石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

PCゲーム『僕と、僕らの夏』(light)レビュー

僕と、僕らの夏 完全版僕と、僕らの夏 完全版

light 2003-08-08
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なめとんのか?

今回やってみたのは名作の呼び名が高かった『僕と、僕らの夏』。

もうすぐダムの底に沈んでしまう村に3年ぶりに帰ってきた主人公・恭生(たかお)。幼馴染の貴理(きり)と小さいころに埋めたはずの宝物を探しながら、友人の英輝(ひでき)、後輩の有夏(ありか)、先輩の冬子(とうこ)たちと過ごす最後の夏休み

ってストーリーで、分岐のひとつにレヅ話があるらしいということでインストール。そして、プレイすることしばし。

…………なめとんのか、このゲームは?

AVGだというのに、主人公と貴理がくっつくルートだけがトゥルーエンドだと言わんばかりの一本道ストーリー展開。レズキャラ有夏と貴理が恋仲になっても、しつこく貴理を恭生とくっつけようとするクソシナリオ。なんと有夏貴理ラブラブエンドに有夏が登場せず、貴理と恭生の別れをお涙頂戴で描くという念の入れようです。レズゲーとしては全然ダメだと思う、これ。

魅力のないキャラたち

キャラクターはどうかというと、冬子と英輝をのぞいて全員バカ。 主人公・恭生はエロゲにありがちな優柔不断取り得ナッシング男のくせにレイプ未遂までやらかすという駄目っぷり。すべての言動にもてないダサ男のかほりがします。こいつが脈絡なく口にする「好きだ」というセリフは、「やりたい」と同義だと思って間違いありません。たぶん、交尾期の昆虫と同じぐらいの知能しかないんじゃないでしょうか。

そしてヒロイン貴理ちゃん。目を細めて虚空を見つめているグラフィックが不気味だと思うのはあたしだけですかそうですか。この子の台詞は不必要な繰り返しが多すぎて電波チックです。特に「わたし、恭生を受け入れられなかった」「冬子先輩と、キス」なんてのは嫌がらせかと思うほどリピートされていて、語彙も知性も貧弱そうなイメージを醸し出しています。このキャラで押さえておくべきなのは「わたしとパンツ、どっちが好き?」のシーンだけだな。

貴理に想いを寄せる少女有夏はどうかと言うと、ノンケの貴理先輩を情熱的なアオカンで落としておきながら、後日突然「やっぱり先輩を恭生さんに返します」 などとグズグズ言い出したりと、言動に整合性がありません。そのくせ貴理と学校やバスの中で必要以上にイチャイチャしてたりするので、この娘が同性同士の関係をいいことだと思ってるのか悪いことだと思ってるのかまったくわかりません。しょせんは当て馬か。

レヅえっちシーンが変

ちなみに有夏と貴理のレズえっちシーンは一応2回あります。しかしそのどちらもなんか妙。

1度目は夏祭りの夜、川原で有夏が貴理を押し倒すのですが、有夏の 「鋭角的なキス」なるものでノンケのはずの貴理がメロメロになります。どんなキスですか、それ。唇を90度以下にとがらせてするんですか?

で、2度目は貴理の自室でするんですけど、

貴理「初めてだから、やさしくしてね」

……戦前のエロ小説みたいでギャグとしか思えません。女同士で言うか? こんなこと。

それを受けて有夏が、

有夏「今日は指一本だけにしておきますね」

って言い放つのもなんだかなあ。行為前に指の本数を自己申告するレヅってどうよ? 何本入るか試してる倦怠期のカップルじゃあるまいし。

ノンケえっちシーンも変

実はこのゲーム、ノンケえっちシーンも変です。

たとえば有夏は、恭生とくっつくシナリオで「乱暴に口に出し入れ」されながら「んぅ、可愛い……ん」 なんて余裕で呟いてるけど、処女という設定でそれはありえねーよ。慣れてないんだから反射で「げー」ってなるっつーの。

そもそも人間には嚥下反射というものがあるんだから、初フェラで乱暴に喉に突っ込まれて吐き気を催さないなんて、ちんこがよっぽど小さい場合か、老化で嚥下障害を起こしてるおばあさんがくわえてる場合だけでしょう。ということは恭生のモノが戦闘時3cmだったとか、有夏が実は82歳だったとか、そういうオチなんでしょうか。嫌すぎ。

貧弱な文章

だいたい、シナリオライターの文章力が中学生レベルなのがいかん。

例1
「その奥は、すでに液体でしっとり濡れている」(ツッコミ:固体や気体で濡れるわけはないです)
例2
「闇夜に覆われ、校庭も校舎も暗かった」(ツッコミ:闇夜は暗くてあたりまえだ)
例3
「頚動脈にそって唇を降下させる」(ツッコミ:苦しいと思うんですが)

こんな文章で書かれたんじゃ、そりゃ、変なシーン続出になるわけだよな。

まとめ

レズゲーとしては最低。エロゲとしても、萌えられるのはせいぜい童貞高校生男子まで。テキストを98%ぐらい書き直してようやく、大人が金払って買うレベルになるでしょう。

ちなみにあたしがプレイしたCD-ROM版は操作性が非常に悪い(選択肢でセーブできない、オープニングムービーがスキップできない、テキストの既読未読判別機能がない)ばかりか、時々画面と音声が合っていない(テキストが『ダ……メ……もう……ハァン!』なのに音声では受験について淡々と語っていたりする)という致命的な欠点があります。やってみたいという酔狂な方はDVD-ROMの「完全版」を買った方がいいかも。

補足(裏ルートについて)

裏ルートの冬子さんの話はかなり良くできているし、英樹というキャラクターも良いのですが、百合話ではないのでここでは評価の対象外とします。