- 出版社/メーカー: インターフィルム
- 発売日: 2007/12/21
- メディア: DVD
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実話に基づく爆笑ロマンティック・コメディ
面白かった! これはロビン・グリーンスパンとレイシー・ハーモンという実在のレズビアン・カップルの慣れそめをトークと再現フィルム形式で構成した映画なのですが、ドキュメンタリーにありがちな無意味な暗さや重たさはなく、爆笑もののロマンティック・コメディとして楽しむことができます。「再現フィルム」部分では、「こんなに激しいのにこんなにコミカルなベッドシーン見たことない」と笑い転げてしまいましたし、「レズビアン=ひたすらエロい存在」みたいなステレオタイプをぶっ壊してくれていることにも拍手。また、それでいて官能や切なさの要素もきちんと入れられていることに、さらに拍手。
こんなに激しいのにこんなにコミカル
たとえば、ロビンが元カノのオードリーとの口論の後で仲直りのセックスをするシーン。あるいは、ロビンとレイシーの距離が近づいて、「別れの抱擁が段々段々エスカレート」していくシーン。どっちも当人たちは超真剣で、欲望にみなぎりまくっているのに、抱腹絶倒のおかしさなんですよね。もともとスタンダップ・コメディアンであるロビンのナレーションの語り口の巧みさと、欲望は必死さは一歩引いて見ると喜劇だということをよく心得た演出が、うまく働いていると思います。
ステレオタイプをぶっ壊せ
レイシーが元カノとのセックスレスに悩む(ガールフレンドの方はセックスしたがるのに、レイシーはその気になれずに悩んでいるんです)というくだりがおかしくておかしくて。家に帰ると彼女が全裸で待っていて、「ごめん 今夜は疲れてるの」と苦渋の思いで断るとか、カップルでロマンティックな小旅行に出かける道すがら、彼女からの無言の「今夜は大丈夫よね。できるわよね?」というプレッシャーに脅えるとかいう場面なんて最高でした。
映画だの小説だの漫画だので描かれるレズビアンは、ひたすら性的な存在にされてしまうことが多いと思います。レズビアンだけでなくバイセクシュアルのキャラもそうですが、とにかく女性が好きな女性と言えば「性欲過多で、女と見ればすぐ興奮して誘惑したがるセックスモンスター」みたいに描かれてしまう。そうした性格づけは、「女同士のきわどいシーンをたくさん見たい」というヘテロ観客の欲望を満たすための方便なのかもしれませんが、そんなもんばっかりを見せつけられていると、当事者としてはやっぱりうんざりしてしまうんですよ。この『彼女が彼女を愛するとき』は、そうしたステレオタイプとはえらく違うレズビアン像を描いてくれていて、見ていてとても楽しかったです。
官能も切なさもちゃんとある
たとえば、ロビンとレイシーが舞台の仕事のために上半身裸で抱き合うシーンや、ソファーの上で仲良くしているシーン、そしてエンディングなどでは、ふたりの興奮や初々しい恋の感情が、ちゃんと伝わってきます。あと、ロビンが母親にカミングアウトしたりするシーンなんかも、切なくてとてもよかった。これらのシークエンスがどれもベタな抒情性やシリアスさにどっぷり浸かることなく、映画全体に流れる軽妙な雰囲気をしっかり保っているところもまた心憎いです。
まとめ
「興味本位のヘテロが妄想するところのレズビアン像」を軽やかに逸脱した、楽しいロマンティックコメディです。いかにも現実にありそうなラブストーリーなのに、最後まで軽妙さを保っているところが素晴らしい。これはおすすめ!
蛇足
こんなにコミカルなステキ映画だというのに、日本語版DVDのジャケット裏の煽り文句ときたら超ひどいんですよ。
現代女性に広がる女性同士の恋愛関係!
とか。そんな話じゃねえだろ。だいたい「現代女性に広がる」って、同性愛は疫病かなんかか?
“赤裸々”かつ“大胆”な”究極の女性告白映画”ここに登場!!
これもひどいですね。5秒に1回はジョークが出てくる(ロビンだけでなくレイシーもスタンダップ・コメディアンですからね)抱腹絶倒のコメディを無理やりエロ映画路線で売ろうという策略が見え見え。それを言うなら『彼女が彼女を愛する時』という邦題もろくでもないんですけどね(原題はシンプルに"Girl Play"といいます)。『ウーマンラブウーマン』なんかもそうですが、いくらステレオタイプを廃した傑作を作っても、売る側は相変わらず旧態依然とした「レズビアン=エロい」というパタンだけを好んで繰り返しているという構造が、ここにも見えます。どうしたらいいんでしょうかね、こういうの?