- 作者: 中里十,山田あこ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/03/18
- メディア: 文庫
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微妙に中途半端な印象。
商売繁盛の神様「恵まれさん」をしている女子中学生・絵藤真名と、真名に惹かれる橘淳子の物語。今回はふたりの沖縄旅行や、新キャラ・内井アキの登場などが描かれているのですが、お話が微妙に中途半端なような気が。目を引くべきはエピローグで明かされるちょっとした事実ぐらいで、あとは抽象論が多く、ドラマらしいドラマが起こっていない気がします。1冊まるごと「何かの前哨戦」といった雰囲気で、最後まで本論が出てこない感じなんですよ。あとがきを含めて202ページという薄さですから、ひょっとしたら本来は4巻(最終巻だそうです)と合わせて1冊になるはずだったものが、何らかの事情で分冊されたのかもしれません。あ、でも、相変わらず抑圧的な淳子のセックス観は面白かったです。あと、シリーズ全体に通底する、なんとはなしの意地悪具合も。
沖縄旅行について
美少女ふたりが沖縄にリゾート旅行というと、すわ水着だビーチだ萌え萌え展開だと思われるかもしれませんが、ぜんぜんそれっぽい展開にならないのが本作のいいところ。いや水着も海も出てきますが、「『萌え』のラベルを貼ったただのオナペット羅列」みたいな通俗的展開には絶対にならないんですよ。このへんの意地悪加減がこのシリーズらしくて好きです。
淳子のセックス観について
この巻でも元気にキスも手つなぎもセックスもしている淳子ですが、依然として真名との関係には抑圧的。セックスを宗教扱いしてみたり、真名への興味(または欲望)を別の欲求にすり替えたりしていた1巻の頃と、基本的には変わらないんですね。この痛々しい抑圧っぷり、もっと言ってしまえば欲望と抑圧の不整合、さらに短くまとめるなら「真名への愛憎」が、この巻の醍醐味かなあ。そのへんは面白く読みました。
本論はどこ?
おそらく「第五章 肩甲骨」のとある場面が3巻のクライマックスではあるのだろう、とは思います。この巻でずっと語られる「芸術」と「偽物」の話とつながってますし。でも、この出来事自体は事前に予想がついてしまう上に、起承転結の「転」というより、ここから生じる大きなうねりの起点のように見えてしまうと思うんです。起点だけ提示されて、その後いきなり幕が下りてしまうので、読んでいて「え、本論はどこ?」という気分になってしまいました。「序論、終わり」あるいは「起、承、終わり」みたいに、あたしには見えてしまったんですよ。
個人的には、五章での出来事より、エピローグの冒頭で描かれるある事実の方に衝撃を受けたりしました。たぶん、「第五章 肩甲骨」の出来事から思いっきり石を投げたらこの地点に着地するということなのではないかと(あー、嫉妬がどうのとかバレたからどうのとか、そういう話ではなくてね)。その石の軌跡はおそらく最終巻で明かされるのでしょうし、それを待つしかないのですが、なんとも煮え切らないものが残りました。
まとめ
単品で評価するのが難しい1冊だと思います。4巻(予定タイトルは『将来なにになりたい?』だそうです)と合わせて1冊として出してほしかったというのが正直な感想。とりあえず、早く続きが読みたいです。