石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

2016年のハリウッド映画にトランスのキャラは皆無(米研究)

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2007年~2016年の一般的な映画900本を調べた南カリフォルニア大学の研究で、ハリウッド映画ではLGBTの登場人物がいまだ少なく、トランスジェンダーのキャラに至っては2016年の映画にひとりも出てこなかったことが報告されています。

詳細は以下。

None of Hollywood's characters were trans last year

この研究は同大学のステイシー・L・スミス(Stacy L. Smith)博士らによるもので、以下のPDFで論文を読むことができます。冒頭のインフォグラフィックだけでもじゅうぶん衝撃的なので、たくさんの人に見てほしいです。

今回のニュースの見出しを見て「え、『リリーのすべて』は?」と思ったんですが、あれは日本でこそ2016年公開だったものの、本国でのリリースは2015年なんですね。それにそもそも、上記PDFによれば2014年も2016年もトランスジェンダーのキャラはゼロで、2015年にようやく1人いるだけだったんだそうで……つまり『リリーのすべて』自体が、ハリウッドの映画産業の中では異色の作品だったということが言えそうです。

ちなみにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルの描写も決して多いとはいえず、2016年の映画に出てきたLGBの登場人物は全体のわずか1.1%に過ぎなかったとのこと。なお、「LGBTは人口比から言っても少ないんだから映画にも出て来なくて当然だろう」という批判は当たりませんよ。この研究によればLGBTの人々は米国の人口の3.3%を占めていて、そこから言っても1.1%というのは少なすぎるんですから。さらに、そのわずかなLGBキャラの大半をゲイ男性が占めていて、レズビアンは17%、バイセクシュアルは11%しかいなかったというのも大問題。結局フィクションの中でも、「性的少数者の中でもっとも権力を持ちやすいシス男性のゲイばかりが優先的に取り上げられ、あとはなおざりにされる」という現実世界と同じことが起こっているわけで、やはり「『ムーンライト』がオスカーを獲ったからハリウッドは進歩的」なんて言えたもんじゃないということがよくわかります。

なお同研究ではキャラクタや監督のジェンダー比や性的ステレオタイプ、人種的マイノリティや障害者のキャラの比率などについても調査されているのですが、論文冒頭のグラフの数々を見ただけで「ハリウッドは『ポリコレ』に席巻されている」なんていう言説がいかに的外れであるかがよくわかります。そりゃあ、スミス博士もこう言うはずだわ。

「わたしたちは毎年、変化がみられることを期待するのですが」と、南カリフォルニア大学教授でこの研究の筆頭執筆者ステイシー・L・スミスはAssociated Pressに語った。「残念ながらその期待は今ひとつ実現していません」

"Every year we're hopeful that we will actually see change," Stacy L. Smith, an USC professor and the study's lead author, told the Associated Press. "Unfortunately that hope has not quite been realized."

Gay Star Newsによれば、トランス・メディア・ウォッチ(Trans Media Watch)のジェニー・カーモード(Jennie Kermode)氏は、今回の南カリフォルニア大の研究結果に「驚きはしない」が「失望した」と述べているそうです。彼女はまた、ハリウッド作品ではトランスはおもしろおかしい存在にされるか、性別移行のみに注目した物語にされるかのどちらかになりがちで、『タンジェリン』などインディペンデント映画の方が平等で多様な描写が多いと指摘しているとのこと。言えてると思います。結局のところ、大資本が作って大スクリーンで上映する作品の変化を待つより、こうした小規模作品の増加と繁栄に期待した方が早いのかもしれませんね。上記『タンジェリン』なんて、iPhone 5Sの8ドルのアプリで撮影してあれだけの高評価を勝ち取っているんですから、望みをかけるならこちらの方向かなあと個人的には思ってます。