石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

ドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』(原題:"Orange Is the New Black")シーズン2感想

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シーズン1に劣らぬ面白さ

Netflix製作の大人気女囚ドラマ、シーズン2。新キャラ投入でお話の緊張感を保ちつつ、おなじみのキャラたちの過去がさらに掘り下げられていきます。レズビアン要素も充実。シーズン1同様、力強くて滑稽で、かつ胸にせまる名ドラマです。

まず第1話が最高

シーズン2の最高傑作であり、かつシーズン全体を象徴しているのは第1話。まったく先が読めないパワフルな展開に度肝を抜かれる上、女性同士のラブストーリーとしても超一級です。冒頭の移送シーンでの権力を持つ者と持たざる者の対比(これ、のちにダイヤとベネットの会話なんかでも描かれますね)や、主人公パイパー(テイラー・シリング)の揺らぎを通じて描かれる人生のほろ苦さ、切なさ、皮肉、そして笑いなども、本作全体のテーマをぎゅっと濃縮したものだと思います。

そうそう、パイパーのおばあちゃんが、この第1話の回想シーンでこんなことを言うんですよ。

「正しいか間違ってるかの問題じゃないことも、時にはあるんだよ」

"Sometimes it's not a matter of right and wrong."

この台詞もまた、シーズン2全体の、ひいてはこのドラマ全体の内容を暗示していると思います。「物語の序盤で老賢者がテーマに関連したことを口にする」というのは古今東西の物語や神話の黄金パターンですが、ここではそれが忠実に踏襲されているわけで、本作品の構成の手堅さはこんなところからも読み取ることができます。

(追記:後から気づいたんだけど、この第1話のディレクターはジョディ・フォスターよ!)

レズビアン要素もばっちり

パイパーとアレックス(ローラ・プリポン)の恋を柱に、今シーズンでもさまざまなレズビアン・ロマンスが登場します。セックスシーンも多数、でもヘテロ向けのくそくだらないポルノとは全然違うよ! リアルで、セクシーで、時に最高に笑えて(ヘテロの一部が大好きな『貝合わせ』幻想を笑うギャグなんてのも出てきます)、「監修しっかりしてんなー」としみじみ思いました。もともとレズビアンだったキャラもいれば、刑務所にいるから女性とセックスしているというキャラもいて、そこに別に扱いの差をつけないあたりもいいなと。

特にすばらしかったのが、ナターシャ・リオン演じるところのニッキーですね。シーズン2のニッキーは主にコミックリリーフ担当なんですが、どんなチャンスも逃さずせっせと女の子とやりまくる彼女の姿に、「『はやて×ブレード』の順が実際に女の子とセックスしまくっていたらこんなキャラなのでは」と思ってしまいました。実は頭の回転が速くて洞察力があるところとか、たまに含蓄のある言葉を吐くところとか、なんか、かぶるわ。好きだわ。

ほか、レズビアン視聴者として見逃せないのが、第1話にゲスト出演でロリ・ペティが出てくること。『タンク・ガール』から約20年、今でも全然イケてるわ。むしろ今の方がいいわ。今シーズンではアレックス役のローラ・プリポンがあまり出て来ないという事前情報があり、レズビアンのファンたちはずいぶん嘆いていたものでしたが、こういう形でファン層へのサービスが行き届いているためか、自分としてはそこまで不満に感じませんでした。それに結局アレックスは存在感がありすぎて、全然その場にいない感じがしませんでしたしね。

新キャラと新展開

シーズン1終了時点でパイパーはパイパーなりに強くなっているし、メンデスはいなくなったし、あれほど怖かったレッド(ケイト・マルグルー)も気のいいロシアンおばちゃんになっちゃったしで、今後の葛藤や対立はどう作るんだろうと思ってたんですよ。漠然と「ヒーリー(マイケル・ハーニー)とペンサタッキー(タリン・マニング)が悪役をがんばるのかしら」などと想像していたのですが、正解は思わぬ方向からやってきました。解決策は、「新キャラ投入」だったんでした。

新たなヴィランとして登場したヴィー(ロレイン・トゥーサン)は最後の最後まで強烈そのものだし、新入りの日系人ブルック・ソウソウ(キミコ・グレン)のズレっぷりは初期のパイパーを思わせるし(ズレる方向が多少違ってはいますが)で、このふたりが刑務所内を引っかき回すことでストーリーの幅が大きく広がっています。新キャラ登場でダメになるドラマもあるけれど、OITNBに関しては、この選択は大正解だったんじゃないかと。

新キャラがお話の骨組みを背負ってくれるということは、これまでのキャラをより自由に動かせるということでもあります。ヒーリーとペンサタッキーがなんだか愛すべきお馬鹿さんになっていたり(嵐の夜の、ゲイ・アジェンダについての会話がおもしろすぎ)(タッキーのその後の変化もおもしろすぎ)、突然あの人が再登場して恐怖を振りまいたりという意外きわまりない流れは、おそらくここから生まれたんじゃないでしょうか。そうそう、前シーズンではほぼカフェテリアの背景と化していた老女たち「ゴールデンガールズ」に新たにスポットが当てられていたところもよかった。あれも、ヴィーがいてこその展開だよねえ。

新たな過去、そして伏線

今回も女囚たちの意外な過去がてんこもり。驚いた順番で言うと、こんなかなあ。

  1. モレロ
  2. ローサ
  3. シンディ
  4. プーセイ
  5. レッド(入所当時の)

特にモレロの過去には本気で背筋が凍りました。ローサの過去には、驚きつつも納得。そして、モレロとローサの過去がシーズン最終話のための一種の伏線になっているところに、さらに大納得。単に断片的に過去エピソードを明かしていくだけじゃなくて、それを使って全体をまとめ上げるのがうまいんですよこのドラマ。TVを介さず、シーズン全部を一気に作って一気にネット公開というスタイルだからこそできることなのかも。

まとめ

「新キャラに物語を牽引させる一方、従来のキャラをより緻密に描き込み、驚きのフィナーレにつなげていく」という、たいへんよくできたシーズンでした。レズビアン要素が見たい人のみならず、ハラハラドキドキの力強いドラマを楽しみたい人すべてにおすすめできるクオリティだと思います。

実はこのシーズン2、シーズン3公開(2015年6月12日)直前になって、「やばい、もうシーズン3が始まっちゃう!!」といわゆるビンジ・ウォッチングで一気視聴したんです。それが全然苦にならない濃さとおもしろさで、心の底から堪能いたしました。これで心おきなくシーズン3の視聴にかかれるわ。楽しみだわ。

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