石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

小説

『ケッヘル(上・下)』(中山可穂、文藝春秋)感想

主人公女性・木村伽椰の壮絶な恋愛と、謎めいたピアニスト・遠松鍵人の人生が交錯する中、ある残虐な復讐劇が浮かび上がってくるという、読みごたえばっちりの長篇。サスペンスフルな筋立ても、当を得た同性愛描写もともによかったです。

『マラケシュ心中』(中山可穂、講談社)感想

女流歌人とその恩師の妻との、複雑に絡み合う運命を追う恋愛小説。「心中」というテーマを抱えた、残酷で官能的なお話です。華やかな設定の下に重厚な物語が隠れているという、いつもの作風も健在。隙無く組み立てられた結末には、ただため息が出るばかり。

『白い薔薇の淵まで』(中山可穂、集英社)感想

エキセントリックな女性小説家と平凡なOLのずぶずぶな修羅場を、一風変わった切り口で描いた傑作。女同士の関係のリアルな生々しさと、猫というモチーフあるいはメタファーを巧みに生かした構成がすばらしく、圧倒されました。おもしろかった!

『ジゴロ』(中山可穂、集英社)感想

ストリートミュージシャンにして女たらしのレズビアン、カイをめぐる連作短編集。ヘテロやトランスジェンダーのキャラも登場します。キャラそれぞれの淋しさを描き出す一方で、闇の中にあるほのかな光も忘れない、いやむしろその光こそを核とする1冊です。

『サグラダ・ファミリア[聖家族]』(中山可穂、新潮社)感想

レズビアンの孤独なピアニスト響子が、最愛の元恋人の死を経てつかみとったものを描く物語。「ものすごくベタなタイトルと、それに見合ったものすごくベタなオチ」という取り合わせなのに震えるほど感動せずにはいられないという、魔法のような作品です。

『狂気の愛』(サンドラ・スコペトーネ、安藤由紀子訳、扶桑社)感想

NYを舞台に活躍するレズビアン探偵、ローレン・ローラノシリーズの第1作。本国で出版されたのは1991年で、メインストリームに登場したおそらく初のレズビアンPIシリーズです。同性愛者の日常を時にシニカルに、時にコミカルに描き出す手腕がみごと。

『犬たち』(レベッカ・ブラウン[著]/柴田元幸[訳]、マガジンハウス)感想

ある日突然アパートメントに出現した犬(たち)に支配されていく女の物語。夜見た悪夢を朝になっても忘れずに逐一書き留めたらこうもなろうか、というぐらい幻想的かつ残酷なお話です。ちなみに、主人公はあたりまえのようにレズビアン。

『若かった日々』(レベッカ・ブラウン[著]/柴田元幸[訳]、マガジンハウス)

米国のレズビアン作家レベッカ・ブラウンによる自伝的短篇集。思春期のレズビアンとしての目覚めを描く2作品、「ナンシー・ブース、あなたがどこにいるにせよ」と「Vision」がふるえるほどよかった。切なくて、正確で、イマジネーション豊かで。

『さくらんぼの性は』(ジャネット・ウィンターソン[著]/岸本佐知子[訳]、白水社)感想

おもにピューリタン革命時代のロンドンを舞台に描かれる、奇想天外なほら話。史実も寓話も等しく噛み砕き、飲みこみ、再構成していく手腕がみごと。アホな異性愛主義に対する皮肉な視線や、ただの同性愛礼賛におわらないレズビアニズム描写も楽しかったです。

『オレンジだけが果物じゃない』(ジャネット・ウィンターソン[著]/岸本佐知子[訳]、白水社)感想

レズビアンの作家ジャネット・ウィンターソンによる、キュートでほろ苦い半自伝的小説。抑圧的な環境で生き抜く武器として鍛え抜かれたイマジネーションと、独特のユーモアが楽しいです。レズビアン少女の性の目覚めを描く思春期小説としてもおすすめ。

『灯台守の話』(ジャネット・ウィンターソン[著]/岸本佐知子[訳]、白水社)感想

鮮烈にして幻想的な現代寓話。レズビアニズムも出てきますが、「さあここから女同士のエピソードでござい!」と鳴り物入りで始まったりしないところがさすがはジャネット・ウィンターソン。性描写もよかったです。美しくて、真摯で。

『蒼穹のカルマ(7)』(橘公司、富士見書房)感想

姪の在紗を溺愛する元騎士・高崎駆真(♀)の活躍を百合百合しく描く暴走ファンタジー、第7巻。破天荒でパワフルで、すばらしく面白かったです。弄られキャラ・鳶一槙奈がとことんかわいそうでかわいい上に、百合部分もばっちり。伏線もきっちり。

『蒼穹のカルマ(6)』(橘公司、富士見書房)感想

姪の在紗を溺愛する元騎士・鷹崎駆真(♀)の物語、第6巻。今回はタイムトラベル&パラレルワールドもの。いつも通りの軽妙なタッチや百合百合しさは楽しかったのですが、全体的にいささか小粒な印象が否めないところが残念でした。

小説『ヤングガン・カルナバル グッドバイ、ヤングガン』(深見真、徳間書店)感想

若き殺し屋(ヤングガン)が暴れ回る痛快アクション小説、ついに最終巻。丁寧な伏線回収、それでいて破天荒なバトル、計算されつくした結末と、大満足の1冊でした。レズビアン小説としても、バイオレントなのにロマンティックな青春小説としてもおすすめ。

