石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

米ガールスカウト団体、「トランスジェンダーお断り」の寄付金10万ドルを返却

Girl Scouts: A Celebration of 100 Trailblazing Years

米国ワシントン州のガールスカウト団体が、10万ドルもの寄付を断りました。寄付者から、このお金はトランスジェンダーの女の子には使わないでほしいと要求されたからです。

詳細は以下。

Girl Scouts Returns $100,000 After Donor Said Money Can't Help Transgender Girls - BuzzFeed News

この団体は、米国ワシントン州シアトルに本拠地をおく「ガール・スカウツ・オブ・ウエスタン・ワシントン」(Girl Scouts of Western Washington)。2015年の春、10万ドルの小切手が寄付されたとき、スタッフはそれはそれは喜んだそうです。このお金があれば、費用の問題でガールスカウトに参加できない子どもたちを500人も支援できますから。

ところがその後、寄付した人からこのお金はトランスジェンダーの女の子には使わないでほしいと求める手紙が届いたのだそうです。もしトランスの子に使うようなら、返金してほしいと。

ガールスカウトは以前から批判にも負けずトランスジェンダー女子の入会を認めていることで有名です。2015年5月には、ガール・スカウツ・オブ・USAから、文化的に女子として生活している子であれば入会できるとする公式声明も出されています。ガール・スカウツ・オブ・ウエスタン・ワシントンは、この10万ドルを全額返金すると即座に決定。同団体CEOのメーガン・ファーランド(Megan Ferland)氏は、BuzzFeedに以下のように話しています。

「これまでにわたしがしてきた決断の中で、もっとも簡単にできる決断のひとつでした」とファーランドは言った。「悲しい決断ではありましたが、決めるのは本当に速かったです」。

“It was one of the of easiest decisions I’ve had to make,” Ferland said. “It was a sad decision, but it was a really quick one.”

「ガールスカウトはあらゆる女の子のためのものです。これまでも、これからも、ずっと」とファーランドは語った。トランスジェンダーの会員は「多くはない」けれども、人数の問題ではないと彼女は述べた。

“Girl Scouts is for every girl. It always has been and always will be,” Ferland said. Although “not a lot” of the girls in their programs are transgender, the total number of transgender girls involved in their programs was not the issue, she said.

この後がすごいの。同団体はハッシュタグ「#ForEVERYGirl」のもと、失った10万ドルを寄付で取り戻すキャンペーンを開始。クラウドファンディングのページを開設し、こんな動画も作りました。

この動画がリリースされたのが2015年6月29日。7月2日現在、クラウドファンディングには早くも30万ドル近いお金が集まっています。最初の寄付金よりよっぽど多いよ! この分なら、500人どころか1500人の女の子を支援できるよ!

クラウドファンディングのページを見ればわかる通り、ガールスカウトってただキャンプしたりクッキーを焼いたりしたりしているだけではなく、女の子のリーダーシップを培ったり、科学や数学など、女の子が排除されがちな分野の学びを促進したりするプログラムを提供したりしてるんですよね。つまり「女だから」という理由で子どもたちが奪われてきた機会を取り戻させようとしているわけで、そこで「シスジェンダーじゃないから」と排除してたら、やっぱり変。CEOの判断にも、それに応えてクラウドファンディングにお金を送った人々の心意気にも、拍手を贈りたいと思います。

それにしても先日の米Yahoo!の件でも思ったんですが、もうそろそろ、何らかの利益をちらつかせて「これが欲しければ差別をしろ」と要求しても通らない時代になってきてるんじゃないですかねえ。「差別に同調しない態度を示すことが、結果的に企業なり団体なりにとってプラスになる」という、そんな時代にさしかかってきている気がします。カネや力で不平等を存続させたい人たちにとっては、認めたくない事実なんでしょうけどね。