石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

今週の未紹介LGBTニュース(2018年5月20日)

Prince & Knight

新作絵本"Prince & Knight"絶賛発売中

Prince & Knight

Prince & Knight

New children’s book ‘Prince & Knight’ is just in time for the royal wedding / LGBTQ Nation

2018年5月1日、英国のロイヤル・ウェディングに先駆け、王子と騎士が恋に落ちるというストーリーの絵本"Prince & Knight"が発売されました。日本のAmazonでも購入可能です。これはGLAADとBonnier Publishing USAのコラボレーションでつくられた絵本で、エディターのSonali Fry氏は以下のように声明を発表しています。

子供には、自分が本で読んでいるキャラクターに自分を重ね合わせる必要があります。子供がメディアの中に自分自身を、家族を、友達を見出すことの大切さは、どれだけ強調してもしすぎることはありません。わたしたちは、読み手を力づけるだけでなく、どんな子供も透明人間のように(自分が他人から見えていないように)感じたりしない物語を創り出すべく努力しているのです。

“Children need to identify with the characters they’re reading about. The importance of children recognizing themselves, their family, and their friends in media cannot be overstated. We strive to create stories that not only empower, but ensure that no child feels invisible.”

昔のおとぎ話ってたいていヘテロノーマティブだし、おりしも今、世界中のメディアがヘンリー王妃とメーガン・マークルのヘテロカップルを熱狂的に追いかけまくっているところだから、こういう絵本ってなおさら大事だよね。

ブロードウェイ版『エンジェルス・イン・アメリカ』、LGBT団体&HIV/AIDS団体に安価でチケット提供

Broadway’s “Angels In America” Offering $5 Tickets To LGBT, HIV/AIDS Organizations | NewNowNext

2018年のトニー賞11部門にノミネートされているブロードウェイ演劇『エンジェルス・イン・アメリカ 国家的テーマに関するゲイ・ファンタジア』("Angels in America: A Gay Fantasia on National Themes")が、ニューヨーク・シティーのLGBT団体やHIV/AIDS団体に5ドルでチケットを提供するそうです。プロデューサーのティム・レヴィーはこんな風にコメントしているとのこと。

「『偉大な仕事』を、コミュニティの中で本当に『偉大な仕事』をしている人たちと分かち合えるようにしたかったのです」

“We wanted to be able to share ‘The Great Work’ with those in the community who are actually doing The Great Work,”

いうまでもなくこれは劇中の有名なフレーズ、"The Great Work Begins"をもじったもの。ステキ。


ジェンダー・ニュートラルな赤ちゃんの名前トップ10

Here are the 10 most popular gender-nuetral baby names / LGBTQ Nation

米国ではユニセックスな名前の子供は1880年には9%だったのに、2016年には15%まで増えているんだそうです。現在人気のあるジェンダー・ニュートラルな名前のトップ10は、以下のようになるとのこと。

  • ウィリー(Willie)
  • ケリー(Kelly)
  • テリー(Terry)
  • ジョーダン(Jordan)
  • テイラー(Taylor)
  • アレクシス(Alexis)
  • レスリー/レズリー(Leslie)
  • ジェイミー(Jamie)
  • シャノン(Shannon)
  • ショーン(Shawn)

人の名前って時代でずいぶん変わるから、漫画や小説などに英語圏のキャラを登場させる機会がある人は、普段からこういうのに気をつけておいた方がいいかも。日本語圏の作品で、「それ、どう考えてもおばあちゃんの名前だろ」という英語名を少女につけちゃってるのってけっこう見かける気がしますし。

85歳でカミングアウトした男性が初めてゲイ・プライドに参加

Man Attends His First Gay Pride After Coming Out At 85: “I Regret Being Such A Sissy” | NewNowNext

85歳にしてゲイとしてカミングアウトし、86歳で初めてゲイ・プライドに参加したゲイ男性のマーティンさんが、自分が「いくじなしだった」ことへの後悔と、他の同性愛者たちへの励ましを語っています。

マーティンさんは16歳のときからカメラマンとして働いていて、ずっと自分のセクシュアリティを隠してきたのだそうです。以下、彼の弁。

わたしは愛情を注いでともに生きることができるすてきなパートナーを、ソウルメイトをみつける機会を逃してしまいました。わたしに言わせれば、(自分が若い男性であるときに)若い男性とくっつきたいのなら、遠慮なくそうしろということです。そうしなさい。もちろんだ。そうするべきなんだ。

I’ve missed the boat as regards finding a lovely partner, a soulmate that I could love, live with. If you ask me, if you want to set up with another young guy, go ahead. Do it.You've got it. You owe it to yourself.

