石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

15歳LGBT女子生徒の約半数が自傷経験あり(英調査)

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英ノース・ヨークシャー州議会が同州の子供約2万人を対象に実施した調査で、LGBTの生徒たちはいじめや自傷行為などを経験するリスクが有意に高いと判明しました。10年生(15歳)のLGBT女子生徒では、54%に自傷行為の経験があったそうです。

詳細は以下。

New council report claims half of LGBT school girls have self harmed · PinkNews

この調査の目的は同州のゲイ、レズビアン、バイセクシュアルまたはトランスジェンダーの若者たちの経験や問題を理解し、注意喚起すること。プライマリースクールとセカンダリースクールの児童・生徒計19924人を対象に2014年に実施され、2015年10月15日付で報告書が発表されました。" Growing Up in North Yorkshire"(『ノース・ヨークシャーで育つということ』)と題された報告書の全文は、PinkNewsの記事末尾からPDFでダウンロードすることができます。

回答者のうち、自分はレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、またはトランスジェンダーであるとした子は全体の約6%(1195人)でした。そのほとんどが、セクシュアリティが原因で学校での敵意や不安などを経験しており、いじめや不安、うつ、自殺念慮、低成績などの問題に直面するリスクが他の子供たちより有意に高かったとのことです。もう少し具体的に言うと、10年生の段階で、LGBTの児童・生徒たちは以下のような経験を報告していたのだそうです(以下、報告書PDFより訳して引用)。

  • 41%が、過去1年間の間に学校または学校の近くでいじめられたことがある
  • 39%が、人と違っていることを「かなり心配している」または「とても心配している」
  • 51%が、ネットで知り合った面識のない人とコミュニケーションを取っている(10年生全体の平均値は28%)
  • 学校の安全性が「とてもよい」または「よい」と答えたLGBTの10年生は66%(10年生全体の平均値は81%)
  • LGBTの10年生女子で自傷行為の経験がある子は54%(10年生女子生徒全体の平均値は16%)

また、LGBTの若者グループとの対面調査では、こんな意見も聞かれたそうです(以下、同PDFから訳して引用)。

「孤立して途方に暮れていました。親も学校も無関心だったから、11歳のときから自分の居場所はユース・アドバイス・センター(訳注:若者が立ち寄って相談やカウンセリングなどを受けることができる公共施設)でした」

“I was left stranded, my school didn’t want to know neither did my parents so the Youth advice centre has been my home since I was eleven”

「学校は、ホモフォビックないじめに対処するより、わたしを追い出す法が簡単だと考えました」

“The school thought it was easier to get rid of me rather than deal with the homophobic bullying in the school”

「わたしたちをいじめていたのは教師たちでした」

“It was the teachers that we were bullied by”

読んでいると「いずこも同じか」とだんだん悲しくなってくるのですが、それでもまず自治体が主体となってこういう調査に乗り出しているというのは大きいですよね。報告書の後半では、学校が今後取り組むべき対処法として、いじめに反対するポリシーをただ掲げるだけでなく実効性を持たせること、すべての職員にLGBTに関するいじめ対策研修をほどこすこと、学校のカリキュラム内でいろいろな家庭が出てくる本を読んだり、LGBTの有名人について学んだりすること、教員も子供も安心してカミングアウトできるような環境をつくることなどが挙げられています。どれも日本でもやってほしいことばかりです。

日本の教育現場での性的マイノリティーへの対応というと、2015年4月に文科省が発表した通知「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」がまず真っ先に思い出されます。しかしこの通知、上記のノース・ヨークシャーの報告書に比べると正直言ってだいぶ見劣りすると思うんですよ。調査にもとづく具体的データがない上に、職員への研修も全員じゃなくて一部でいいとされているようだし、いじめる側の、つまりマジョリティーの生徒たちを教育するためのカリキュラムの提案に至っては皆無なんですもん。我が国にももうちょっと踏み込んだ公的調査や提言があってもいいんじゃないかと、このイングランドの人口約60万人(2014年)のカウンティからの報告を読みながら考え込んでしまいました。日本の場合、「予算がない」のひとことで片付けられちゃうのかもしれませんけどね。