- 作者: コミック百合姫編集部
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2008/08/14
- メディア: 単行本
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一迅社による、百合作品紹介本
「コミック百合姫」を出している一迅社から出版された、百合作品の紹介本です。とりあげられている作品数は多くはなく、企画記事も予告の段階より減らされています。とは言え、自社の出版物ばかり大きく取り上げたりしないという公平な編集方針は好感度大です。
内容一覧
目次をもとに『百合作品ファイル』の内容を箇条書きにしてみると、以下のようになります。
- COMIC REVIEW
- 計68本の百合コミックの紹介。
- History of GL Magazines
- 1990年代以降の、商業誌の百合雑誌の系譜を紹介。
- NOVEL REVIEW
- 計33本の百合小説の紹介。
- Interview with GL writers
- 一迅社文庫アイリスの『ワイルドブーケ 花の咲かないこの世界で』の駒尾真子、同『.(period)』の瑠璃歩月のインタビュー記事。
- Welcome to the GL Theater
- 計15本の実写百合映画の紹介。
- ANIMATION REVIEW
- 計16本の百合アニメの紹介。
- Analysis of GL readers
- 「コミック百合姫S」におけるアンケート「2007年で一番面白かった百合コミックは?」&「コミック百合姫」におけるアンケート「2006年で一番面白かった百合作品は?」の集計結果。両誌読者の男女比などもあり。
レビューは字数たくさん、でも作品数は少なめ
上記を見てわかる通り、紹介されている作品数は決して多いとは言えません。コミック・小説・アニメの紹介記事は1本1本の字数がかなり多く(約1000字)、とても力が入っているのですが、正直、「紹介記事の字数を減らして、その分もっとたくさんの作品を扱って欲しかった」と思わんでもありません。「レビュー」と称してはいても実際にはあらすじと褒め言葉しか存在しない内容なので、もっとコンパクトにできたんじゃないかと思うんですよ。
実際、映画のコーナーだけは各200字程度で紹介されているのですが、それでも全然支障はないし、むしろ短い分だけサクサク読めて他の作品との比較もしやすい印象を受けました。この本を本当に「これから百合に触れる人の一助となるガイト」(裏表紙より)という位置づけにするのなら、他のジャンルもこれぐらいか、せいぜい400字程度の短い紹介文にして速読性・一覧性を高めた方がよかったのでは。
レビュー以外の企画記事は縮小された模様
『百合ミシュラン』だった時代から値段が1500円→980円と縮小されているのに伴い、企画記事はかなり縮小された模様。ためしにAmazonの、『百合ミシュラン』時代から変わっていない「商品説明」から引用してみましょうか。
実際の『百合作品ファイル』は、こうです。★百合の歴史を辿る百合ヒストリー
百合の語源から最前線まで百合の歴史を年表とともに振り返ります。
★百合作家インタビュー&対談
あの作品を生み出したあの人はどういう考えで創作しているの? その疑問に答えてもらいます。
★百合エッセイ&イラストコラム
マンガ家、小説家、イラストレーター…職を問わず百合好きの方々に思う存分語って頂きます。
- 「百合の語源」に関する話題はなく、年表もなし。単に百合雑誌の歴史を語るのみ
- 「対談」はなし
- 「百合作家インタビュー」は、一迅社文庫アイリスの書き手さんのみというお手盛り企画(ちなみに表紙が『.(period)』というのもお手盛り感が漂ってますけど)
- 「百合エッセイ」「イラストコラム」は影も形もなし
ひょっとしたら、発売が遅れに遅れたのには、このへんの事情も関係してるんでしょうか? いや、所詮部外者にはよくわかんないことですけど。
でも、このへんの公平感はナイス
まず、作品の並べ方が五十音順で、しかも作品によって扱いの大小を変えたりしていないところが立派だと思います。決して一迅社の作品ばかりが目立つような構成にしたりしていないんですよ。また、「2006年で面白かった百合作品」「2007年で面白かった百合漫画」のアンケート結果で、
とわざわざ一迅社以外の作品だけで上位20作品を紹介してみせるあたりにも驚かされました。こうしたフェアな姿勢は、すごく好きです。※公正を期すため、弊社発行の作品は人気作品のランキングには入っておりません
まとめ
1本1本の紹介記事が長すぎるわりに、肝心の作品数がそう多くないところが残念。企画記事が縮小されまくっているところも残念。せめて企画物にもう少し力が入っていれば、コアな百合ファンの皆様も「読み物」として十分楽しめたんじゃないかと思うんですけれど。
ただし、これだけみっちりと各作品の紹介記事を書かれたライターさんの労苦はほんとうにすごいと思うし、全体の構成を自社製品の宣伝用に割り振らなかったのもすばらしい判断だと思います。個人的には、なんだかんだ言ってけっこう知らない作品が載ってたので、買ってよかったと思ってます。