石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

豪女子テニス選手が同性婚に反対し、トランスジェンダーを悪魔呼ばわり。ナブラチロワが真っ向批判

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4大大会24勝の記録を持つ豪州の女子テニス選手マーガレット・コートが、同性婚やトランスジェンダー、ノンバイナリーの人々などを中傷する発言を連発。マルチナ・ナブラチロワがこれらの発言を真っ向から批判しています。

詳細は以下。

Martina Navratilova Slams Margaret Court In Open Letter

オーストラリアでは2017年5月9日、カンタス航空のアラン・ジョイス(Alan Joyce)CEOが、パースで開かれたビジネスフォーラムの最中、同社の同性婚支持キャンペーンが気に入らないという男から顔面にパイをぶつけられたばかりです。ジョイス氏はそれにも負けず、翌日「わたしたちを黙らせようといかなる脅し(bullying)や抑圧を試みても無駄」であるとする声明を発表しています。しかしながら現在パースでキリスト教の牧師をしているというマーガレット・コートはこれがまったくお気に召さなかったらしく、地元紙に載せたカンタス宛の公開書簡で抗議の意を表明したのだそうです。書簡の文面は、同国の政治記者ジェーン・ノーマン氏の以下のツイートで見ることができます。

簡単にまとめると「自分はオーストラリア代表選手だった。同性婚を支持するカンタスには失望した。聖書には結婚は男女のものと書いてある。カンタスにはもう乗らない」てな内容ですな。スポーツで一国の代表となることが同性婚とどう関係するのか、よくわかりませんが。

これだけならまだしも、コートはインタビューで「テニス界はレズビアンだらけ」で、レズビアンたちが若い子を「パーティーやら何やら」に誘い込んでいるという意見を開陳。さらに、トランスジェンダーやノンバイナリー(男でも女でもない性自認を持つ人のこと)などは「すべて悪魔」であり、子供たちの心を狙うヒトラーや共産主義の計画の一部だなどという見解をも披露したのだそうです。

これらの一連の発言に対し、オープンリー・レズビアンの女子テニス選手マルチナ・ナブラチロワは、Twitterで以下のような反応を見せています。

訳:「マーガレット・コート・アリーナ」(訳注:メルボルンにある、コートの名を冠したテニス競技場)の名前を変えるべき時かもね……それから、マーガレットは次の旅行では船に乗るんじゃない?」

これはただの軽口ではなく、ナブラチロワはマーガレット・コート・アリーナに宛てた公開書簡をサンデー・モーニング・ヘラルドで発表し、自分がなぜ同アリーナの名前を変えるべきだと思っているのかを明快に説明しています。ナブラチロワらしい簡潔でユーモアの利いた文章なので日本の方々にもぜひ直接読んでいただきたいのですが、とりあえず以下の3パラグラフだけざっくり訳してみました。

コートとは誰なのかという問いへの答えは、今や明らかです。彼女はすばらしいテニス選手で、かつレイシスト(訳注:ナブラチロワによると、コートはかつて南アフリカに関して人種差別的な発言をしたことがあるんだそうです)で、ホモフォーブなんです。彼女の辛辣なことばは、単なる一意見ではありません。彼女はLGBTの人々を平等な権利から遠ざけておくために積極的に活動しているのです(コートのための注釈:わたしたちもまた人間なんですよ)。彼女はどこにでもいるトランスの子供たちやトランスの大人たちを悪魔扱いしているのです。

It is now clear exactly who Court is: an amazing tennis player, and a racist and a homophobe. Her vitriol is not just an opinion. She is actively trying to keep LGBT people from getting equal rights (note to Court: we are human beings, too). She is demonising trans kids and trans adults everywhere.

それに、LGBTをナチスや共産主義者や悪魔と結びつけるですって? それは駄目です。これは本当に病的で危険なことです。こうして絶えずLGBTコミュニティをバッシングしたり汚名を着せたりすることで、子供たちが余計に苦しめられることになるのです。

And now, linking LGBT to Nazis, communists, the devil? This is not OK. This is in fact sick and it is dangerous. Kids will suffer more because of this continuous bashing and stigmatising of our LGBT community.

子供たちが今後、人と違うという理由で殴られ続けることで、マーガレット・コートの手はどれだけの血で汚れることでしょうね? こんなのは駄目です。あまりに多くの子供たちが、この種の不寛容のせいで、この種のバッシングのせいで、そしてそう、この種のいじめのせいで自ら命を絶ってしまうんですよ。これは、駄目です。

How much blood will be on Margaret's hands because kids will continue to get beaten for being different? This is not OK. Too many will die by suicide because of this kind of intolerance, this kind of bashing and yes, this kind of bullying. This is not OK.

白人優越主義者の名前を冠した建物などを改名しようという動きが各地で高まりつつある今、ナブラチロワの言っていることには一理あると思います。一方でマーガレット・コート・アリーナには名前を変えない自由があるともあたしは思いますが、この際重要なのは実際に改名するかしないかではないと思うんですよ。J.k.ローリングがかつて言ったように、大事なのはクロゼットにいる怯えたゲイ(やトランスやノンバイナリーなど)の子供たちが、ホモフォビア(や、性的少数者に対するあらゆるフォビア)に異議が唱えられるところを目にすることです。その意味で、今回のナブラチロワの抗議には、それだけでとても大きな意味があったとあたしは考えています。