石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

見どころはサンバースとダンバース姉妹―ドラマ『スーパーガール』3x02感想

Supergirl 2018 Calendar

束の間の幸せを楽しんでおこう

テレパシーで他者の恐怖を操る強敵「サイ(Psi)」(ヤエル・グロブグラス)を相手にカーラ/スーパーガール(メリッサ・ブノワ)が苦戦する回。サンバースおよびダンバース姉妹の見どころ多めで楽しいんですが、この幸せが長くは続かなさそうな予感も。

今週のサンバース

S3E2は「キャラそれぞれの朝の情景で始まり、それぞれの夜の情景で終わる」という様式美にのっとった構成になっています。特筆すべきは、オープニングシーンがいきなりアレックス(カイラー・リー)とマギー(フロリアナ・リマ)のレズビアンカップル、通称サンバースのベッド内でのいちゃいちゃとキスで始まること。さらにそれが、ヘテロ向け作品でしばしば妄想力豊かに展開されるところの「非日常的でエロエロな見世物としての『レズビアン』像」ではなく、単なる婚約済カップルのほほえましい日常風景のひとこまとして描写されているところがとてもいいと思いました。

マギー役のフロリアナ・リマは、以前サンバースの描写についてTV Lineに対してこんなことを言っています。

大切なのは、(マギーとアレックスを)ただ恋人同士の関係として描いて、ふたりが同性愛者の女性であるということにばかり焦点を当てたりしないということだと思います。

I think what’s important is just to show this as a relationship and not to focus fully on the fact that these are two gay women.

今回のサンバースのセクシュアリティとリレーションシップの描写は、まさしくこのことば通りのものになっていると感じました。

ただひとつ問題なのは、マギー・ソーヤーは今シーズンのレギュラーキャラではないため、いつまでも今回のような平和は続かないだろうということ。エグゼクティブ・プロデューサーのアンドリュー・クライスバーグ(Andrew Kreisberg)は「マギーは死なない」「(シーズン3の)最初の5エピソードのフロリアナは素晴らしかった」と言っていますが、サンバースの未来については明言していません。同じくエグゼクティブ・プロデューサーのグレッグ・バーランティ(Greg Berlanti)も多くを語らない一方、シーズン3ではアレックスの恋愛生活をさらに追及していきたいと話しています。ざっと調べたところ、下馬評では今後サンバースは破局し、その後アレックスが別の人と付き合い出すのではないかと言われているようで、実際、今回のエピソードの中にもなんだか不穏な伏線があったりします。次回(S3E3)はマギーが中心の話なのですが、そんなわけで、あまり落ち着いて見てはいられなさそうです。

今週のダンバース姉妹

カーラの悩みが単なる「モン=エル恋しや、ほうやれほ」ではなく、「『カーラ・ダンバース』と『スーパーガール』のふたつの自己像に引き裂かれる自分」という以前からのテーマにからめてあるところが好印象でした。このテーマをエレベーターの中での変身中のシークエンスを使って視覚的に表現しているところも目新しく、効果的だったと思います。

そんなカーラを時に慰め、時に力づけるアレックスの姉妹愛がまた楽しかったです。特にじゅうたんの上でお尻歩きでカーラに近づいていってハグするところなど、まるで小さい女の子同士のようで、ダンバース姉妹のこれまで共に過ごしてきた時間の積み重ねが感じられました。アレックスのこういうちょっとコミカルで愛情こまやかな面が掘り下げられていくのは、いつ見てもいいものです。

その他

レナ・ルーサー(ケイティ・マクグラス)の出番が多いのはうれしいんだけど、今後ジェイムズ・オルセン(メカッド・ブルックス)とレナをくっつけようとしているのではないかと思われる描写には、ちょっと安易すぎるんじゃないかと思いました。唐突にルーシー(ジェナ・ディーワン=テイタム)を捨て(S1)、唐突にカーラとくっつき(S1)、唐突にカーラと別れた(S2)ジェイムズに今さらレナをあてがったところで、ケミストリーのケの字も生まれないと思うんだけど。春先の犬山モンキーセンターの猿山じゃあるまいし、目の前に現れた相手と手あたり次第につがわせておけばいいってもんじゃないでしょう。それに第一、ルーサー家の怖さを熟知しているはずのジェイムズをしてレナと恋愛させるのなら、よっぽど説得力のあるプロットを用意しなければ――そして、これまでのモン=エル周りの描写を考えると、このドラマのヘテロ恋愛のプロットにはあまり期待できなさそうな気がします――、このキャラがもはや猿どころか「動くものなら何にでも飛びつく発情期のカエル」にしか見えなくなってしまいそう。これ以上このストーリーラインを追うのは、できればやめてほしいなあ。

まとめ

ロマンス方面でもカーラとのやりとりでもアレックスが大活躍していて、アレックス好きにはこたえられない回でした。その分、この先のサンバースやレナ・ルーサーの命運が心配です。シーズン丸ごとDL購入しちゃったのに、サンバースが別れてレナがジェイムズとくっついたら、もう見るものがなくなっちゃう。どうなるんだ、これ。