- 作者: 二宮ひかる
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- 発売日: 2009/08/10
- メディア: コミック
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予想外のボディブロー的ハッピーエンディング
周囲から浮いてる女子高生「畑中恵子」と「浅見椿」のバディもの、あるいは熱いラブストーリーの最終巻。ものすごく面白かったです。ゾクリとする展開と、熱い愛情、そして予想外の方向からずしんと響いてくるハッピーエンディングにただただ圧倒されました。
エンディングについて
何はさておき、まず、あの凄味のあるエンディングの話をしたいと思います。ネタバレにならないよう説明するのは難しいんですが、あれをハッピーエンディングと受け取らない人もいるんじゃないかとあたしは思うんですね。「霧のような光のようなトンネル」や「川」というモチーフ、その川べりで裸足でスカートの裾を持ち上げている椿の姿、なんてのは、あきらかに、ある1点を暗示しています。よく見るとカバー裏表紙の椿の格好も、その暗示に荷担していますね。で、そうした暗示をもってして、あれは一種のバッドエンドだと解釈する人もいるのではないかと。
けれどあたしは逆に、あれはまごうかたなきハッピーエンディングだと思うんですよ。最終話で椿が恵子に歌って欲しがった歌の歌詞、そして最後にようやく自分で口にした言葉、それから恵子のp. 148の独白などを鑑みるに、たとえ最悪の事態を迎えていても、この人たちはまた会って必ず(本当に必ず!)恋に落ちるだろう、という確信が怒濤の勢いで押し寄せてくるからです。これ以上に完璧な恋の成就があるだろうか、いやない。ダークな暗示は暗示としてやはり正しいのでしょうけれども、恵子と椿はもはやそれをも越えた、古文で言うところの「宿世こそありけめ」みたいなつながりで結ばれている、ということを指し示す結末だと思います。読んでいるこちらとしては、ひねりにひねったコークスクリューブローで完璧に心臓を打ち抜かれた感じで、その響きと強さにしばらく息が止まりそうでした。
熱い愛情について
上の方で書いた恵子のp. 148の独白と、ラストのアサミの台詞とが呼応し合い、はっきりとラブストーリーとして読めるお話になっていると思います。一見友情話とも受け取れる1巻から一挙に百合寄りになる2巻、そこからさらにパワーを増した愛と絆を見せつけまくる3巻と、一瞬たりとも隙を見せないストーリーの流れに脱帽。もはやこれは「百合」とか「同性愛」とかいうちっぽけな枠をも軽々と飛び越えた、強烈な愛の物語だと思いますね。
ゾクリとする展開について
今回はかなり生々しい、そしてサスペンスフルなシークエンスが多めです。それらが痛ましかったり怖かったりはしても決して悪趣味だとは感じさせないのは、余分な説明を小気味よくそぎ落としたシナリオによるところが大きいのではないかと。あと、生々しさの一端を担う本田の描き方が一貫して「しょうもない人」であり、ヒーローには絶対にならないところが面白かったです。現実にいるよね、ああいう人。ヒーローを設定して少女たちを救済させるのではなく、本田というキャラをあくまで「苦くてやるせない現実の一環」として描くところが、よかった。
まとめ
斬新で強烈な愛の物語でした。サスペンスフルな展開も、静かで力強い結末も、そして恵子と椿の熱い絆も、しばらく夢にまで出てきそうなほど強烈。ぜひ読んでください、そしてじわっとしたり心臓を打ち抜かれたりしてください。