石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

Her First Night Without Her―ドラマ『スーパーガール』3x05感想(ネタバレ)

ポスター/スチール 写真 A4 パターンH スーパーガール 光沢プリント

悲しいけど完成度の高い回

ついに来た、サンバース(アレックスとマギーのレズビアンカップル)の破局回。リアルで説得力もあり、細かいところまでとてもよく作りこまれていたと思います。

決め手は音楽と呼び名、そして現在進行形

今回サンバースが画面に現れるのは、既にさんざん話し合い、別れ話も終盤に近付いているというシークエンスから。そこから互いを愛する気持ちは変わらないこと、それでもどうしても別れるしかないことを確認した後、別居に向けて荷造りを始めるという流れになっています。そのあとついつい盛り上がってセックスしたりもしてしまうんですが、やはり結論は変えられず、ふたりは別れます。

関係を諦めきれないマギー・ソーヤー(フロリアナ・リマ)と、既に別れる覚悟を決めているアレックス・ダンバース(カイラー・リー)との差異が、小道具や音楽を駆使してていねいに描かれていくところがよかったです。たとえばマギーが登場時に無言で眺めているのは、2話前のウエディング・シャワーの時にもらったカードだったりします。アレックスが荷物をまとめながら聴いていたルーク・シタル=シンの"Killing Me"は愛する人がもうそばにいない悲しみを歌った曲で、そこからマギーが切り替えるシンディ・ローパーの"All Through the Night"は、「一晩中起きていてあなたといよう、過去なんてない、終わりがくるまで終わりはない(大意)」という内容の歌。そこでアレックスがついほだされて一緒に踊り出し、キスからセックスにまでなだれこんでしまう(ここのリアル感に拍手。こういうことってあるよね)のは、彼女なりの未練の現れです。嫌い合っての別れではないということが、すごくよく伝わってきます。

行為後のユーモラスでちょっと悲しい会話が、またよくできていました。「英語の現在進行形は進行中の動作だけではなく、近い未来をも表すことができます」というのは日本の中学校でも習うことだけれど、それを使って別れ際のレズビアンカップルの思惑の違いをこんな風に表せるだなんて、中学生の頃の自分に教えてやりたいわ。

最終的に双方納得した後でマギーが出ていく場面のやりとりも、よく考えられていたと思います。ここでマギーはいつものように「アレックス」とは呼びかけず、精一杯の笑顔で「じゃあまた、ダンバース」("See you around, Danvers.")と言うんです。これはS2E3での初対面時、マギーが去り際にアレックスに言ったのと同じ台詞で、つまり、あの頃と同じ「プロフェッショナルな刑事と政府エージェント」という関係に戻ろうという言外の意味がこめられているわけ。それに対して泣かないように頑張りながら応じるアレックスもまた、ここではもう彼女のことを「マギー」とは呼んでいません。アレックスがマギーをそう呼び始めたのはS2E6で彼女に告白してキスしたときからで、つまりこれは想い人に対する呼び方だったのですが、それをもう終わりにするよというアレックスなりの意思表示なんです。最後の最後まで気が利いてるよ、今回のサンバースの会話は……!

『スーパーガール』ではこれまでにもさまざまなカップルの別れが描かれていますが、番組史上もっともよく作りこまれていたのはこのサンバースの別れだと思います。シーズン開始前からずっと、「前シーズンであれだけ人気を博したサンバースをいったいどうやって別れさせるんだろう」と疑問に思っていたのですが、これならもう納得せざるを得ません。シンディ好きであるらしきマギーがあの後この曲(歌詞)の心境だったんじゃないかと心配ではありますが、

日にち薬でいずれこの曲(歌詞)ぐらいの境地に落ち着いてくれるといいなと思います。

余談

本エピソードの放映(米国時間で2017年11月6日)後の、カイラー・リーとフロリアナ・リマのやりとり。


まとめ

日本では現在(2017年11月)シーズン2の放映中。それを見て新たにサンバースのファンになられた方の中には「次のシーズンでこのふたりが別れちゃうなんて」と不安をお感じの方もいらっしゃるかもしれません。一足先に今回のエピソードを見た自分としては、「別れることは別れるんだけど、とてもいい回だったよ」とここで強調しておきたいです。結果的にアレックスとマギーは別々の道を歩むことになったけれども、サンバースは最後まで『スーパーガール』の物語に愛され、大切にされたカップルだったと思います。