石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

映画『ストーンウォール』、封切られるもやっぱり大不評

赤煉瓦 8個入

シスジェンダーの白人ゲイ男性をヒーローにまつりあげたことで公開前から批判を浴びていた映画『ストーンウォール』が、公開後もやっぱり大不評だったようです。

詳細は以下。

Stonewall Might Be The Year’s Most Insulting Film, But Not For The Reasons You Think / Queerty

ローランド・エメリッヒ監督によるこの映画は、1969年にニューヨークのゲイバーで起こった暴動事件「ストーンウォールの反乱」を題材としたもの。トレイラーが公開された時点で、反乱における有色人種のトランスジェンダーやドラァグクイーンの功績を、あたかもシスジェンダーの白人ゲイ男性の功績だったかのようにすり替えて描いているのではないかという批判が相次いでいました。より詳しくは、以下をどうぞ。

封切りは2015年9月25日だったのですが、9月28日現在、Rotten Tomatoesでの肯定的レビューはわずか8%。IMDbの点数も3/10。Indiewireによると週末興行成績は112414ドル(約1350万円)だったとのことで、興行的にも成功とは言いがたいようです。

Queertyにまとめられているさまざまなレビューの抜粋文を読む限り、不評の理由はホワイトウォッシング(白人化)やトランス消去(トランスジェンダーの存在を無視または矮小化すること)だけでなく、脚本や美術のひどさにもあるみたい。以下、印象的だったレビューをいくつか訳してみます。

Vanity FairのRichard Lawson氏のレビュー。

『ストーンウォール』は単純素朴な、ひどい作りの映画だ。評判の脚本家ジョン・ロビン・ベイッツによる脚本は、びっくりするほどぎこちない(『今は腹が立ちすぎていて誰も愛せないんだ』という台詞など、失笑ものの大失敗だ。もちろんこれは、哀れにも恋々とし続けるレイに向かってダニーが言うんだけど)。美術ときたら、1960年代後半のクリストファーストリート(訳注:有名なゲイタウンです)をセサミストリートみたいな見た目にしてしまっている。

Stonewall is, plain and simple, a terribly made movie, with an alarmingly clunky script by acclaimed playwright Jon Robin Baitz (“I’m too angry to love anyone right now” is one howler—of course delivered by Danny to poor, still pining Ray) and a production design that makes late 1960s Christopher Street look like Sesame Street.

Metro WeeklyのRandy Shulman氏のレビュー。

『ストーンウォール』は、単にわれわれのコミュニティ(訳注:筆者はゲイの方です)の名誉を汚すにとどまらず、あらゆるジェンダーやセクシュアリティ、人種、信条etc.の観客の名誉をも汚している。この巨大なひとりよがりの映画はひどく見当違いな作品で、それを作ったのは、威勢良く胸を叩いて「俺はこんな風に歴史を見ている」と宣言する、鼻持ちならないほど特権に恵まれた白人ゲイ男性なのである。

Stonewall is a defamation not just to our community, but to moviegoers of all genders, sexualities, race, creed, you have it. A vanity project of astonishingly huge proportions, it’s the deeply misguided work of a white, gay, obscenely privileged man thumping his chest and proclaiming, “This is how I see our history.”

ほか、GawkerのRich Juzwiak氏のレビューも興味深かったです。タイトルがまずすごくて、「ローランド・エメリッヒ作のぞっとするほどひどい『ストーンウォール』には、世界中のレンガを投げつけてもまだ足りない」("There Aren't Enough Bricks in the World to Throw at Roland Emmerich’s Appalling Stonewall)っていうの。白人ゲイの主人公ダニーが映画『アバター』のジェイク・サリー的な「外からやってきた白人の救世主様」の役回りであることを指摘し、「この作品に、本当の標的にレンガを投げライターオイルをぶっかけるだけのガッツがあればよかったのに」とまとめるこのレビューを読むと、「結局トレイラー公開時に多くの人が抱いた懸念は正しかったのかも」と思えてきます。

そうは言っても自分の目で見て確かめるまで判断は保留すべきだという意見もあるでしょう。しかしね、映画公開前にエメリッヒ監督自らBuzzFeedのインタビューでこんなことを言っていたと知ってしまったので、あたしとしては意地でも映画館には行かないつもりです。

この映画は同性愛者のためだけに作ったというわけではありません。異性愛者向けの作品でもあるんです」と彼は言った。「実際、テスト中に気づいたんですが、異性愛者にとっては(ダニーは)とてもわかりやすいんです。ダニーはとても異性愛者っぽく見えます。そのせいでひどい目に遭うんです。(異性愛者の観客は)彼に同情することができます。

I didn’t make this movie only for gay people, I made it also for straight people,” he said. “I kind of found out, in the testing process, that actually, for straight people, [Danny] is a very easy in. Danny’s very straight-acting. He gets mistreated because of that. [Straight audiences] can feel for him.”

つまり、この作品にフィクショナルな主人公「ダニー」を据えた理由って、単なる「ストーンウォールの反乱の、白人シスゲイ男性による植民地化」じゃなくて、「『ヘテロっぽい白い男がマイノリティーたちの救世主様になるの図』を白人ヘテロ様に献上しよう!(そして共感させてお金を落としてもらおう!)」というものだったっぽいんですよねー……。無理だ。これをわざわざ映画館に出向いてまで鑑賞するのは、あたしには無理だ。NetflixなりWOWOWなりに流れてきたら、試しに観てみるぐらいのことはするかもしれませんが。

それにしても、同じように性的マイノリティーにまつわる史実をもとにした映画でも英作品『パレードへようこそ』はあんなに好評(Rotten Tomatoesで92%、IMDbで7.8/10)なのに、なんでこんなことになっちゃったんでしょう。ひょっとしたら『ストーンウォール』は今後、「興行収入のために下手にマジョリティーに媚び、結局見透かされて失敗した映画」として長く語り継がれる作品になるのかも、なんてことを思ったりしています。エメリッヒ監督も、そこまで白人トゥインク大活躍映画が撮りたかったんなら、変にストーンウォールの名を借りずに完全オリジナルの作品にしとけばよかったのにね。