石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

インドでTV局(など)にアウティングされたレズビアンが失職

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インド南部カルナータカ州の州都バンガロールで非公式の結婚式を挙げたレズビアンカップルがTV局に写真を撮られ、しかもその写真をTVで流されたため、ひとりが職を失ったそうです。TV局だけじゃなく、親と警察もずいぶんひどいよこの事件。

詳細は以下。

All hell breaks loose as two women wed in Koramangala - Bangalore Mirror

Bangalore Mirrorによれば、この女性らは21歳と25歳で、バンガロールで結婚式を挙げた初のレズビアンカップルなのだそうです。両親が関係を許してくれなかったため、ふたりは家を出てバンガロール南部のコラマンガラで同居していました。片方の父親が失踪人届けを出したものの、ふたりとも成人であるため、その時点では警察は何もできなかったとのこと。そこで親たちは、ふたりの結婚式のことを警察に通報したのだそうです。

同国では英植民地時代につくられた刑法377条により、同性同士の性行為は違法とされています。この377条を根拠に同性婚を処罰できるかどうかというのは意見が分かれるところらしいのですが、Gay Star Newsによれば警察はこのカップルを告訴し、その後TV局がふたりの写真を撮ってTVで公開したため、ひとりは勤め先から解雇されてしまったとのこと。解雇の経緯を、彼女はこんな風に話しています。

(訳注:朝会社から電話で進退をどうするか聞かれた後)、午後5時半に会社に電話すると、人事部はあなたに辞めてもらうと決定した、朝からメディアで話題になっているのはあなただとわかっているからと言われました。まったく不公平です。

‘When I called them back at 5.30 pm, they said HR had decided that you leave the company since they know that it’s me who is making rounds in the media from morning. This is totally unfair.’

親と警察とTV局と勤め先がよってたかってアウティングとハラスメントにいそしんだようなものですよね、これ。成人同士が合意のもとに誰を愛し誰と暮らすかについて、他者がここまで強制的に介入できてしまうだなんて、社会のシステムに不備があるとしか思えません。

でね、日本のいちレズビアンであるあたしとしては、「インドは怖いなあ」では済まされないんですよこの話。出雲まろうさんが『まな板のうえの恋』(JICC出版局)で体験談として振り返っていたように、「女同士で駆け落ちしたはいいが、何が何でも娘には見合いで男と結婚させると決意している親が警察に届けを出し、あっと言う間に見つかって連れ戻された」なんて話はちょっと前まで珍しくもなかったんですよ。ホモフォビアや異性愛中心主義に、「女」や「子供」の人生は親(主に父親)が全部決定していいのだというアジア的なパターナリズムが加われば、どこの国だって起こることは一緒よ。21世紀になってもまだこんなニュースを目にしなければならないことに、あたしは今、かなり打ちひしがれています。