石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『いんさつ』(のり、一迅社)感想

いんさつ (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)

いんさつ (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)

同人誌印刷所が舞台のギャグ4コマ(百合あり)

同人誌を刷っている印刷会社を舞台とする萌え4コマ。絵にちょっとわかりづらさは残りますが、ニッチな同人ネタの数々が面白いです。百合ネタについては、古典的な「そっちの人」系セクハラキャラが主体なところが今ひとつ。終盤で意外な方向性のカップリングも浮上するものの相思相愛ではないし、やはりどことなく古さが漂うため、百合部分はあくまでオマケと割り切って読むのが吉かと。

絵はちょっとわかりづらいかも

たとえばp12右側の作品の3コマ目なんですが、「歩いていた美咲の足が、地べたで寝ていた真紀枝のアゴにヒット」という場面のはずなのに、どう見ても「立っている真紀枝のアゴを誰か(誰かは不明)が垂直に蹴り上げた」ようにしか見えず、前後のつながりが読めなくて混乱しました。おそらく構図や背景の問題なのでしょうが、このように絵だけでは一瞬流れがわからなくなってしまう部分があるところがちょっと残念。

同人ネタが面白い

「早割」「割増」「ゴミ取り」「セットメニュー」「搬入」などなど、非ヲタにはよくわからないであろうネタがぎっしり。だからこそ面白いとも言えます。あえてターゲットをオタク層に絞り込むという思い切りの良さが爽快ですし、「印刷所の側から見た同人」という切り口も新鮮で楽しかったです。

でも、百合ネタは今ひとつ

まず、百合キャラの「多村真紀枝」が、乳を揉ませろと騒いだり、実際に許可なく揉んだり、デジカメで人の入浴シーンを撮ろうとしたりという古典的セクハラキャラなところが今いち。さらに、「多村はそっちの人だから……」と形容されていたりするところも下げ。はいはい、またしても女が好きな女はひたすらエロエロな人間で、「こっち=異性愛者=社会の中心」から遠ざけられた周縁の存在で、かつ、はっきりと口に出してはいけないスティグマなんすね。
一方、話の終盤からまた別個に女性同士のカップリングもクローズアップされたりはするのですが、

  • 好きになったきっかけが「相手の男装姿を見て、男だと思い込んで惚れたから」
  • 女だとわかった後で、それでもいいとして「茨の道なのはわかってます! でも自分に嘘は…」発言

というあたりがやっぱり古典的すぎ。そもそも百合ネタがメインの作品でもありませんし、♀♀部分にはあまり重きを置かずに読んでおくのが無難なのではないかと思います。

まとめ

オタクネタ多めの4コマ漫画としてはじゅうぶん面白いし、同人誌印刷所をお話の舞台にするという着眼点がとてもよかったです。難点は一部の絵がわかりづらいことと、百合ネタが全般的に古いこと。百合部分については「そういう要素もあるよ」ぐらいに受け取って、あくまで単なるギャグ作品として読むのが吉だと思います。