石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

リリー・トムリン「母は死んでしまったでしょう、もし私のカムアウトを目にするまで生きていたら」

Lily Tomlin: The Kindle Singles Interview (Kindle Single) (English Edition)

76歳のベテラン米女優リリー・トムリン(Lily Tomlin)が、英テレグラフのインタビューで、これまでのキャリアやハリウッドのセクシズムについて、そして長年(公的には)同性愛者だと発表しなかった理由について語っています。

詳細は以下。

Lily Tomlin: 'Hollywood sexism? I'd slap it off'

リリー・トムリンがレズビアンであることは、70年代ぐらいからもう単なる「公然の秘密」でした。長年彼女の出演作の脚本を書いてきたジェーン・ワグナー(Jane Wagner)がパートナーであることも、誰でも知ってました。それでも公的にはカミングアウトしなかったのは、お母さんのためだったのだそうです。

「母は死んでしまったことでしょう。本当に。もしわたしがカムアウトするまで生きていたら」と彼女は言う。「母に祝福あれ。彼女は南部人で、基本的に原理主義者でしたが、とても機知に富んでいて、やさしくて、親切で、ジェーン(ワグナー)のことが大好きでした。母は10年前に亡くなりました。91歳でした。このことはわたしにとっては一種のジレンマでした」。

“My mother would have died. Literally. If she’d lived to see me come out,” she says. “Bless her heart, she was Southern, basically fundamentalist, but she was very witty and sweet and kind and she adored Jane. She died 10 years ago. She was 91. So that was always kind of a dilemma for me.”

元記事にも出て来ますが、そしてこれも以前から知られていることですが、英誌「タイム」が表紙でカミングアウトしないかと彼女に持ちかけてたんですよね1975年に。その申し出を断ったのは、ひとつにはこのお母さんへの心配もあったわけ。もちろん、時代的に「雑誌の表紙に載るためにセクシュアリティーを差し出すのはとても難しかった」(本人談)ということもあるし、当時の「タイム」が単に同性愛に関する議論をしようとしていて、話の矢面に立たせるのに都合がいい「同性愛者」を欲しがっていただけだったから(同)ということもあるのですけれども。

ちなみにリリー・トムリンは、「タイム」での大々的なカミングアウトこそ断っても、嘘をついたり異性愛者のふりを装ったりしたことは「一度もなかった」のだそうです。仕事上でも、ホモフォビックなネタを演じるのは断っていたとのこと。

70年代早期に『Laugh-in』(訳注:米NBCのコメディー番組)に出演していた頃、彼女はオフェンシヴだと思った寸劇はいつも断っていた。「よくプロデューサーのところに言いに行ってたんですよ、『このネタはやれない、ホモフォビックすぎる』とか『性差別だ』とか、とにかく思ったことを」と彼女は言う。「で、プロデューサーは決まって『これはやらなくていいよ、ハニー』って言ってました」

When she worked on Laugh-In in the early Seventies, she would refuse to do skits that she thought were offensive. “I’d go in to see the producer and I’d say, I can’t do this material, this is too homophobic, or this is sexist, or whatever feelings I would have,” she says. “And he’d say, you don’t have to do it, honey.”

それでも結局、そういったネタそのものが取り下げになることはなく、プロデューサーが別の女優に役を振って終わりだったそうなんですけど。このあたりが当時のハリウッドの限界だったということなのでしょうね。

リリー・トムリンは2013年10月に42年来(当時)のパートナーであるジェーン・ワグナーと結婚予定を発表し、同年12月に結婚。最近の代表作は、Netflixのコメディードラマ『グレイス・アンド・フランキー』や、映画『グランマ(原題:Grandma)』。前者では「夫が男性との愛を見いだしたため離婚するはめになった、70年代ヒッピーふう美術教師」を、後者では「ダメ男に妊娠させられた孫を助ける、レズビアンの痛快おばあちゃん」役を好演しています。

『グランマ』のトレイラーはこちら。

ちなみにレズビアンであるわたくしとうちの彼女の間でリリー・トムリンが話題になるときは、映画やドラマの話はもちろん、こんな会話であることも多いです。

あたし「長続きするレズビアンカップルのロール・モデルって少ないよね。とりあえずうちは『日本のエレン(・デジェネレス)とポーシャ(・デ・ロッシ)』を目指そう」

彼女「何言ってんのよ、リリー・トムリンがいるじゃない!」

あたし「そうだった。リリー・トムリンがいた!!」

そんなわけで、憧れのリリー・トムリンのインタビューがたっぷり読めて幸せ。ちなみに元記事ではセクシュアリティの話のみならずアカデミー賞や、ハリウッドのジェンダー間の賃金格差、人種差別などに関する話も出てきます。『グランマ』の話題も多め。なお『グランマ』は米国では2015年12月11日公開だとのことで、今からとても楽しみです。