『君が僕を(4)〜将来なにになりたい?』(中里十、小学館)感想

君が僕を 4 (ガガガ文庫)作者: 中里十,山田あこ出版社/メーカー: 小学館発売日: 2010/08/18メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 72回この商品を含むブログ (11件) を見るえらく難解な最終巻商売繁盛の神様“恵まれさん”をつとめる女子中学生「真名」と、真名に…

『花伽藍』(中山可穂、角川書店)感想

花伽藍 (角川文庫)作者: 中山可穂出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2010/05/25メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 10回この商品を含むブログ (3件) を見る極上のレズビアン小説集なんて贅沢な短編集だ、と思いました。圧倒され…

『ストライクウィッチーズ 乙女ノ巻(4)』(南房秀久、角川書店)感想

ストライクウィッチーズ 乙女ノ巻4 (角川スニーカー文庫)作者: 南房 秀久,島田フミカネ,上田梯子出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2010/06/30メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (9件) を見る擬音語連発のキャ…

『蒼穹のカルマ(5)』(橘公司、富士見書房)感想

蒼穹のカルマ5 (富士見ファンタジア文庫)作者: 橘 公司,森沢晴行出版社/メーカー: 富士見書房発売日: 2010/06/19メディア: 文庫 クリック: 48回この商品を含むブログ (23件) を見る緻密で熱い、節目の巻姪の「在紗」を百合百合しく溺愛する主人公「鷹崎駆真…

『オールド・フレンズ(上・下)』(浅倉卓弥、宝島社)感想

オールド・フレンズ (上)作者: 浅倉卓弥出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2009/07/10メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見るオールド・フレンズ (下)作者: 浅倉卓弥出版社/メーカー: 宝島社発売日: 2009/07/10メデ…

小説『疾走する思春期のパラベラム(6) みんな大好きな戦争』(深見真、エンターブレイン)感想

疾走する思春期のパラベラム みんな大好きな戦争 (ファミ通文庫)作者: 深見真,うなじ出版社/メーカー: エンターブレイン発売日: 2010/04/30メディア: 文庫 クリック: 54回この商品を含むブログ (10件) を見る容赦なく人は殺され、物語は大詰めに学園異能ガン…

『クシエルの使徒(1〜3)』(ジャクリーン・ケアリー[著]/和爾桃子[訳]、早川書房)感想

クシエルの使徒〈1〉深紅の衣 (ハヤカワ文庫FT)作者: ジャクリーンケアリー,Jacqueline Carey,和爾桃子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009/12/19メディア: 文庫 クリック: 5回この商品を含むブログ (13件) を見るクシエルの使徒〈2〉白鳥の女王 (ハヤカ…

『君が僕を(3)〜こんなもの誰が買うの?』(中里十、小学館)感想

君が僕を 3 (ガガガ文庫)作者: 中里十,山田あこ出版社/メーカー: 小学館発売日: 2010/03/18メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 17回この商品を含むブログ (5件) を見る微妙に中途半端な印象。商売繁盛の神様「恵まれさん」をしている女子中学生・絵藤真名と…

『地球移動作戦』(山本弘、早川書房)感想

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『クシエルの矢(1〜3)』(ジャクリーン・ケアリー[著]/和爾桃子[訳]、早川書房)感想

クシエルの矢〈1〉八天使の王国 (ハヤカワ文庫FT)作者: ジャクリーンケアリー,Jacqueline Carey,和爾桃子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009/06/25メディア: 新書購入: 1人 クリック: 16回この商品を含むブログ (26件) を見るクシエルの矢〈2〉蜘蛛たち…

『蒼穹のカルマ(4)』(橘公司、富士見書房)感想

蒼穹のカルマ4 (富士見ファンタジア文庫)作者: 橘公司,森沢晴行出版社/メーカー: 富士見書房発売日: 2010/02/20メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 41回この商品を含むブログ (20件) を見る相変わらず破天荒なおもしろさ。百合方面も濃厚です姪の在紗を百合…

『サイゴン・タンゴ・カフェ』(中山可穂、角川書店)感想

サイゴン・タンゴ・カフェ (角川文庫)作者: 中山可穂出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2010/01/23メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 8回この商品を含むブログ (12件) を見る表題作が圧巻ですすべての物語にアルゼンチンタンゴ…

『君が僕を2〜私のどこが好き?』(中里十、小学館)感想

君が僕を 2 (ガガガ文庫)作者: 中里十,山田あこ出版社/メーカー: 小学館発売日: 2009/11/18メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 36回この商品を含むブログ (12件) を見る極上の百合物語。ラスト数ページが圧巻。いやー、まいった。面白いわこれ。「商売繁盛の…

『あかね色シンフォニア』(瑞智士記、一迅社)感想

あかね色シンフォニア (一迅社文庫 み 3-3)作者: 瑞智士記,きみしま青出版社/メーカー: 一迅社発売日: 2009/10/20メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 28回この商品を含むブログ (18件) を見る小説というより「ヲタ向けDTM入門書」。百合部分もかなりあざとい…

『紫色のクオリア』(うえお久光、アスキー・メディアワークス)感想

紫色のクオリア (電撃文庫)作者: うえお久光,綱島志朗出版社/メーカー: アスキーメディアワークス発売日: 2009/07/10メディア: 文庫購入: 101人 クリック: 2,229回この商品を含むブログ (308件) を見るするする読める本格SF百合「人間がロボットに見える」と…

『蒼穹のカルマ(3)』(橘公司、富士見書房)感想

蒼穹のカルマ3 (富士見ファンタジア文庫)作者: 橘公司,森沢晴行出版社/メーカー: 富士見書房発売日: 2009/10/20メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 48回この商品を含むブログ (26件) を見る目配りの行き届いた学園ラブコメパロディシスコンならぬ姪コンのク…