石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

男性同士でキスした客を乗車拒否したタクシー運転手、ライセンス停止に カナダ

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カナダ・カルガリーのタクシー運転手が、車内で男性同士でキスをした客に「気持ち悪い」「追い出すぞ」などと発言し、1ヶ月のライセンス停止処分となりました。

詳細は以下。

Calgarian says he was called ‘disgusting,’ threatened by cab driver after kissing man | Globalnews.ca

被害に遭ったノーラン・ヒル(Nolan Hill)さんは、2015年7月4日午後11時頃、男性の友だちとカルガリー・ユナイテッド・キャブズ社のタクシーに乗っていました。ふたりは車内では「ほとんど話をしていた」とのこと。しかしながら、ヒルさんが友だちの口に「ほんの軽いキス」をしたところ、運転手が「この車で男ふたりがキスをすることは許さない。気持ち悪い」と怒り出し、「またやったら追い出す」と脅してきたのだそうです。

ヒルさんたちは目的地に着く前にタクシーを降りようとしました。しかし、ヒルさんの友人が支払いを拒否しようとしたところ、運転手は停まらず走り続けたのだそうです。

「運転手は、お金を払わなければ降ろさないと言いました。そこがいちばん怖かったです」とヒルは語った。「それで、『払う』と言って、お金を払いました。タクシーを降りて、他のタクシーを見つけました。例の運転手は車から降りてきて、わたしたちが乗ろうとしていたタクシーの運転手に向かって、『そいつらはキスしていたぞ』と叫んでいました」。

“He refused to let us out without paying, which was the scariest part,” said Hill. “So I said, ‘We’ll pay.’ We paid. We got out of the cab, and went to find a different cab. The driver got out and was yelling at the next driver we were approaching that ‘these men were kissing.'”

以下、ヒルさんのFacebookより引用。

カルガリーに住んでいるのなら、絶対にカルガリー・キャブに乗ってはいけない。自分は男性とキスしたためにタクシーから追い出され、気持ち悪いと言われた。

生まれてからずっとカルガリー在住だが、今夜ほど失礼な目に遭ったことはない。

If you live in Calgary, do NOT ever take Calgary Cab. I was just kicked out of a taxi and told that I was disgusting for kissing another man.

I have lived in Calgary my whole life, and have never been disrespected as much as I was tonight.

最初にこのニュースを読んで驚いたのが、「まさか、カナダで?」ってことでした。単に同性カップルの乗車拒否というだけなら、珍しくもなんともないんですよ。ニューヨークでも、オレゴンでも、シカゴでもヒューストンでも、はたまたリオデジャネイロでもロンドンでも前例があるぐらいです。でも、カナダってゲイの権利に関しては先進的なことで有名な国だったはず。2005年に同性婚も法制化されているし、ピュー・リサーチ・センターの「社会はゲイを受け入れるべきか」という質問にYesと応えた人は80%(ちなみに日本は54%)で、世界第3位。そのカナダでさえこれかよ、と一瞬目の前が暗くなりました。

しかしながら、この件に対する市当局とタクシー会社の対応の早さには「さすがカナダ」とも思いました。ヒルさんの通報後、市当局は7月7日に、この運転手を8月5日まで免許停止とするという声明を発表しています。タクシー運転手がプロとして礼儀正しくふるまわないことは、市の条例第85条違反なのだそうです。なお、免停後の聴聞会の結果によっては、免停延長、多様性への感受性および人権についてのトレーニング実施、または免許取り消しなどもありうるとのこと。

一方カルガリー・ユナイテッド・キャブズ社はTwitterで「当社はお客様の権利を守るため、常にその土地の法律を遵守して行きます」と表明。同社のマネジャーであるNaeem Chaudhry氏はこのドライバーを解雇すると述べ、「当社はいかなるドライバーについても、人の感情を傷つけるようなコメントをすることは支持しません」と語っています。「『不快にさせたのなら』謝罪します」とかなんとか言うだけで誰も責任を取らない日本的なやり方とは、えらい違いですね。

さらに、こういう事件について必ず出てくるであろう下司な質問に、カルガリー市が淡々と応えているところもたいへんよかったです。



訳:もしカップルがタクシーの中でセックスしようとしたら、それはいいんですか? 乗客の行動基準は何なんですか?



訳:こんにちは@MizzyII。タクシー運転手は次のように概説された権利を持っています。bit.ly/YYCtaxis Video: http://bit.ly/1IHtnPk

市のツイートに貼られたリンク先に飛ぶと、タクシーやリムジンの客と運転手の権利について説明するページを読むことができます。なんと、日本語でも読めるのよ。それによると、カルガリーのタクシー/リムジン運転手が拒否できるのは以下3点。

  • ドライバは拒否または乗客がアルコールや薬物による機能障害を含め、無秩序*1や虐待されているときに旅行を終了する権利を持っています。
  • 盲導犬やサービスを除いて、動物を運ぶことを拒否
  • 車両が安全かつ合法的に収容することができますより多くの乗客や荷物を運ぶことを拒否。

もしも乗客のセックスを「無秩序」ととらえるなら、運転手には乗車拒否する権利があるということになりますね。ただし、「男女のセックスは無秩序じゃないが、同性同士だと無秩序」というのは差別。そういうことなんだと思います。

*1:英文だとこの部部分は"disorderly"となっており、『無秩序』の他に『風紀紊乱』とも訳せます。