- 作者: 和智正喜,シバユウスケ
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2007/11
- メディア: 文庫
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (13件) を見る
恋模様にウエイトが置かれる最終巻
アンテナを刺すとその人を自由自在に操れる装置「S&M」をめぐる騒動、第2巻。なんと恋敵まで登場して、女のコ同士の恋模様にさらにしっかりとウエイトが置かれた話になっています。ちなみに前作のレビューでは、唯一の不満点として「もう少しお話にサスペンスが欲しい」と書きましたが、今回はそこもしっかり改善され、ちょっぴり怖いシークエンスがあたかもスイカの塩のように物語全体を引き立てています。さらに、なんと言ってもオチが最高! 恋愛というもののひとつの理想形だと思いますねあれは。というわけで、すごく面白かったです。
2巻の百合展開について
1. 清香は相変わらず舞子ラブ
今回は2回ほど「お泊まり」の場面があるのですけど、その時の清香の舞い上がりっぷりはすごいですよ。とことんアホで舞子一途で妄想全開で、可愛いったらありゃしません。以下、引用。
……お泊まりお泊まりお泊まり……泊まるって舞子さんの部屋で? あ、でも舞子さんの家は広くておまけにひとり暮らしだから部屋は余ってるけど。いやいやいや優しい舞子さんのことだから、別々の部屋に寝るのも淋しいでしょうからどうぞ私の部屋で寝てください。いやだ、きゃっ。でも布団はさすがに別々だよなあ。いやいやいやいや待て待て待て。こういう作戦はどう? 舞子さん、それじゃあお休みなさぁぃ。あ、布団に花瓶の水をうっかりこぼしてしまった(ここちょっと棒読みで)。これじゃぁ寝られなぁい。困りましたね、清香さん。わかりました。少し狭いですけど、私の横に寝てください。むっはー。
むっはー、じゃねえ(笑)。
というわけで、清香の恋は今回もフルスロットルです。ちなみに舞子の方も清香を好いていることは、清香以外のほぼ全ての人(読者含む)がわかってるのですけれども、毎回毎回絶妙のタイミングで邪魔が入るため、清香本人はなかなか気づけずにいます。そこがもどかしくもほほえましくて、とてもよかったです。
2. 恋のライバル登場
新キャラ「如月里璃子」は小学校時代から舞子を好いていたという恋のライバル。このキャラの登場によって清香と舞子の恋がより立体的になり、面白みが増したと思います。また、里璃子自身のまっすぐな「好き」の表明もよかったです。1巻もそうでしたけど、とにかくいろんな人の恋愛感情に変な小理屈をくっつけず、「ただ好きだから好き」という気持ちを描いてくれているところがすばらしい。
スイカの塩が効いている
物語後半にちょっと凄味のあるシーンがあり、アンテナを悪用されることの恐ろしさがはっきり出ていたと思います。コミカルな部分とのコントラストで、お話全体の面白さがぐんとアップしていると感じました。
オチが最高
オチでようやく清香の恋に決着が訪れます。これは必見。まるでお祭りのような「ハレ」としての恋愛成就を描くハッピーエンディングはざらにありますが、これはそういうのとはまた違った、ある意味もっともっとラブい切り口で恋の完成を描いているんですよ。特に最終ページの最終行が良くて良くて、唸らされました。
まとめ
愛もいいしオチもいいしそこまでの盛り上げ方もいいという、楽しい最終巻でした。おすすめ。