- 作者: 七島佳那
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/11/29
- メディア: コミック
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爽やかな学園微(?)百合
いやー、これはいいわ。男女の三角関係話と思わせておいてクライマックスでまさかの百合告白シークエンスが訪れるという少女漫画なのですが、その告白にさまざまな解釈の余地があるところがとても面白かったです。どの解釈を選んでも友情百合からガチ百合までの甘酸っぱく美しい物語が成り立つところがとにかく最高。また、巻末に添えられているアフターストーリー「KICK! 番外編――いつか思い出になる日まで――」の愛と切なさも素敵でした。結局、告白する側のキャラクタ「三枝アゲハ」のかっこよさと深みが、この漫画の最大の魅力なんだなあと思います。
アゲハの告白をどう解釈するか?
アゲハは凛として強く、人との距離をとろうとするクールなキャラクタ。主人公の「南奏姫」(みなみ かなき)と、クラスの男子「辻村」をめぐる三角関係を構成しているものの、アゲハ本人が辻村が好きだと発言することはありません。そんな彼女がクライマックスで南に告げる台詞(p108)が、これ。
で、その後にいたずらっ子のように付け加える台詞(p108)が、これ。負けたよあなたのタフさに 私も…素直になってみるかな
私さ 南のことが好きだったんだよ
この場面のアゲハの爽やかな笑顔といったら、それだけでごはんが三杯いけそうなほどかっこいいのですが、それはそれとして、彼女のこの発言は読む人によってすごく解釈が分かれると思うんですよ。友情ゆえの嘘(辻村が好きなのに身をひいた)なのか、それともガチ恋愛として南が好きだったのか? 後者だとしたら、「辻村も南も好き」なのか、「南だけが好き」なのか? 何回か読み返してみましたが、どの解釈も成立し得るんですよね、これ。そういった深みを持つ話運びが非常に面白いし、どの解釈でも切なく甘酸っぱい百合話が完成するところがたまりません。なんか、少女漫画の底力を見た思い。……って言ったらどうする?
ちなみにアゲハはこれまで南のことを「南さん」とさんづけで呼んでいたのが、この場面だけ「南」と呼び捨てにしてるんですよ。わけあって人を拒絶していた彼女が、南にだけはこうしていきなり距離を縮めて「好きだった」と宣言するあたり、もう友情だとか恋愛だとか分類してるのがアホらしくなるほどの「好き」が詰まっているんじゃないかと思います。その濃厚な「好き」感情は、後日談の4ページ短編「いつか思い出になる日まで」にも如実です。鈍感な主人公は「からかわれた」とばかり思っているようですが、実はアゲハのあの告白には何パーセントかのガチ恋愛要素がしっかり入っていたんじゃないかな、とあたしは勝手に思っています。
まとめ
アゲハの告白が最高に光っている学園微(?)百合ストーリー。一面的にイチャイチャするだけの萌え百合漫画なんかよりよっぽど深い愛があります。少女漫画系の切なく爽やかな百合をお探しの方に、めっちゃくちゃおすすめ。