ご主人様に甘いりんごのお菓子 (バーズコミックスデラックス)
- 作者: 藤田貴美
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2002/04
- メディア: コミック
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ご主人様に甘いりんごのお菓子 2 (2) (バーズコミックスデラックス)
- 作者: 藤田貴美
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2007/08/24
- メディア: コミック
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切なさと明るさのある百合話
読み切り短編集。1巻の「温室舞踏会」、2巻の「お花畑ルララ」の2編が女のコ同士のお話。どちらも藤田貴美さんらしい切なさと明るさのあるストーリーで、とてもよかったです。
「温室舞踏会」について
女子校社交ダンス部の、卒業式の日の一コマを描く物語。成就する恋もしない恋も、どちらも淡いはかなさとやさしさに包まれているところがいいですね。どれも今、この場でしか成り立たない一瞬の魔法みたいな心のやりとりなんだということが、台詞ではなく独特の間によってひしひしと伝わってくる良いお話でした。
特に印象深かったのは、後輩から口紅をプレゼントされた葛山先輩のこの台詞。
あとは読んでのお楽しみということで。「めちゃめちゃ塗ってめちゃめちゃキスしてめちゃめちゃ減らすわ」
「お花畑ルララ」について
こちらは一転、明るくパワフルな女子校生レズビアン「船木」のお話。船木に惚れている幼なじみの男「岡部」とのやりとりがおもしろくて、腹抱えて笑いました。以下、船木のレズビアニズムを幼さのせいにしたがる岡部の前で、船木がわざと他の女子の尻を触ってみせた後のやりとり。
岡部(絶句した後、立ち直って)「い 今はだなーこう シシュンキのなんつーかあやういー!」つまり船木は『ヤングガン・カルナバル』の鉄美弓華と同じぐらい、自分がレズビアンであることをきっぱりと受け入れてるキャラなんですね。そこがまず痛快。部活の最中に後輩に向かって「うるさい ぐだぐだ言うとおっぱい揉むよ!」とか平気で言い放っちゃうあたりも痛快で、大好き。
船木「あーもー うるせーうるせー いいんだよ私は何処見渡しても女・女で笑いが止まらない女子校生活送ってんだから!」
あと、こんなところも面白かったです。
要するに岡部には「レズビアンは男っぽいに違いない」という偏見があって、「髪が長くておしゃれもしている船木はレズビアンではないから、いつか自分のことを好きになる(かも)」と考えているわけです。だが少年よ、それは間違いだ。実際、船木が髪を伸ばしてるのも、おしゃれするのも、全部好きな女のコ「原田」のため(と船木はちゃんと岡部に説明してるんだけど聞いてない)だ。わはははは。岡部(水着売り場で船木にからかわれた後で)「なんだよなーっ! 大体今のにそんな返しすんの そーゆ感覚 全然女じゃん!」
船木「私 女じゃん 何が言いたいの」
岡部「いやだからっ 見た目も結構女らしいし 髪も長くしてるしさー(引用者中略)………そんでそーゆー女のおしゃれとかちゃんとするじゃん? (引用者中略)だから お前は違うんじゃねーのって」
けれど、船木の側にも岡部のバカさを笑えない部分はあります。それは、ノンケに恋してること。ええ、ノンケなんですよ原田さんは。でもここで「ノンケに惚れるなんて、あーもう何やってんのよー!」とあたしが叫んでしまうのはやっぱり大人になってしまったからで、実際このお年頃に自分が何やってたかと考えると、もう穴掘って自主的に埋まりたくなってしまいます。くーっ。というわけで、この作品を一文で形容するならば、「メインキャラ2人が実らぬ恋を抱えてすったもんだする、若さとバカさといとしさとせつなさの怒濤のマーブル模様」ですね。オチもいいなあ、幸せになってほしいなふたりとも。
まとめ
「温室舞踏会」はしっとり系、「お花畑ルララ」はパワフル系という違いはあるものの、どちらもとても良い♀♀話でした。個人的には後者がとても好き。船木がんばれ。