
- 作者: 袴田めら
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2010/04/12
- メディア: コミック
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キュートで苦い友情ストーリー、堂々の大団円
デザイン学校が舞台の友情物語、第3巻。完結編です。いやー、よかった。堪能した。可愛くて、それでいて要所要所で心をえぐる袴田めら節が絶好調ですよ今回も。画面やストーリーの構成もみごとで、何度もじんわり泣かされそうになりました。微百合な友情ものとしてものすごく好きな作品です。
よかったところいろいろ
キャラクタたちの可愛らしさについては、まず表情がすばらしかったです。映画の中でのエビちゃんのひと味違う愛らしさや、橘の記憶を取り戻す前と後とでの顔つきの違いなど、こんなにシンプルな絵柄でなぜここまで繊細な表現が可能なのかと驚嘆。心理面のキュートさもいいですよね。修了制作でジタバタする皆さんの内面とか、いかにも青春っぽい甘酸っぱさにあふれていて、たまりません。
次に、心をえぐる部分に関しては、第16話以降の展開にとどめをさします。エビちゃんの覚悟や橘の側の真相など、ズキズキきました。「可愛い」「甘い」だけで終わらない、この身を切られるような切なさがまさにこの作品の真骨頂。
最後に構成について。1巻以来の「橘の記憶喪失の理由」という伏線が、3巻の真ん中あたりでもう回収されてしまうことにまずびっくり。3巻の中でもうひとつ大きな伏線が仕込まれていて、最終話で完璧なオチがつくところにまたびっくり。ハラハラしながら読み進め、最後でやられたーと唸り、そのまま何度も何度も読み返してしまいました。
ストーリーだけでなく、画面構成もまた心憎かったです。たとえばp. 106の、月をバックに立つ橘の姿とか。他には、pp. 107 - 108の、雨をモチーフにエビちゃんの孤独が描かれる場面とか。どちらも余分な台詞を一切入れず、絵だけでキャラの状況や心理状態をぐいぐいと伝えてくれますよね。漫画を読む醍醐味って、こういう「絵」の力を堪能するところにあると思うんです。
「まるでラブレターみたいな」物語
真正面から「恋愛」を描いたものだけが百合であるという定義を採用される方にとっては、この漫画は非百合作品なのかもしれません。けれど、作中でエビちゃんが描く漫画のタイトルが『わたしの大切なともだち』で、それが「まるでラブレターみたいなマンガ」(p. 36)と評されているところは無視できないとあたしは思うんですよ。エビちゃんの作品がこの本そのものといわば入れ子のような構造になっているのは、決して偶然ではないはず。というわけで、あたしはこの『わたしの大切なともだち(1〜3)』は、エビちゃんから橘への、そして橘からエビちゃんへの、「ラブレターみたいな」友情百合漫画だと思っています。それもそんじょそこらのラブストーリーが裸足で逃げ出すぐらい上等の、です。
まとめ
可愛くってキュンキュンくる、すばらしい最終巻でした。上の方では描ききれませんでしたが、ギャル子さんたちの活躍もよかったよ! これでもうエビちゃんたちのお話が読めなくなるのかと思うと寂しい限りです。当分1巻から3巻までをまとめて読み返して萌え転がっていようと思います。