石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的備忘録。

仏ゲイ男性が殴られ、顔写真をSNSに投稿。レピュブリック広場で抗議集会

Resistステッカー???レインボーフラグ???3パック

仏パリでLGBT団体の代表者がホモフォビックな暴力に遭遇し、血だらけの顔写真をSNSに投稿。同国では他にも同性愛者が暴力を受ける事件が相次いでおり、2018年10月21日、パリのレピュブリック広場でLGBTフォビアに抗議する集会が開かれました。

詳細は以下。

LGBT groups set to protest homophobic attacks in Paris · PinkNews
Marche contre l'homophobie : "La honte va changer de camp"

同国のLGBT団体、"Urgente Homophobie"のプレジデントであるギヨーム・メラニーさんは、2018年10月16日、パリでホモフォビックな暴力を受けたことをTwitterで報告しました。

訳:

今夜はわたしの番だ。

レストランを出たら、ホモフォビックな暴力。

鼻を折られた。

ショックだ。

そこらじゅう血だらけだ。

わたしは同性愛者で、今は2018年だ。

Ce soir c’est mon tour.
Agression homophobe à la sortie d’un restau.
Nez cassé.
Choqué. Du sang partout.
Je suis homosexuel, et nous sommes en 2018.

PinkNewsによるとこの日、メラニーさんはこのレストランで友人たちと一緒に、難民の友人のひとりがフランス滞在を認められたお祝いをしていたのだそうです。店を出た後、一行が道で別れの挨拶をしていたとき、メラニーさんたちがゲイだと気づいて不快になったらしき男が、ひとりを押しのけようとしてきました。メラニーさんらが「丁寧に」あっちに行ってくれと言うと、男は逆上し、ホモフォビックな罵倒語を叫んでメラニーさんの鼻を殴打したとのこと。

それでなくともパリでは最近、路上でキスしていたゲイカップルが殴られたりVTC(運転手付き観光車両、Voitures de tourisme avec chauffeur)に乗っていたゲイカップルが運転手から乗車拒否され、さらに殴る蹴るの暴力をふるわれたりという事件が相次いでいたところ。そこでSOSホモフォビアなどLGBT団体の呼びかけで、2018年10月21日、多数の人がレピュブリック広場に集まり、「もうたくさんだ!」とLGBTフォビアの根絶を訴えました。

こういうホモフォビックな事件や、それに対する抗議を見て「LGBT運動を『急激に』進めすぎたからバックラッシュが起こっているのだ、LGBTは目立つ抗議などせずもっと少しずつ権利を主張すべき」なんてことを言う人というのが必ずいます。でもこのSOSホモフォビアという団体が創設されたのなんて、1993年ですよ。同団体は、もともとはホモフォビックな暴力に対する匿名の電話相談として始まり、そこからホモフォビア・レズボフォビア・バイフォビア・トランスフォビアの予防と撲滅のために働く組織へと発展して、法案の起草などでもずっと活動してきています。そうやって四半世紀も頑張ってきてもまだゲイは道端でぶん殴られているのに、「もっと少しずつ」なんてやっていられるかっての。

もっと言うと、フランスで最初にホモフォビアに反対する雑誌『性逆転』が創刊されたのは1924年だし、さらにさかのぼると、ヨーロッパで同性愛者の運動*1が始まったのは19世紀のことです。ラドクリフ・ホールは1928年に『孤独の泉』を出してるし、南アフリカでも1988年にGLOW( Gay and Lesbians of the Witwatersrand)が結成されてる。アルゼンチンには1971年に同性愛解放戦線ができてる。そして、世界中でこうやって何十年も頑張り続けても、LGBTピープルへの暴力や虐待や差別はまだまだ続いています。。ここで「もっと少しずつ」なんて悠長なことを言ってたら、その間にもまた人が死ぬのよ。

もうひとつ言っておくと、LGBTライツ・ムーブメントが「急激じゃないから」という理由で差別解消がより順調に進んだ例なんて、ないから。米国には以前、比較的穏健なホモファイル運動というのがあったけど、それで警察がゲイバーへの「ガサ入れ」をやめたり減らしたりするなんてことは全然なく、ゲイもレズビアンもトランスの人たちもボッコボコに殴られて逮捕されてましたから。それで起こったのがストーンウォールの反乱(1969年)なんですから。

そんなわけで、こういう歴史的経緯をひとつも知らない人が思いつきで持ち出す「ぼくのかんがえたLGBT権利運動の名戦略」は、十中八九ただのストレートスプレイニング(マンスプレイニングの異性愛者版)であり、取り合う意味がないと思います。誰がどんな意見を言うのももちろん自由ではありますが、いちレズビアンの自分としては、レベッカ・ソルニットが『説教したがる男たち』(左右社)で書いていたこちらのフレーズをただただ連想するばかりです。

「こちらがよく知っていて、むこうが何ひとつ知らないことについて説教されても、まともな会話にならない」

*1:当時はトランスジェンダーというカテゴリーは構築されておらず、ホモフォビアとトランスフォビアは混同されていました。