石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

米ジョージア州の反同性愛法案にエンタメ界が「ノー」 Netflixもボイコット表明

Netflix

米国ジョージア州で可決された法案が同性愛差別的だとして、同国のエンタテインメント企業が続々と同州での撮影ボイコットを表明しています。ディズニーやマーベルに続き、Netflixなどもボイコットに加わりました。

詳細は以下。

Netflix will boycott Georgia if governor signs antigay law – LGBTQ Nation

これまでのいきさつについては、シネマトゥデイハフポストの日本語記事が詳しいです。問題の法案は宗教関係者によるLGBTの人々へのサービス提供拒否を合法とするもので、先週下院を通過したばかり。ネイサン・ディール州知事が2016年5月3日までに署名すれば、法律として成立します。

ハリウッドはこれに反発し、法案が成立したら同州での撮影はしないと複数企業が表明。なぜだか日本の報道ではディズニーとマーベルによるボイコットばかりが強調されているようですが、20世紀フォックスも、ライオンズゲートも、タイム・ワーナーも、スターズも、『ウォーキング・デッド』のAMCネットワークスも、CBSも、ソニーも(他にもたくさんありますが以下略)同法案への反意を表明しています。そして、映画やTV(ケーブルTV含む)だけでなく、動画配信サービスのNetflixもまた、知事がこの法案に署名すれば同州で予定されていた製作を引き上げると発表。もはやエンタテインメント界全体が*1ジョージア州に「ノー」をつきつけている状態となりました。

なぜジョージア州での撮影が論点になるのかというと、同州は税金の優遇措置によってエンタテインメント企業を呼び寄せ、莫大な経済効果を得ているから。以下、ハフポストから引用します。

ジョージア州は、映画やテレビなどのエンタテイメント企業に対し、税制上の優遇処置を実施。カリフォルニア州と比べて税控除プログラムが魅力的な内容となっており、2015年度にジョージア州で撮影された映画やテレビ番組は248もある。

実際、『ウォーキング・デッド』はジョージア州で撮影されていますし、Netflixもまた、これまでアダム・サンドラーのThe Do-Overやウィノナ・ライダーのStranger Thingsなどを同州で撮影しています。LGBTQ Nationによれば、同州はエンタテインメント企業から昨年1年間だけで17億ドルの歳入を得ているとのこと。さて、そのエンタメ界から「差別はするけどお金は落としてね」というのは通らないよと通告されて、この州はこれからどうするんでしょうね?

こういうのを見るたびに「バックラッシュはなくならないけど、それに対する反対の動きも即座に起こるところが米国のいいところだなあ」といつも思います。ジョージア州にだってセクシュアル・マイノリティの子供はいっぱいいるはずで、「うちの教会では同性同士の結婚式なんてお断りだよ!」とか「同性カップルの子供など、うちの保育園からは出て行ってもらう!」だの、「トランスジェンダーの職員はクビだ!」みたいなこと(どれもすべて、よくあることです。詳しくは英語でニュースをググりましょう)がまかりとおる中で育つのはつらいことだと思うんです。そんなとき、自分の大好きなヒーローを、ドラマを、物語を創ってくれているクリエイターたち*2が「それは差別だ、よくないことだ」と怒ってくれるのを目にできることが、どんなに心強いことか。

この際、どこか別の州が「うちには反差別法があります。税金も優遇しましょう。おいでませ〇〇州へ」と積極的にエンタメ企業誘致キャンペーンでもやればいいのにね。え、ジョージア州? 桃でも売ってればいいんじゃないの?

*1:エンタテインメント界以外でも、NFLやAppleなどたくさんの企業がこの法案に反対しています。

*2:個人名でこの法案に反対している俳優、監督、脚本家などもたくさんいます。たとえばジュリアン・ムーア、アン・ハサウェイ、クリスティン・チェノウェス、マット・ボマー、マリサ・トメイ、ロブ・ライナー、ダスティン・ランス・ブラック、ブルース・コーエン等々。