石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

役者はいいのにストーリーがグダグダ―映画『愛しのグランマ』感想

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役者よし。プロットよし。でもストーリーが……

偏屈なレズビアンの詩人エル(リリー・トムリン)が、10代の孫セージ(ジュリア・ガーナー)の中絶費用を得るため、孫とともに旧知の人を訪ねて回るドタバタコメディー。役者もプロットも悪くないのにストーリーがぼやけていて、感心しないできばえでした。

リリー・トムリンも、ジュリア・ガーナーも、セージの母親ジュディ役のマーシャ・ゲイ・ハーデンも個々の演技はとてもいいと思うんだけど、肝心のシナリオに力がなさすぎ。キャラたちの行動のきっかけや理由がわかりにくいため、主人公のエルは「脈絡なくキレて、人が嫌がることをする老女」にしか見えず、セージは「とてもかわいらしいけど、成長も変化もなく、常に困りながらおばあちゃんにくっついて歩いているだけのティーンエイジャー」、ジュディは「bossyだけど、脚本の都合で突然エルとセージに歩み寄る母親」だとしか受け取れませんでした。なんでこんなことになっちゃったのか。

プロットを見る限りではとても面白そうな作品なんですよ。「偏屈なレズビアンの祖母と、精子提供で子供を産んだ母親と、10代で望まぬ妊娠をした孫娘の3世代が、夕方がデッドラインのドタバタな1日を経て和解する」というのは、それほど悪い筋でもないはず。しかも主演があの『グレイス&フランキー』のリリー・トムリンなんだから、そりゃあ期待して見たんですが……思うに、話の進行が超一本調子で、キャラの意外な(そして愛すべき)側面を見せたり、キャラを変化させたりという工夫がほとんどないまま、とってつけたように大団円に持ち込んでしまったのがまずかったんじゃないかなー。

頑固で短気なレズビアンばあさんが活躍するロードムービーならば『Cloudburst』感想はこちら)という傑作が既にありますし、お金が必要な祖母と孫がいろいろやらかすコメディ-なら、『タミー/Tammy』(よく考えたらこれにもレズビアン要素は出てきますね)の方が笑えると思います。『愛しのグランマ』は、ファミリーものとしてもコメディーとしても今ひとつ中途半端な印象で、あたしの中では「何がしたかったのかよくわからない映画」という位置づけになりました。残念。

まとめ

ひとことで言うなら「最高の具材を揃えたのに、だしが今ひとつなおでん」のような映画。だしが効いてなさすぎて、具材のすばらしさが空回りしてるよー。もったいないよー。

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