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石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャー。

性的指向はもはや公職に選出される妨げとはならず、むしろ当選に役立つことも(米研究)

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2016年9月9日、アメリカ政治学会の年次会議で、同性愛者が公職に立候補した場合、性的指向はもはや当選の妨げにならないばかりか、場合によっては勝利の一助になり得るとする研究結果が発表されました。

詳細は以下。

Should gay candidates come out of the (political) closet? Study says yes -- ScienceDaily

この研究は、シンシナティ大学の政治学助教授デイヴィッド・ニーヴン(David Niven)氏によるもの。ニーヴン氏は、オハイオ州フランクリン郡で2016年3月に実施され、民主党員同士の一騎打ちとなったとある予備選挙に「理想的なフィールド・スタディ」として目を付けました。

この選挙では、現職のテリー・ブラウン(Terry Brown)氏はホームページに夫とのツーショット写真を載せているオープンリー・ゲイで、対抗馬のダニー・オコナー(Danny O'Connor)氏は異性愛者でした。どちらも選挙戦でブラウン氏の同性愛について言及していなかった上に、メディアの注目度も低く、ブラウン氏がゲイであることに関する報道はなかったのだそうです。そこでニーヴン氏が調査に用いた手法は、こんな。

  • 民主党員として登録された世帯のある選挙区を30個ランダムに選ぶ
  • うち15の選挙区を3つに分け、それぞれ以下のはがきを送る
    • 1. ブラウン氏がひとりで映っている写真を載せ、氏の同性愛とは無関係な政策(『納税者の出費を抑える』、『コストを削減する』など)について記したはがき
    • 2. ブラウン氏と夫が映っている写真を載せ、1と同じ政策を記したはがき
    • 3.ブラウン氏と夫が映っている写真を載せ、1と同じ政策を記し、さらに、ゲイの結婚の平等に対するブラウン氏の献身について付け加えたはがき
  • 残りの15区は対照群とし、何も送らない

結果的に当選したのはオコナー氏だったのですが、それはブラウン氏がゲイだという理由によるものではないとニーヴン氏は述べています。というのは、調査の対象となった選挙区で、以下のような傾向が観察されたから。

  • ブラウン氏がひとりで映っている写真のはがきを送られたグループより、夫と映っている写真を送られたグループの方が、ブラウン氏への投票率がわずかに高かった
  • ブラウン氏が同性婚に賛成していることを記したはがきを送られたグループは、他のグループより4%多くブラウン氏に投票していた

この結果から、同性愛者の権利に賛成する姿勢を見せることがブラウン氏に「政治的なエッジ」を付与し、それが得票数の増加につながったことがわかるとニーブン氏は主張しています。

ちなみにこれまで専門家たちの考えでは、オープンリー・ゲイ/レズビアンの立候補者にとって性的指向は当選の障害であり、控えめにしか言及しない方がよいとされていたのだそうです。ニーヴン氏は、今回の研究は「特定の地区の、1回の選挙の、民主党員の投票者の行動」に焦点を当てたもので、限界があるとしながらも、ゲイやレズビアンの立候補者は「思っているほど悪くはない現実から隠れているのかもしれない」と言っているとのこと。

ハーヴェイ・ミルクが1978年に暗殺されてからはや38年。変われば変わるもんね……。もちろんまだまだ地域や住民構成による違いはあるでしょうし、フォローアップの研究も必要でしょうけれど。理想的には、すぐには無理でもいつか、ゲイやレズビアンであることが得票のプラスに働くことすらもなくなって、性的指向の違いがせいぜい「耳がぴくぴく動かせるか、動かせないか」とか「朝どちらの足から靴をはくか」とかいうのと同じぐらい些末なことだと認識される世の中になるといいなと思ってます。「あの候補者は朝右足から靴を履く。けしからんから投票しない」とか思わないでしょ? つきあう相手のジェンダーなんて、それと同じぐらい、本来なら政策や政治的資質とは関係ないことだと思うのよ。あくまでも「本来なら」ですけど。