石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

Siriがケイトリン・ジェンナーの名前とジェンダーを尊重 ユーザの間違いを即訂正

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カーダシアン家の一員でトランスジェンダー女性のケイトリン・ジェンナー(ジェナー)についてSiriに質問するとき、ケイトリンの元の名前「ブルース・ジェンナー」を使うと、Siriがユーザの間違いを訂正してくれることがわかりました。

詳細は以下。

Siri Shuts Down Anyone Who Tries To Call Caitlyn Jenner By Her Old Name

ケイトリンについての質問で「ブルース・ジェンナー」の名前を使うと、Siriは全部「ケイトリン・ジェンナー」に置き換えて返事してきます。Siriはまた、ケイトリンのジェンダーも、完全に女性として扱っています。

元記事を見て実際に試し、スクリーンショットを撮ってみました。原語設定は「英語(アメリカ合衆国)」です。


質問:「ブルース・ジェンナーの身長はどれぐらい」
回答:「ケイトリン・ジェンナーの身長は約1.88メートルです」

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質問:「ブルース・ジェンナーの本名は何」
回答:「ケイトリン・ジェンナーの本名はケイトリン・ジェンナーです」

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質問:「ブルース・ジェンナーのジェンダーは何」
回答:「答えは女性です」

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元記事のコメント欄には「ニュージーランドのSiriはまだ『ブルース』に肯定的な答えを返してくる」という声もありましたが、試しに設定を「英語(ニュージーランド)」にしても結果は変わりませんでした。他の英語圏(イギリス、インド、オーストラリア、カナダ、シンガポール)でも同様。ちなみに日本語に設定するとそもそも「ケイトリン・ジェンナー」も「ブルース・ジェンナー」もうまく認識してくれず、「〇〇に関するこちらの情報がWebで見つかりました」というパターンの大雑把な回答しか出てきません。日本語圏での知名度の問題なんでしょうか。

なお、同コメント欄には「遺伝子が男なんだから男だ」「子どもを産んだり生理が来たり更年期が来たりしない限り男だ」などとしてトランスフォビアを撒き散らす人も少なからず登場しており、どうやらこの件に関しては頑迷な人間たちよりSiriの方がよっぽどまともな反応を見せているらしいとわかりました。もう21世紀だというのに、ジェンダーは生物学的性別(と想定されているもの)と必ずしも一致しないということや、世の中には子どもを産まない女性や子宮そのものがない女性もいるということがわかっていない人が、こんなにいるとは。これ以上無駄な誤解や偏見を野放しにさせないためにも、Siriがこうして的確な答えを示してくれることは大事なんじゃないかと。

もっとも、「的確」と言ってもこれは別にSiriが的確なのではなくて、英語版Siriが連携しているWolfram AlphaWikipediaの情報が的確だってことなんですけどね。同じSiriでもロシア語版では同性愛関連の質問にホモフォビックな回答をするという指摘が今年4月になされており、ガーディアンは、ロシア語の同性愛関連の単語が英語における「ファック」のような汚い言葉としてプログラムされている可能性を示唆しています。結局のところ、Siriが表面的にどう話すかより、Siriが何を参照して回答を導き出しているのかの方が重要だってことですね。

したがって、今回のケイトリン関係のやりとりだけを見て、単純に「Appleは/Siriはトランスフォビアがなくて偉い」と解釈して終わりにするのは、何か違うんじゃないかと思います。「社会の中のトランスフォビアが、少なくともWolfram AlphaやWikipediaのケイトリン・ジェンナーの項目に関してはましだった」という話なんじゃないですかね、これ。

以下、おまけ。先日ESPN賞を受賞したケイトリン・ジェンナーの感動的スピーチです。フルテキストはTIMEで読めます。どうしてこのスピーチの意味が通じる人と通じない人がいるのか、あたしにはそれが不思議。