石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

豪在住レズビアン、性的指向を理由に遺産相続から締め出され訴えを起こす

Last Will And Testament
Last Will And Testament / Ken_Mayer

オーストラリア在住の同性愛者女性が、性的指向が理由で父親の遺産相続を受けられないのは不当として裁判を起こしました。

A Dad Left His Lesbian Daughter Zero Inheritance and Now She’s Suing | VICE | Australia / NZ

訴えを起こしたドナ・ホワイト(Donna White)さんはカナダ出身。彼女の両親はドナさんがカミングアウトして以来きょうだいと差を付けた不公平な扱いを続け、ドナさんの結婚式にも出席せず、顔を合わせたくないとすら言っていたのだそうです。ドナさんの父親のシドニー・ポーティアス(Sydney Porteous氏は2016年4月、ブリティッシュコロンビア州リッチモンドの不動産と約30万ドル(約2500万円)相当の投資物を残して亡くなったのですが、その遺産もドナさん以外のきょうだい二人で分けるものとし、ドナさんの相続額はゼロにされていたとのこと。それで裁判となったわけ。

ちなみにブリティッシュコロンビア州で1984年、ゲイ男性がやはり性的指向が原因で遺産相続で不利な扱いを受けたとして裁判を起こした( Patterson v Lauritsen )とき、裁判所はこの男性の訴えを認め、判決文で「現代社会では、同性愛は、思慮分別のある親が子の相続権を奪ったり、利益を制限したりすることを正当化し得る要因ではない」と述べています。2006年のよく似た裁判(Peden v. Peden, Smith et al.)でも、裁判所はこの考え方を支持しました。これらの判例を見る限り、今回の裁判もドナさんに有利に働くのではないかとは思うのですが、それでもやるせない気持ちはぬぐえません。

自分が死んでからまで同性愛者の子供を差別したいという欲望というのは、いったいどこから出てくるんでしょうね。差別する側は何らかの正義をなしているつもりなのかしれませんが、傍から見れば金の力で子の性的指向に「懲罰」を与えようとするゲスな親だとしか思えません。ああ、そう言えば数年前、香港の大富豪が「レズビアンの娘と結婚すれば、その相手の男性に約130億円やる」と発表して話題になったことがありましたっけ。当の娘のジジさんからは「お金で私を売るようなものだ」と吐き捨てられていましたが、今回のカナダの件のような「同性愛者の子に遺産はやらん」方式もこれと大差ないぐらい下品で有害だと思います。さっさと裁判にけりがついて、公正な判決が下されるよう願っています。