石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『暁色の潜伏魔女(3)』(袴田めら、双葉社)感想

暁色の潜伏魔女 (3) (アクションコミックス)

暁色の潜伏魔女 (3) (アクションコミックス)

あっさり目の最終巻

孤島の魔法学園を舞台とする学園コメディ、最終巻。「潜伏魔女」というタイトルや「魔法使いは全員学園に隔離」というこの世界のルールは何かの伏線だろうとずっと思っていたのですが、全然そんなことはなかったようで、なんだかあっさりした終わり方でした。1〜2巻に比べると恋愛色(男女も女女も)も薄く、単発のほのぼのコメディをアソートしてある感じ。

3巻の構成

冒頭の2話は2巻から続くミモザのお話。その後は、単発で「夜と暁のほのぼの姉妹百合」「暁の母親・川嶋朝子の話」「校内マラソン大会の話」などが続きます。そして最後に時子を主役とする連続2話が入って完結。

どれもほんわか&ドタバタ系のストーリーで恋愛色は薄く、当然、最後までカップルはひと組も成立しません。それはそれでいいんだけど、結局お話全体を貫くような大きなストーリーがなかったことにはちょっと拍子抜けしてしまいました。冒頭にも書きましたが、「潜伏魔女」という言葉と、「魔法使いは全員学園に隔離」というこの世界のルールが何かの伏線になってるんじゃないかとずっと思ってたんですよ。で、もしかしたらそれが暁の両親が離婚した原因(何か大きな事件とか)にかかわるんじゃないか、と考えていたんですが、これは深読みのしすぎだったみたい。

改めて1巻から通読してみると、1巻にだけは「暁の姉探し」という大きなテーマがあるものの、2巻以降は「ドタバタ喜劇の中に時折恋のベクトルが錯綜する」というスタイルになっていて、特に大きな流れというのはないんですよね。それを読み取り切れなかった自分がアホだったようです。

同性愛要素について

第17話「あまのじゃく魔女」で、「行動で愛を示す」姉妹のいちゃいちゃぶり(p76)はキュートだし、珍しく淡々と時子への愛を語る智の姿(p148)も楽しかったです。が、全体的には恋愛よりもむしろ友情や家族愛寄りの1冊であって、それほど百合百合してません。濃い目の百合が目当ての方は、この3巻よりもむしろ2巻のおまけ漫画「暁色の潜伏魔女【特別編】」あたりを読むべきかと。

まとめ

友情と家族愛主体の、意外にあっさりした最終巻でした。1巻から全部を振り返ってみると、「ほんわかドタバタギャグ漫画、ただし時々女のコを好きな女のコも出てくるよ」といった感じの作品と言えるかと。気軽に読めるコメディをお探しの方におすすめ。