石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『紅! 愛舐女学院』(黒河澪、松文館)感想

紅!愛舐女学院 (ダイナコミックス)

紅!愛舐女学院 (ダイナコミックス)

女女エロは登場すれど、「セックス下手なヘテロ男子」ふう

「愛舐(えなめる)女学院」(通称エナ女)なる全寮制女子校の生徒達の痴態を描くエロ漫画です。絵は綺麗だし、18禁指定されてないのが不思議なほどセックス描写は多いのですが、百合/レズビアンものとしては今ひとつ。理由は、

  1. 棒(女装男子のチンコだの、あるいは双頭ディルドだの)が重視されすぎ
  2. どの絡みも「乳と股間しか触らない」という超ワンパターンなもので、まるでセックス下手なヘテロ男子みたい。つか、ヘテロ女子で「女のコとしてみた〜い♪」とか抜かす人にもこういう下手くそって多いですけど
  3. 女性カプの間に愛がない。レズビアン・セックスは、ほとんど全て『なりゆき』とか『相手を屈服させる手段』とかでしかない

の3点。「女は棒と画一的な刺激だけで大喜び」と信じ込んでる童貞男子/童貞女子か、たいしたテクニックもないくせ「女装して女とレズりたい」みたいなファンタジーを抱いてるヘテロ男性には良い作品なのかもしれませんが、あたしには合いませんでした。

棒が重視されすぎ

タイトルと表紙だけ見るといかにも百合/レズビアンエロ漫画な本作ですが、実は全12話のうち8話が女装少年×少女のヘテロセックスもの。終盤では主人公が少年の局部を握りながら

やっぱりこれがないとモノ足らないじゃない♥

などと呟いていたり、さらにそこに別の少女が「独り占めはなしよ♥」と参入してちんこを取り合ったりしています。残る4話では純粋に女性同士のエロが描かれますが、うち2話は双頭ディルド物だったりして、とにかく「棒」への執着が強い作品だと思いました。単にちんこ好きな読者層に合わせただけなのかもしれませんが、だとしてもあまりにも目線がヘテヘテすぎて萎え。

触り方がワンパターン

どの絡みも女体の触り方がおそろしくワンパターンです。判で押したように乳と股間しか触らない上に、胸への愛撫はひたすら乳首刺激のみ。相手に欲情するとか行為に興奮するとかいうより、「乳首」と「股間」という記号に夢中になっているだけ、といった印象を受けました。まるで全員が全員、女のコの体を共用部品で構成された「モノ」としかとらえられず、「誰でもこの部品を触ればこういう反応を返すはず」と思い込んでるバカ男ででもあるかのようです。あるいは、「女のコとHしてみたい」とか抜かすくせに、いざとなると自分が寝たことがあるヘタクソ男子と同じことしかできない間抜けなヘテロ女子みたい、とも言えます。萎えです、萎え。

女性カプの間に愛がない

ここが一番のネックだと思いました。女性同士のセックスのみが登場するお話4話のうち、実に3話は

  • 相手を屈服させ秘伝書を奪うためのセックス(第2話『エナメル忍者と本の番人』)
  • 相手を説得して部活の勧誘をさせるためのセックス(第3話『魔法部の春』)
  • 洞窟に取り残されてパニックし、落ち着くためのセックス(第6話『夏の海物語 前編』)

というパターンであって、別に相手のことが好きなわけでもなんでもないんですね。残る1話(第9話『音遠』)だけは、「音遠(ねおん)」と「理沙」の間に一応のカップル性がみられますが、それも非常に希薄ですし、総じて女性同士のエロはあっても愛はあんまりない1冊だと感じました。

ただし絵は綺麗

可愛らしくて描線も綺麗な絵柄は、とても魅力的です。絵柄重視で買う、という買い方はありでしょう。

まとめ

百合/レズビアン物としては、官能面でも愛情面でも今ひとつな作品だと思います。最初から女装少年×少女のヘテロセックスが目当てで、百合はオマケぐらいに思って楽しめる人なら、また違った感想が出てくるかもですが。ちなみにこのエナ女シリーズ、既にこれまでに『聖愛舐女学院』『檄! 愛舐女学院』の2冊が刊行されているんだそうですが、本作は独立したストーリーになっており、単品で読んでも大丈夫。前2冊についても、そのうち読んでみたいと思っています。