石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。内容は主に(1)LGBTニュース、(2)ガール・オン・ガールのポップカルチャーなど。

「2018年のホモフォビアはこんな感じ」:BBCスコットランドが短編動画発表

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BBCスコットランドの若者向け番組『The Social』が発表した、「2018年のホモフォビアはこんな感じ」("This is how homophobia feels in 2018")というショートフィルムが大変リアルで胸に刺さります。日本もちょっと登場するんですよ、大変皮肉な意味で。

詳細は以下。

BBC - BBC Scotland - Time For Love — the extraordinary new film exploring whether pressures of convention turn us against one another

動画はこちら。

この動画は、スコットランドのグラスゴーを舞台に、同性同士が人前で手をつないだりさよならのキスをしたりすることに対していまだにのしかかる社会的抑圧について、詩のかたちで静かに、かつ力強く述べていくというもの。ストーリーはまず、男性主人公が公園で男性の恋人と過ごしているところから始まります。冒頭のナレーションを訳すと、こんな感じ。

グラスゴー、3月。ぼくらは公園で手をつないで歩いてる。3時13分で、ぼくは遅刻していて、もう選択しなくちゃいけない時間だ。

It's Glasgow, March. And we walk hand in hand in the park. Now it's three thirteen and I'm late and it's time I make a choice.

何を選択するのかというと、恋人にさよならのキスやハグをするかどうかです。同性同士で手をつないで歩くことさえ、じろじろ見られたり、ひそひそ話をされたりするのに、キスやハグで愛情表現をするのはもっと大変(隣人や同僚が相手なら、何も言われないのに!)だからです。主人公は、同性同士での愛情表現に投げかけられる凝視や敵意について「ぼくはいわば歩く肉塊で、『正常』("normality)"の口にバリバリ食べられている」と表現したあと、こんな疑問を呈します。

ところでその『正常』って、正確に言うとどういう意味?

And what does that mean, exactly?

ここから動画は、同性カップルを抑圧する「正常である」("normal")という概念のあやふやさを解き明かしていきます。たとえば、「自分たちは正常」("We are normal")だと信じてゲイカップルに顔をしかめる男の妻が流産してしまうことだってあり、そうなれば男も妻も「もう正常じゃない」と苦しむことになるということとか。そして、ここでいよいよ日本の話題が登場します。

そしてこの年老いた男。ぼくを見ると気持ち悪がる男だが、
彼は週末に日本に手紙を書いて、
友達に、使用済みパンティを送ってくれと頼んでいる
そこでは自動販売機で買えるんだ
もちろん、完全に「正常な」目的でね

And that old man I make him sick
But he writes to Japan at the weekend
to get a friend to send the used knickers
you can vend from a machine there
for completely normal purposes, of course

「日本では女性の使用済み下着が自動販売機で買える」というのはドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』にも出てきた話ですよね。そして、1990年代のいわゆるブルセラ産業全盛期の日本には本当にそういう自動販売機があり、女子中高生の使用済み下着と称するものが売られていたんです。その手の自販機が廃れた今でも、日本では異性愛者男性が女性の使用済み下着に欲情することが「正常」とみなされているということ自体はさほど変わっていないので、上記動画の日本観はそう大きくはずれてもいないと自分は思います。動画はこの後、こう続きます。

ほら、「正常であること」とは、不特定多数の人の寄与によってつくられた幻想なんだ

See, normality is a crowd-sourced fantasy

動画の主人公がボーイフレンドとさよならのあいさつをしなければならない時間は15:15。詩の中で彼が何をどう考え、どんな行動を選ぶかは、ぜひご自分の目でごらんになってください。