石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

見たら子供がゲイになる? 英牧師、70年代の子供番組を「同性愛の宣伝」と非難

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英国・ロンドンの牧師ダニエル・エリクソン=ハル(Daniel Erickson-Hull)氏が、1972年から1992年にかけて同国で放映された子供番組「レインボー」("Rainbow")を同性愛のプロパガンダだとして非難しています。

London pastor claims kids’ TV show Rainbow promoted gay agenda · PinkNews

それではまず、この牧師さんの言う「プロパガンダ」の映像を見てみましょう。

長さ約30秒のこの動画では、空に虹がかかったあと町全体がカラフルに彩られていくアニメーションが表示され、こんな歌が流れます。

町の上に、おうちの上に、にじがたかくのぼるよ
お空のにじのほほえみがみんなに見えるよ
せかいをぜんぶ、にじいろにぬろう!

Up above the streets and houses, rainbow climbing high.
Everyone can see it smiling over the sky.
Paint the whole world with a rainbow!

……これ見てゲイになる子供って、天文学的確率でしか存在しないのでは……?

エリクソン=ハル氏の意見はこちら。

「これは聖書にレインボーを浸透させるということなのか? ひょっとしたらこれには何の意味もなく、偶然なのか? しかし、可能性として取り上げる意味はありそうだ」

“Is this supposed to be the rainbow infiltrating the bible? “Perhaps there is nothing in this, a coincidence? But it seemed worth raising as a possibility.”

ないない、意味なんてない。どう見ても偶然。虹は単なる自然現象で、LGBTのシンボルマークになるよりずっと前から存在してたし、だいたい世界はキリスト教徒だけのものじゃないのに「世界=聖書の象徴」と決めつけるのはどうよ。

なお、元記事でもっとも面白かったのはコメント欄でした。以下、スレッドをちょっと訳します。

  • わたしの子供時代には、TVでは異性愛のプロパガンダ以外何ひとつ見なかった。自分には何の効果もなかった。それなのに、どうしてこの手の妙な偏見持ちは、セクシュアリティーがプログラミング可能だと思ってるんだ? ひょっとして自分自身のセクシュアリティーに疑問を持っていて、それをずっと抑圧しているせいなのか?
  • ねえみんな、やつらに陰謀がばれたわよ。誰か、次の「同性愛のアジェンダ指揮委員会」の、「その他の事項」のところで議題にしてくれる? でも、「ゲイのメディア浸透作業部会」からの報告が出た後でもいいかもね。今度ワイン持ってくるのって誰の番だっけ?
    • わたし、信心深いアホから「同性愛のアジェンダ」の話をしょっちゅう聞くんだけど、誰も開催場所と参加方法を教えてくれないんだよねえ。
      • 招待されてなかった? それは僕がうかつだったな。僕は1950-1960年代にかけて『アンディ・パンディ』(訳注:BBCの子供番組)委員会のメンバーだったんだ。ほら、ランディ・アンディ・パンディがいつも籠に入れたクマと一緒に寝ていたあの番組。すごくエロティックなシーンだったと思うよ!
  • この牧師、創世記9:13の「すなわち、わたしは雲の中に、にじを置く。これがわたしと地との間の契約のしるしとなる」を読んだことがないんだろうか。

次に近場で「同性愛のアジェンダ指揮委員会」があったら、あたし、率先してワイン持っていこうと思います。

ところでこの牧師さんのことを笑えないなと思うのは、最近日本語圏のインターネットで、「海外に行くとき、荷物にレインボーマークをつけているとゲイだと思われて言い寄られる」というデマ(言っている本人はデマだと思ってないかも)をまことしやかに流してはしゃいでいる人を見かけたから。レインボーは同性愛者だけじゃなく、平等を支持する異性愛者も使っているマークだし、今どき同性愛者の出会いはGrindrみたいなアプリ経由が主流だっていうのにね。身も知らぬ、性格も性的指向もまったくわからない外国人を相手に、レインボーマークだけをきっかけにいきなりセックスしようと思い立つ馬鹿が、そうそういるかよ。

たぶんこのデマ、70年代のゲイたちが使っていたいわゆる「ハンキー・コード」(ポケットに入れたハンカチの位置と色でセクシュアリティーを知らせるという暗号)と、現代のLGBTムーブメントにおけるレインボーフラッグをごっちゃにし、そこに不安と蔑視をまぶして捏造されたものなんじゃないかと思います。しかしこの21世紀に、レインボーのような比較的新しいシンボルを使ってまで、アンドレ・ジッドの時代もかくやと思わせる「同性愛勧誘」説(同性愛者は隙あらば異性愛者を性的に勧誘しようとしているとして被害者を気取り、ホモフォビアを正当化する考え方)をぶちあげられても困るのよ。自分にとってなじみのない存在に対して不安を感じるのは人の常だけれど、その不安を「同性愛者はこんな悪事をたくらんでいる」系のデマで正当化しようとするのは、ただの暴力。やめてほしいもんです。