石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

共和党議員、性的指向を理由とする解雇を支持→ヒラリーがGIFでツッコミ

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米共和党の大統領選立候補者ランド・ポール(Rand Paul)上院議員が、LGBT従業員の雇用を反差別法で守る必要はないという意見を開陳しました。ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)がGIFで手短にツッコんでいます。

詳細は以下。

Clinton campaign knocks Paul for comment about gays - CNNPolitics.com

American Bridge 21st CenturyがYouTubeにアップロードした動画によると、同議員は2015年10月14日、アイオワ州のドレイク大学(Drake University)で、LGBTであることを理由とする解雇を反差別法の対象に含めるか(つまり、そのような理由でクビにされた人が雇用主を訴える権利を認めるかどうか)ということについて、以下のように述べたとのこと。

「本当に思うんですが、家ですることは家だけにとどめておけば、職場にまで持ち込む必要はないでしょう、正直な話」

"I think, really, the things you do in your house, if you could just leave those in your house and it wouldn't have to be part of the workplace, to tell you the truth,"

「それ(LGBTの雇用を反差別法で守ること)は訴訟を起こしたい人の業界全体を喜ばせることになります」と彼は言った。「わたしが思うに、社会は急速に変化していますから、ゲイなら(性的指向を理由に解雇されても)雇ってくれるところがたくさんあるでしょう」

"It sets up a whole industry of people who want to sue," he said. "I think society is rapidly changing and that if you are gay, there are plenty of places that will hire you."

これに対してヒラリーがGIFで示した答えは、至ってシンプルでした。

当たり前だわ。ランド・ポールは要するに、性的少数者に関する施策で「私的領域における寛容(≒家でやるならLGBTでもなんでも好きにしろ)と公的領域における不是認(≒職場など公の場でカミングアウトすれば排除されて当然)」という方針をとることをよしとしているわけです。保守派の伝統的態度ではありますが、このような考え方はアンドリュー・サリヴァンによって1996年の時点でもう「もはや政策的に不適切で、道徳面において愚鈍」「ゲーム・オーバー間近なのかもしれない」と看破されています(アンドリュー・サリヴァン. (2015). 『同性愛と同性婚の政治学―ノーマルの虚像』. [本山哲人他監訳]. p. 172. 東京: 明石書店. [原著は1996年出版].)。それを2015年の今になってまだ、何のひねりもなく無邪気に披露しちゃうとはねえ。

なぜ、このような意見が不適切で、愚鈍で、ゲーム・オーバー間近なのか。サリヴァンは上掲書で、まず保守派の主張の要となる「公」「私」の区分がふたつの出来事によって突き崩されてしまったことを指摘しています。

一つ目は、1970年頃、つまりハーヴェイ・ミルクの頃からのゲイ・ムーヴメントによって、この公私の線引きを疑問視し、職場などでカミングアウトする人が増えたこと。二つ目は、HIVの流行により、もはや保守派ですらも「公には同性愛に関する話はしない」という規範を保てなくなったこと。ランド・ポールのような議員が政治的議論の場でLGBTと反差別法について意見を述べる(述べざるを得ない)ようになったのも、もとはと言えばこの流れから来ています。公的なスピーチでLGBTの権利について話しながら「LGBTに関することは私的領域だけにとどめるべき」と主張するのは、時代遅れであるばかりか、矛盾してるんですよ。

サリヴァンはさらに、以下のような指摘もしています(p. 163)。

尊厳を持って完全な生活を送るということは、秘密として包み隠されたり、婉曲表現を用いることで目立たない存在にされてしまったり、といったことが許されないことを意味する。同性愛者に対して、自分のアイデンティティーを公には語るべきではないなどというのは、異性愛者に夫や子どものことを、普段の行動に関することを、もしくは異性の相手との性的かつ心理的関係を明らかにするようなことを一切語るべきではないと言うようなものである。異性愛である十八歳の青年に対し、交際中の恋人の話を、彼女との未来のことを、もしくは結婚への展望を公に語ってはならないと言うようなものである。端的に言えば、これは、まともな人間が受け入れるにはあまりにも馬鹿げた要求である。

そう、馬鹿げた要求なんです、これは。だからこそ、ヒラリーはGIFだけで簡素に反応してみせたのだと思います。はてさて、2016年の大統領選、いったいどうなるんでしょうかねえ。

同性愛と同性婚の政治学――ノーマルの虚像

同性愛と同性婚の政治学――ノーマルの虚像

  • 作者: アンドリュー・サリヴァン,本山哲人,脇田玲子,板津木綿子,加藤健太
  • 出版社/メーカー: 明石書店
  • 発売日: 2015/06/26
  • メディア: 単行本
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