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石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャー。

『にじ色の本棚 LGBTブックガイド』(原ミナ汰&土肥いつき編著、三一書房)感想

百合/レズビアン ゲイ バイセクシュアル トランスジェンダー 書籍

にじ色の本棚 ―LGBTブックガイド―

多様な性と生について知るための網羅的ブックガイド

新旧合わせ計72冊*1の性的マイノリティ関連の本と、映画11本を紹介する本。紹介作品のチョイスが網羅的で、かつ「LGBT」という枠組みにとらわれないバランス感覚もあり、悩める10代から仕事で性的少数者の支援にあたる人まで広くおすすめできそう。

質量ともに不足なし

この本を読んでみてまずびっくりしたのが、守備範囲の広さ。たとえばレズビアニズムに関して言うと、『女を愛する女たちの物語(別冊宝島64)』もあればリリアン・フェダマンもあり、サラ・ウォーターズも牧村朝子もあり、そして『青い花』(志村貴子、太田出版)や『オハナホロホロ』(鳥野しの、祥伝社)などのコミックもありという幅広さです。フィクションだけでもノンフィクションだけでもなく、かたくるしいお勉強だけでも娯楽としての百合萌えだけでもない、よく考えられたラインナップだと感じました。

また、「LGBT」の線引きだけではとらえきれない性のありようについての本が積極的にとりあげられているところにも好感をおぼえました。たとえば性分化疾患/インターセックスについては『IS』(六花チヨ、講談社)や『性別が、ない!』(新井祥、ぶんか社)、女装については『女装と日本人』(三橋順子、講談社)、セクシュアリティのゆらぎに関しては『恋愛のフツーがわかりません!!―ゆらぎのセクシュアリティ考2』(ROS編著、アートワークス)などが紹介されています。漫画では、『放浪息子』(志村貴子、エンターブレイン)などもあります。

さらに、本の内容だけでなく、紹介者の鋭い考察が読めるところもよかった。たとえば『職場のLGBT読本』(実務教育出版社)という本について、「セクシャルマイノリティに関する労務マニュアルとして読め」、人事担当者や支援者の参考になる内容だと述べる一方、「おそらく地方都市の中小企業にはこの本のメッセージは届きにくい」というところまで突っ込んで評されていて、痒いところに手がとどく説明の仕方だと感じました。自分もこの本は持っているのですが、入門書としてはとても良い内容(LGBTに関する基本知識、当事者アンケート、各種企業の取り組み事例、グロッサリーなどが収録されています)であるものの、やはり入門書ならではの限界もある1冊だと思っています。こうした限界への言及がちゃんとあるところが良心的だと感じました。

一部残念だったところ

ひとつだけ残念だったのは、書き方があまりに内輪向けすぎて、誰に向けて発信しているのかわからない記述がごく一部に見られたところ。一時期の一地域の一部集団の事情を知っている人にだけ目配せしてはしゃぐような「紹介文」は、こうした趣旨の本には不向きだったのでは。そこさえ除けば文句なしの本です。

まとめ

「セクシュアルマイノリティについて知りたい/もやもやしている/悩んでいるんだけど、何を読んだらいいのかわからない」という人にまずおすすめしたい1冊です。ここから始めて気になる本をどんどん読んでいけば、かなりの知識が身につくはず。内輪ノリがたたってわかりにくい部分もごくごく一部に見受けられますが、それもわずか1ページ程度のことなので、まずは気にせず手に取ってみられるようおすすめします。

にじ色の本棚 ―LGBTブックガイド―

にじ色の本棚 ―LGBTブックガイド―

*1:作品ごとに項目を立てて紹介されているのは72冊ですが、コラムや章ごとの説明文で言及されている本まで含めれば、紹介作品は全部で200冊を超えます。