石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

小説「泥ぞつもりて」(宮木あや子、『別冊文藝春秋』2007年9月号掲載)感想

別冊 文藝春秋 2007年 09月号 [雑誌]

別冊 文藝春秋 2007年 09月号 [雑誌]

『花宵道中』で鮮烈なデビューを果たした宮木あや子さんの最新作。「泥ぞつもりて」と書いて「こひぞつもりて」と読みます。百合要素ありです。

花宵が江戸の遊郭のお話であったのに対し、今回は平安朝を舞台にしたBLとサドとマザコン(つか乳母コン)と百合のアソートというすごいことになっています。それがまた、相変わらずの色彩豊かな描写でみっしりと書き込まれているのがたまりません。「普段駄菓子しか食ってない貧乏な家の子が、豪華焼き菓子詰め合わせ缶の蓋をパカッと開けて『どれがいい?』と聞かれてオロオロする」みたいな気分になりました。もう上二段活用とかナ行変格活用とか暗記してる場合じゃありません。すげーぜ平安朝。

百合に関しては分量少な目なんですが、その印象はとにかく鮮やかです。

「……そなたのことが好きじゃった、○○」

ネタバレ防止のために名前部分は伏せておきますが、このシーンのインパクトにやられました。どこで百合カポーが出てくるのかしらと思っていたら、ここですか! 渋いなー。そんで、色っぽいなー。

お話の柱であるBL要素も、「別冊文藝春秋って、こういうのもアリなのか」と唸ってしまうほどにBLBLしていて面白かったです。エロいし、切ないしね。この「泥ぞつもりて」は王朝3部作の第1部なんだそうですが、2部・3部でお話がどっちの方に転がっていくのか、とても楽しみです。このぶんならBLでもサディズムでも百合でも、またはぜんぜん違った方面でもいけそうだー。つか、早く単行本にならないものでしょうかね、これ?