動画の後半には、マーティンさんのメッセージにインスパイアされた若い人たちからの声と、初めてのプライド・イベントに参加するマーティンさんの姿が収録されています。この動画はチューインガムのブランド5 Gumの、「#NoRegrets(後悔するな)」キャンペーンの一環として制作されたものだとのこと。

カーディ・Bが「女性とのたくさんの経験」を公表

Rapper Cardi B comes out as bisexual / LGBTQ Nation

リタ・オラの新曲で、クィアな人々から批判を浴びている「Girls」に参加しているヒップホップミュージシャン、カーディ・B(Cardi B)が、謝罪のツイートの流れで、自分には女性との経験がたくさんあると発言しています。

訳:「LGBTコミュニティにとってオフェンシブなことばを、それと気づかずに使ってしまったことはわかっています。そのことについて謝罪します。全部の人が正しい「利用規約」を知ってるわけじゃないんです。学習したので、そういうことばを使うのをやめました」

訳:「わたしとビービー・レクサとチャーリーXCXが出てる、リタ・オラの“GIRLS”を聴いて。わたしたちは決してあの歌で誰かを傷つけようとしたわけでも、悪意を持っていたわけでもありません。個人的にわたし自身には女性との経験があります。たっくさんの女性とのね! あれはいい歌だと思ったし、自分の経験は忘れてません」

うーん、問題視されているのは歌い手の女性経験の有無じゃなく、あの歌には女性から女性への欲望を「酒の上の不埒」や「男の目を喜ばせるためのキュートでセクシーなもの」と位置付けてしまう危険性があるってことだと思うんだけどなあ。意地悪なことを言うと、別にヘテロセクシュアルの女性でも何百人もの女性と寝ることはできるし、その上で、こないだこちらのエントリで指摘したような「ほら見て! アタシはなななんと! 女の子とキスしちゃうんですよー!! それ以上の、シスヘテ男好みのポルノみたいなことも!! でも酔っぱらった勢いでだから、同性愛者なんかじゃないんですうー!!」みたいな主張をすることだってできちゃうと思います。キムチや焼き肉を食べた経験がいくら豊富でも、その人がコリアン差別をしないことの証明にはならないのと同じ、と言えば通じるかしら。とにかく、カーディ・Bにはヘイリー・キヨコの批判が今いち伝わっていないように思いました。

米メリーランド州でコンバージョン・セラピー禁止

Maryland Bans Conversion Therapy | NewNowNext

メリーランド州で2018年5月15日、LGBTの若者に対するコンバージョン・セラピー(性的指向や性自認をシスヘテロに『転換する』という触れ込みのセラピー)を違法とする法案に知事がサインしました。これにより同州は、このような治療を禁じた11番目の州に。

wfaa.com によれば、メリーランド州以外で既にコンバージョンセラピーが禁じられている州は、カリフォルニア、コネチカット、イリノイ、ネバダ、ニュージャージー、ニューメキシコ、オレゴン、ロードアイランド、バーモント、ワシントン、コロンビア、ワシントンDCです。ニューハンプシャー州でも5月10日に未成年へのコンバージョンセラピー禁止法案が可決されており、あとは知事の署名を得るだけとなっています。

カナダが国勢調査などでサード・ジェンダーのオプション採用

Canada to add third gender option in government surveys | World news | The Guardian

カナダが今後政府による公的調査で「男」「女」以外にサード・ジェンダーの選択肢を選べるようにし、さらにサード・ジェンダーを選んだ人は自分の性自認を説明できるようにするというニュース。2021年の国勢調査も、この方式でデータ収集するんだそうです。

カナダ統計局のLaurent Martel氏によれば、この変更は、調査方法を2年間微調整した上でなされたものだとのこと。「わたしたちは、すべてのカナダ人が国勢調査で自分がどんな人なのかをあきらかにできるようにしたいと思っています」と彼は話しています。

カナダはちょっと前に公的サービスの書類で「母」「父」という語をやめて、ジェンダー中立な「親」という語を採用したことでも話題になりましたよね。人間をシステムの枠内に押し込めるのではなく、人間のありように合わせてシステムを新しくしていっているわけで、フェアだなあと思います。

東京・国立市でアウティング禁止条例が施行

カミングアウトは誰の権利? 東京・国立市でLGBTの勝手な公表を禁じる条例が施行

東京都国立市で、性的指向や性自認のカミングアウトは個人の権利であり、他者がアウティングしたり、親族などが本人のカミングアウトを拒んだりしてはならないとする条例(罰則なし)が施行されたというニュース。

これを読んでて思い出したのが、オーストラリアで2018年3月、Grindrでマッチした相手からアウティングすると脅され、1300オーストラリアドル(約108万円)を要求されたというゲイ男性の話。同性同士で結婚できる国でさえ、性的指向の暴露は今なお脅迫材料となり得るというわけです。条例はないよりあった方がいいよ。

ベイルート・プライドの主催者が拘禁され、イベントがすべて中止に

Lebanese Pride Ends Early With Organizer's Arrest | NewNowNext

レバノンで2018年5月12日から20日まで開催予定だったベイルート・プライドが警察によって中止させられました。5月13日に予定されていた朗読会が事前の検閲を受けていないという理由で開催不能となり、オーガナイザーのHadi Damienさんは拘禁されて、以下の選択肢を与えられたのだそうです。

  1. ベイルート・プライドの5月20日までの予定をすべて中止し、活動が行われないことを保証する書類に署名する。この場合、Damianさんは告発されない
  2. ベイルート・プライドの5月20日までの予定をすべて中止するが、上記の書類には署名しない。この場合、Damianさんは不道徳の扇動などの容疑で尋問を受けることになる

2番目の選択肢を選ぶと懲役2年の刑となる可能性があり、Damianさんは弁護士のアドバイスを受けて1番目の選択肢を選んだとのこと。

レバノンは2017年にアラブ圏で初めてLGBTプライド・ウィークを開催した国になったのに、2年目にはもうこんなことになるなんて。つらい。