石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

トランスジェンダー女性宅が爆破され近隣一帯が退避 狙われたのは「LGBTだから」/ついでにレアジョブの話もちょっと(追記あり)

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北アイルランドのトランスジェンダー女性宅がパイプ爆弾で爆破され、近隣一帯を恐怖に陥れました。幸いけが人は出なかったとのことですが、警察は彼女がLGBTだという理由で狙われた可能性があるとし、ヘイトクライムとして捜査中です。

詳細は以下。

Transgender woman targeted with a PIPE BOMB ‘for being LGBT’ · PinkNews

事件が起こったのは2015年10月3日。トランス女性のレイチェル・キーズ(Rachael Keys)さんが夜10時頃自宅の居間でTVを見ていたところ、窓にパイプ爆弾が投げつけられたのだそうです。窓は粉々に割れ、轟音と閃光とともにガラスの雨が降り注いで、キーズさんは全身ガラスまみれになったとのこと。

何が起こったのかわからず、彼女は死ぬほど怯えて家の外に走り出したそうです。「寝室で寝ていたかわいそうな猫のジェシーを抱き上げる時間さえなかった」と、キーズさん。かけつけた警察はキーズさんの家を立ち入り禁止とし、周囲5軒の住民全員を地元の公民館に強制退避させました。一同はそのままそこで一夜を明かしたとのこと。以下、キーズさんの弁。

「近所の方のうちひとりはてんかん患者で、彼女が薬を持って出られなかったことが本当に心配でした。他の方には自閉症のお子さんがいるし、年金生活の人もいます。彼らにとって、ひどいことでした。ほんとうにひどい」

“One of my neighbours is epileptic and I was really worried about her not being able to get her medication. Another neighbour has a child who is autistic, another is a pensioner. It was awful for them. Just awful.

警察はキーズさんがLGBTのひとりであるために攻撃された可能性があるとし、この事件を「偏狭なヘイトクライム」として捜査しているとのことです。

性的マイノリティーの家を狙ったこういう犯罪って、わりと見覚えがあります。うちのブログで紹介したものだと、下記あたりでしょうか。

さて、実はここからが本題なんですが

最近、オンライン英会話企業「レアジョブ」の会長が「LGBT差別を許容したい」なるタイトルのエントリをブログで発表し、大きな話題となったようです。具体的には以下の記事。

この会長さんは、LGBT差別を「許容」することが結局は非LGBTの人たちの安心・安全をもおびやかすということがわかっておられないのでしょうね。LGBTの人びとの家に爆弾が仕掛けられたら、あるいは放火されたら、その周辺に住む非LGBTのお年寄りや病人や、あるいは猫まで一気に危険にさらされるのに。LGBT差別による被害が常にピンポイントでLGBTだけにふりかかって、非LGBTは高みの見物でいられると思ったら、大間違いだよ。

さらに言うと、LGBT差別が「許容」される環境下では、たとえ自分がLGBTではなくても、LGBTだと思われただけで暴力のターゲットにされますよ。たとえばアムネスティ・インターナショナルは、 『セクシュアリティの多様性を踏みにじる暴力と虐待 差別と沈黙のはざまで』(現代人文社)という本で、米国の異性愛者男性がゲイと間違えられて暴力をふるわれた例を紹介しています。以下、p. 27より抜粋。

2000年11月25日、39歳の異性愛の男性ジェフリー・ライオンズは、8人から10人程度のシカゴ警察の非番の職員に襲われた。それは、ジェフリーが酒場の外で男友達と抱擁しているのを目撃された直後だった。突然襲われて、鼻と頬の骨を折ったほか、神経を損傷するなどの重傷を負った。伝えられるところでは、襲撃が終わろうとする頃、誰だったか特定できないが、警察官の一人が「思い知ったかホモ野郎、おまえらに勝ち目はないんだよ!」と嘲ったという。ジェフリーが気を失っている間に警察官は退散していったが、首謀者は酒場に戻った。報告によると、現場から走り去った2台の車は(後に非番警察官の車だとわかったが)、ジェフリーの仲間がナンバープレートをメモしたのに気づくと轢こうとした。

そして、「LGBTは差別してよい」という価値観の中では、たとえ子供であっても、LGBTだと思われただけでいじめられたり自殺に追い込まれたりします。実例を2件だけ挙げておきます。

LGBT当事者であろうとそうでなかろうと、誰かがこんな目に遭わされることを「許容」するだなんて、絶対にありえないとあたしゃ思うんですけどね。

最後にもう1度言います。LGBT差別からくる被害が常にピンポイントでLGBTだけにふりかかって、非LGBTは高みの見物でいられると思ったら、大間違いです。「LGBT」のところにどんな被差別カテゴリを代入しても、同じです。差別は社会全体にとって悪であり、だからこそどんな差別も許しちゃいけないんです。

個人的には、今どきこの程度の認識すらお持ちでない方がよりにもよって英会話レッスンの会社を運営しておられるというのがいちばんの驚きでした。ひょっとして英語圏のニュースや文献に目を通す習慣が一切おありでない方なのでしょうか。だとしたらそれって「自分では野菜を全く食べたことのない八百屋さん」みたいなもので、商品の質にも大いに疑問ありだと思うんですが。どうなのよ、そのへん。

2015年10月13日追記

念のため追記。デジタル大辞泉だと「差別」の定義はこうなっています。

取り扱いに差をつけること。特に、他よりも不当に低く取り扱うこと。「性別によって―しない」「人種―」

「他よりも不当に低く取り扱」うというのは、人に(悪い結果や影響を及ぼす物事)をなす行為です。したがって、「差別=加害」だと言えます。そもそも、誰にも何の害も及ぼさない行為は「差別」とは呼ばないでしょう最初から。以上より、「差別は許容するが加害は認めない」という論法は日本語として矛盾していると自分は考えます。

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以下でも少しレアジョブ関連の話を書きました。