGBT描写を作品にもっと取り入れたり、キャストのみならずスタッフにもLGBTを増やしたりすべきだということも、この「正常化」の一環なのだと思います。もともと好きな女優さんだったのですが、今回のスピーチでなおいっそう好きになりました。WELL SAID GIRL, YOU ROCK!