石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

「ネクタイをする女もいる。慣れてください!」ヘイトクライムに遭ったレズビアンが始めた運動に賛同者続々

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ネクタイをして歩いていたロンドンのレズビアン(43)が2015年12月10日、ホモフォビックな男性からそのネクタイで首を絞められ、からくも逃げ延びました。この体験から彼女が始めたキャンペーンに、多くの人が続々と賛意を表明しています。

詳細は以下。

Deaf woman punched in face and strangled with her own tie by homophobic attacker in south London | Crime | News | London Evening Standard

この女性、ヘレナ・マーティンス(Helena Martins)さんは当日、水玉模様のネクタイをしてトゥーティングの自宅に向かって歩いていたところ、通りすがりの男性から殴られ、さらに首を絞められたとのこと。マーティンスさんが抵抗すると、男は彼女の頭を何度も殴り、金的を蹴られてようやく逃げていったそうです。以下、マーティンスさんの談話。

ネクタイをしていたために狙われたことは間違いありません。あの男は本当にネクタイに執着していました。わたしは男っぽいタイプのレズビアンではありませんが、男性ふうの服を着ていました。

I have no doubt that I was targeted because I was a woman wearing a tie. He was quite fixated on the tie. I am not butch but I wear masculine attire.

顔には長い引っ掻き傷ができ、首には赤い痕が残りました。こういう事件があることで、ヘイトクライムとホモフォビアはまだまだ残っているということがわかります。

I have scratches across my face and red marks on my neck. This is a way of letting people know that hate crime and homophobia is still very much alive.

マーティンスさんの首に残った痛々しいあざの写真はこちら。

マーティンスさんはメニエル病のため耳が不自由で、歩き方もまっすぐではありません。そのために「格好の標的」として目をつけられたのではないかと本人は推測しています。金的を蹴ることができたのは、彼女にテコンドーの心得があったから。

マーティンスさんはこの事件の後、ホモフォビア撲滅のため広く協力を呼びかけるキャンペーン「ネクタイをする女もいる――慣れてください!(Some women wear ties - Get over it!)」を開始。注意喚起のためネクタイを身につけた写真をハッシュタグ#tieforhelenaでソーシャルメディアに投稿すること、LGBTチャリティー団体「ストーンウォール(Stonewall)」に寄付すること、いじめや虐待を見かけたら声を挙げることなどを提案しました。

キャンペーンの詳細は以下をどうぞ。

目標額1000ポンド(約18万円)だった寄付金は、日本時間で12月16日現在、1500ポンド(約27万円)を突破しています。そしてハッシュタグ#tieforhelenaはと言うと……。

この他にも、とてもここでは紹介しきれないぐらいたくさんの人がネクタイを身につけて、このキャンペーンへの賛意を表明しています。マーティンスさん本人からの感謝のツイートはこちら。

この手のホモフォビックな事件は見るたび凹むけれど、こんなにたくさんの人がこうして即座にホモフォビアに反対してくれているのを見ると、まだ人間捨てたもんじゃないとも思えます。このキャンペーンの標語が、ストーンウォールの有名な標語「世の中ゲイもいます。慣れてください!*1("Some people are gay. Get over it!")」を下敷きに、「慣れてください」という言い回しを採用しているところもとてもいいなと思いました。いちレズビアンとして、「理解してください」とか「認めてください」とか全然思ってませんからね、あたし。たとえ同じ性的指向の人同士でも、自分以外のことなどそうそう「理解」できるものではないし、誰かにエラソーに「認めてつかわす」なんて言われなくても最初からみんなこの社会の一員なんですから。望むのはただひとつ、マジョリティーとは違う人もいるという現実にいいかげんに慣れて、加害をやめてほしいということだけ。そういった意味でも、このキャンペーンには共感をおぼえました。微力ながら今からちょっとだけ協力してくるわ。

*1:get overにはいろいろな訳語が考えられますが、文脈から言ってここではメリアム・ウェブスターで言うところの1c : to reconcile oneself to : become accustomed toの意味がもっともふさわしいと思います。