石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

ソニーが映画『コール・ミー・バイ・ユア・ネーム』のゲイ要素を隠して宣伝。瞬時にバレてツイート消去

Call Me By Your Name

ソニー・ピクチャーズUKが、ゲイものの青春映画『コール・ミー・バイ・ユア・ネーム(原題:Call Me By Your Name)』をあたかも男女の恋愛映画であるかのようにみせかけた宣伝ツイートをし、瞬時にバレて批判されています。

詳細は以下。

Sony tried to erase the gay romance in ‘Call Me By Your Name’ but Twitter wasn’t having it / LGBTQ Nation

『コール・ミー・バイ・ユア・ネーム』は、アンドレ・アシマン( André Aciman)の同名の小説を原作とする青春映画。内容は80年代のイタリアを舞台に、17歳の主人公エリオ(ディモテ・シャラメ/Timothée Chalamet)が24歳のアメリカ人学生オリヴァー(アーミー・ハマー/ Armie Hammer)に恋をするさまを描くというもので、監督はルカ・グァダニーノ(Luca Guadagnino)。オスカー候補だと言われている話題作です。

しかしながらソニー・ピクチャーズUKの公式Twitterアカウントは、この作品の宣伝として、なぜか10代男女の恋愛映画にしか見えないような画像に「力強さが圧倒的なロマンス」("romance overwhelming in its intensity")云々というコピーをつけたものを掲載したんだそうです。このツイートは現在削除されていますが、LGBTQ Nationの以下のツイートで画像の一部を見ることができます。なるほど、これじゃどう見てもヘテロ恋愛のティーン・ムービーだわ。

上記の画像でエリオと並んで座っているのは女友達のマルツィア(エステール・ガレル/Esther Garrel)で、映画では別にこのふたりが恋仲になったりはしないのだそうです。よく言って迂闊、悪く取るならかなりミスリーディングな宣伝の仕方だと言えましょう。

ちなみにLGBTQ Nationには消えたツイートのスクリーンショットが丸ごと掲載されており、それを見るに、ソニーは上記画像にこんな文章を添えていたらしいです。

(映画批評サイトの)ロッテントマトで新鮮保証された#CallMeByYourNameはもう見た? 現在上映中です。

Have you seen the @RottenTomatoes Certified Fresh #CallMeByYourName yet? At Cinemas now.

いや確かにこの作品はロッテントマトで高く評価されてるけど、それは男性と男性のロマンスとしてだから。だいたい映画の公式ポスターからしてこんな(以下、ポスターと同じ写真が使われている小説とサントラの画像です)だし、

Call Me By Your Name

Ost: Call Me By Your Name

予告編もこんななんですよこの作品。

こういうシーンがあることだって、既に報じられてますし。十代男女のラブストーリーだと誤解して映画館に行った人が、大スクリーンでこれを見て喜ぶと思ってるんでしょうかソニーは。

さて、以下はソニー・ピクチャーズUKの元ツイートに対する、Twitterユーザーからの反響です。

訳:「ソニーによる『コール・ミー・バイ・ユア・ネーム』の異性愛化を見ると、ハリウッドはいまだにクィア映画の売り方を知らないのだと改めて実感する」。

訳:「ソニー・ピクチャーズUKよ、すごく侮辱的で不正直だ、このゲイロマンス映画を異性愛ものとして売ろうとするだなんて。何を怖がってるんだ? 誇りを持てよ」。

ソニー・ピクチャーズUKの言い回しを流用した、以下のような大喜利も始まっています。

訳:「『ブロークバック・マウンテン』はもう見た?」。(蛇足ながら『ブロークバック・マウンテン』はゲイ映画で、このふたりの間にロマンスは発生しません)

訳:「ゴージャスな恋愛映画『キャロル』はもう見た?」。(蛇足ながら『キャロル』はレズビアン映画で、このふたりの間にロマンスは発生しません)

それにしても、「嘘をついてでもなんでもとにかく観客を映画館に行かせてしまえばいい」式の不誠実な宣伝は日本のお家芸(例:女性向けはスイートに、誤解を招く表現…「アポロ計画」だけじゃない、映画邦題の問題点 町山智浩さんに聞く)かと思っていたのに、海外でもこんなだったとは。もっともソニーって、映画『パレードへようこそ』のUS版DVDジャケットを加工してゲイ要素を隠してしまった前科があるところですから、今でもその延長でこういうことをしているだけなのかもしれませんが。いずれにせよネットでいくらでも作品のあらすじや製作者・出演者の発言が探せるこの時代、映画を見るなら宣伝などあてにせず自分でさっさと情報を取りに行った方がいいってことなんでしょうねきっと。