石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

米ユタ州判事、性的指向を根拠に同性カップルから里子取り上げ→州知事が批判、ヒラリーも批判

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米国ユタ州の少年裁判所判事が、既婚レズビアンカップルが里子として育てていた赤ちゃんを取り上げ、他の異性愛者夫婦の里子とする判断を下しました。同カップルは判事が宗教的信念を押し付けていると主張。州知事も「判事は法に従うべき」と批判しています。

詳細は以下。

Foster parents say child removed from their home because they are gay | News, Weather, Sports, Breaking News | KUTV

このカップル、エイプリル・ホーグランド(April Hoagland)さんとベッキー・パース(Beckie Peirce)さんは2014年10月に法的に結婚しています。ふたりは2015年、州の児童家庭サービス部(Division of Child and Family Services, DCFS)の面接や調査に合格して、赤ちゃんを里子に迎えました。赤ちゃんの生母はこの子をホーグランドさんたちの養子にしてほしいと望んでおり、ふたりもそうするつもりでした。ちなみにホーグランドさんとパースさんにとって、子育てはこれが初めてではありません。このカップルは、パースさんが産んだ12歳と14歳の娘さんも育てているんです。

しかしながら2015年11月10日、少年裁判所のスコット・ジョハンセン(Scott Johansen)判事は、この赤ちゃんを7日以内にホーグランドさんたちの家から出し、異性愛者夫婦の里子とするべきだという命令を出したのだそうです。子供は異性愛者の夫婦に育てた方がよいとする「研究」がたくさんあるというのがその根拠なのだそうですが、問題は、判事はその「研究」とやらの実例をひとつも示さなかったということ。示そうにも示せないんですよ、存在しない(その逆の結果を示す研究ならあるんですけどね)んだから。

ホーグランドさんとパースさんは、これは判事による宗教的信念の押し付けだと主張しています。また、ゲイリー・ハーバート(Gary Herbert)州知事はこの件に関し、裁判所と判事は法に従うべきだとする見解を発表しました。以下、FOX 13 NEWSより引用。

「裁判所と判事が法に従うよう期待します。判事は、法が気に入らなくとも法に従わねばなりません。いかなる方法であれ、またいかなる形であれ、裁判官席には政治的な運動を持ち込んでほしくありません。人は時々法を嫌うものですが、判事が自分の個人的な心情や感情をさしはさんで法に成り代わるべきではありません」

"I expect the court and the judge to follow the law. He may not like the law, but he should follow the law. We don't want to have activism on the bench in any way, shape or form. Laws, sometimes people don't like, but the judge should not interject his own personal beliefs and feelings and supersede the law,"

ヒラリー・クリントンもジョハンセン判事の判断を批判。訳:「良き親であるということは、性的指向とはまったく関係ありません。多数の家庭がそのことを証明しています」。

児童家庭サービス部(DCFS)では現在、弁護士が判事による命令を詳しく調べているとのこと。DCFSのディレクター、ブレント・プラット(Brent Platt)氏は、ジョハンセン判事の判断が子供にとって最善でないとわかり、控訴などの方法があるのなら、DCFSはそうするだろうとしています。

とりあえずこのカップルが孤立無援でないのは幸いですが、「飛行機の席の次は、生身の赤ちゃんを異性愛者様に譲れときたか」と今心底呆れています。既に特権をたっぷりと享受していらっしゃる異性愛者の方々(の一部)が、どうしてこうもなんでもかんでも同性カップルから取り上げないと気が済まないのか理解できません。おそらく日々こうして取り上げ続けないとせっかくの特権を維持できなくなるからなんでしょうが、そのためにありもしない「研究」をダシにしてまで子供から家族を奪わないでほしいと思います。

……と、ここまで書いて「続報はないのか」と調べたら、判事の命令が撤回されてました! 詳しくは以下。

上記リンク先によれば、くだんの命令を撤回するよう州当局と弁護士が申し立てを起こした結果、ジョハンセン判事は2015年11月13日に決定を覆したとのこと。

「あの子に火曜日にさようならを言わずに済んで、とても幸せです」とエイプリル・ホーグランドはAPに話した。

"We're just happy we don't have to say goodbye to her on Tuesday," April Hoagland told The Associated Press. "That's a big relief."

そんなわけで、まずはよかった。いや、最初からこんなアホな命令自体がなければ、もっとよかったんだけどね。ちなみにガーディアンによれば、法的には判事が今後、12月4日の親権に関する審問で再びこの赤ちゃんを取り上げろと命じることも不可能ではないのだそう。今はただそうならないことを切に祈ります。