石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『わたしの大切なともだち(2)』(袴田めら、双葉社)感想

わたしの大切なともだち2(アクションコミックス)

わたしの大切なともだち2(アクションコミックス)

友情百合として申し分なし

記憶喪失の幼なじみ・橘に「私たちは親友だった」と大嘘をついてしまったデザイン学校生・海老沢笙子(エビちゃん)の物語、第2巻。思春期らしいアイデンティティ・クライシスとの戦いの中で、エビちゃんにとっての橘の大切さがどんどんアップして、友情百合として申し分ない展開になっています。クラスメイトの寒河江(さがえ)さんからエビちゃんへの不器用な好意表明も可愛かったです。また、話が重たくなりすぎないよう、細かくさしはさまれるギャグもナイスでした。

友情百合としての『わたしの大切なともだち(2)』

1巻もそうですが、コミカルな中にも「思春期のアイデンティティの獲得」というヘビーなテーマがあるんですよね、この作品。今回、エビちゃんはまだ何者でもないヘタレな自分をもてあまし、最悪の失敗をやらかしてしまうのですが、特筆すべきはどん底からの脱出のきっかけが橘を含めた「友達」であること。さらに、それを機にエビちゃんが自分の都合よりも橘の幸せを優先できるようになり、橘のためにある重大な決意をすること。要するに、自分を保つために偽りの仲良し度を維持することよりも、本当に相手のためになることを選べるようになるんですよ、2巻のエビちゃんは。相変わらず恋愛要素こそ希薄ではありますが、エビちゃんの成長をからめた友情ストーリーとして非常にぐっとくる内容だったと思います。

寒河江(さがえ)さんについて

第7話での寒河江さんとエビちゃんの会話が非常に良かったです。親しく「エビちゃん」と呼びたいのになかなか呼べず、「エビ……澤さん」と途中で言い換えてみたり、「エビしゃわさん」「エビちゃわさん」と惜しいところでくじけていたりするあたりの隔靴掻痒感がたまりません。そうやって顔を真っ赤にしながら「あなたの絵が好き」と伝える寒河江さんの姿が微笑ましく、かつちょっとだけ百合っぽくてキュートでした。

細かいギャグについて

これはもうほんとによかった。エビちゃんの復活をゲームのモード選択画面で表現するとか、ちょっと悲しい場面にさりげなくマスカラネタを仕込むとか、いちいち小技が効いていて、楽しく読めました。お話の緊張と解放の匙加減が非常にうまい作品だと思います。

まとめ

微百合な思春期青春ものとして楽しく読める1冊でした。3巻も楽しみです。