石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

「LGBTが何なのか、日本人は知らなさすぎる」写真家レスリー・キー語る

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日本のLGBTなどセクシュアル・マイノリティのポートレートを撮影するプロジェクト「OUT IN JAPAN」が始まりました。プロジェクト#001で92組111人の姿を撮り下ろした写真家、レスリー・キー氏の談話をハフポストが紹介しています。

詳細は以下。

「LGBT、当たり前になるように」写真家レスリー・キーが語る、自分らしさ。そして愛のかたち【動画・画像】

「OUT IN JAPAN」は、5年間で1万枚のセクシュアル・マイノリティのポートレートを撮影し、その写真を通じてセクマイの可視化や、「カミングアウトをしたいと願い選択する人を、やさしく受け止め応援できる社会づくり」などを目指すというプロジェクト。プロジェクト第1弾では、これまでビヨンセや浜崎あゆみなど世界中のセレブリティーの写真を手がけてきたフォトグラファー、レスリー・キー氏が撮影を担当しています。

実際の撮影風景はこちら。

この撮影で「とても勇気を与えてもらった。幸せをいっぱいもらいました」と語るキー氏は、日本のLGBT事情について以下のように話しているとのこと。

「LGBTが何なのか、日本人はあまりにも情報を知らなさすぎると思う。他の国なら、当たり前のように知っていないといけない。ニューヨークや、ロンドン、パリだったら、ゲイやレズビアン、バイセクシュアル……の人たちを見ても、何も特別だと思わない。特別な人間じゃなくて、普通の人間だと思う。でも日本の人は、まだ普通と思っていない。

LGBTの人たちは普通。私も普通、みんな普通。マジョリティが正しいとは限らない。知らないマジョリティがおかしい、私はそう思います。LGBTを普通と思わないとしたら、9割の日本人がかわいそうです。

これを読んで反射的に思い出したのが、1991年に東京府中青年の家宿泊拒否事件で原告となった同性愛者たちが素顔をさらしてテレビのインタビューに答えたときの、ワイドショーでの反応のことでした。以下、『同性愛者たち』*1(井田真木子、文藝春秋)p. 47より引用。

あるワイドショーの司会者は、
「なんだか普通の人のようなんですが……まるで、隣の家の息子さんのような」
と言って絶句し、アシスタントの女性アナウンサーは、
「でも、普通じゃないんですよね。本当は普通じゃないんですよね」
と嫌悪と茫然自失がないまぜになった表情でいつまでも繰り返した。

それまで、日本のメディアに登場する同性愛者というのは決まって仮名で、画像にはモザイクがかけられ、ボイスチェンジャーを通した女々しい口調でもっぱら性や風俗のことを語るという、「表には出て来られないうさんくさい人々」だったんですよ。ところが「つきなみなスーツを着て」(p. 46)、「少し堅苦しいほど真面目に見える」(同)原告ゲイ男性たちはこのステレオタイプにまったくあてはまらなかったため、スタジオはこうまで混乱したというわけ。

2015年の今、日本は少しは進歩したでしょうか。「隣の家の息子さんのような」セクシュアル・マイノリティ像を違和感なく受け入れられる人は、果たして何パーセントいるかなあ。若い世代はずいぶん変わってきていると思うんですが、その親世代、祖父母世代ともなると、「普通じゃない」というステレオタイプから脱却できない人(つまり、どんなLGBT+を見ても『本当は普通じゃない』ということにして『普通である自分たち』と切断しないと気が済まない人々)がごまんといそうな気がします。日本のこのような状況を打破するには教育が必要だとレスリー・キー氏は指摘しており、あたしはそれに同意です。

キー氏がプロジェクト#001で撮影した111人のポートレイトは、Webサイトでの公開に先駆け、2015年4月21~28日にGapフラッグシップ原宿で展示されるとのこと。時間的な都合で自分は足を運べませんが、行かれた方の感想を、今から楽しみにしています。

*1:この本は現在、『もうひとつの青春―同性愛者たち』と改題した文庫版が、文春文庫から出ています。kindle版もあります。