石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

非LGBTの半数が「同性愛者はもう平等」と思い込んでてヤバげな気配(米調査)

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米LGBT団体GLAADとハリス世論調査による調査で、米国の非LGBTの人びとの約半数が「同性愛者はもう平等に扱われている」と考えていることが判明。GLAADは、この「独りよがりの満足」が社会の進歩を妨げる恐れがあると警告しています。

詳細は以下。

GLAAD's 'Accelerating Acceptance' report provides snapshot of Americans' feelings about LGBT issues | GLAAD

この調査は2015年10月5日から7日にかけて、18歳以上の成人約2000人を対象に、オンラインで実施されました。結果として、非LGBTの人びとの間でLGBTに対する受容度が上がりつつある一方、「同性愛者はもう平等に扱われている」などの誤解も広がっているとわかったとのこと。

まず受容度に関しては、以下の項目で「非常に不快」または「いくらか不快」と答えた人の割合の変化をごらんください。

項目 2014年 2015年
同性カップルが手をつないでいるのを見る 36% 29%
家族の誰かがLGBTだとわかる 32% 27%
自分の信じる宗教の礼拝所にLGBTの信徒がいる 26% 22%
主治医がLGBTだとわかる 31% 28%
LGBTの同僚の結婚写真を見る 27% 26%
我が子の教師がLGBTだとわかる 30% 29%
我が子が学校でLGBTの歴史について学んだとわかる 37% 37%

最後の項目以外は、不快に思う人が過去1年間で軒並み減っていることがわかります。

しかしながら、これらの項目に対する回答から回答者を3つのグループに分けてさらに分析したところ、いささか困った状況が見えてきたんです。

まず「3つのグループ」の分け方はこんな。

  1. アライ(非LGBTの米国人で、上記のすべての項目で『非常に快適』または『いくらか快適』と答えた人)
  2. 一歩距離を置いた支援者(非LGBTの米国人で、項目によって不快かどうかが変わる人)
  3. 反対者(非LGBTの米国人で、上記のすべての項目で『非常に不快』または『いくらか不快』と答えた人)

そして、以下の各項目に同意した人の割合を、グループごとに分けて集計したものがこちら。

「合衆国では、同性愛者は他のすべての人と平等な権利を手にしている」
  • 非LGBT全体:50%
  • アライ:43%
  • 一歩距離を置いた支援者:61%
  • 反対者:48%
「LGBTの人びとは現在、他のマイノリティよりメディアから注目されている」
  • 非LGBT全体:55%
  • アライ:42%
  • 一歩距離を置いた支援者:69%
  • 反対者:69%
「LGBTのコミュニティは、他のマイノリティより影響力がある」
  • 非LGBT全体:34%
  • アライ:22%
  • 一歩距離を置いた支援者:47%
  • 反対者:47%
「ほとんどの政治家はLGBTの人びとに有利な政策を支持している」
  • 非LGBT全体:30%
  • アライ:22%
  • 一歩距離を置いた支援者:37%
  • 反対者:45%

何がヤバいって、最初の項目に同意しちゃった非LGBTアメリカンが50%もいること。全米で同性婚が法制化されたことで何か誤解しているのかもしれませんが、まだ全然平等じゃありませんから。具体的に言うと、まず、全米50州のうち28州にはLGBTであることを理由とした解雇を禁じる法律が存在しません。「同性と結婚した? じゃあクビだ」と職場を追われても、文句が言えないんです。それにだいたい、アラバマ州あたりではまだ少なくとも11の郡で同性婚自体が不可能だったりします。また21州にはLGBTの顧客へのサービス提供を拒否したい事業主に味方する「宗教の自由法」がありますし、キリスト教系大学は続々と「タイトルナイン(Title IX)」法からの免除を、つまり「差別OK」のお墨つきを手にしています。LGBTだというだけで就職の書類選考で落とされやすくなるという調査結果も最近報告されたばかりです。これで「平等」だなんて、鼻で笑っちゃうわ。

この「平等な権利」の項目にせよ、他の項目にせよ、「あるマイノリティに対して偏見を持っている人ほど、そのマイノリティは差別されていないと思っている」という昔からある説を支持する結果が出てますね。プライムタイムのTVドラマでトランスジェンダーを肯定的に描いたものがひとつもないという現状で、メディアの注目もへったくれもあるもんかい。それに「ほとんどの政治家は(中略)LGBTの人びとに有利な政策を支持」だなんて、共和党の大統領候補を見たことがないアホの言い草でしょう。「他のマイノリティより影響力が」あったら、そもそもここまで差別されてませんし。

連邦最高裁が同性婚を合憲と認めたのはそりゃ画期的でしたが、そのことによって、もともと偏見を持っている人たちが「はいこれでもう平等! もう何もしなくてよし! あいつらもう差別されてないくせにメディアや政治家にちやほやされててムカツクわー」と思い込んでしまって終わりというのは非常にまずいのでは。実際、この調査では、非LGBTの回答者のうち約4分の1がLGBTコミュニティにおけるHIV/AIDS、自殺、暴力、ホームレス問題などを「深刻な問題ではない」ととらえているというシャレにならない結果が出ています。LGBTの側は、今後これ以上非LGBTの間にこうした「独りよがりの自己満足」(complacency)が広まらないよう、積極的に異議を唱えていく必要がありそうです。

なお、この調査報告の全文は、以下からどうぞ。