- 作者: マシュー正木
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2010/07/17
- メディア: コミック
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百合っ子の恋を助ける「ヒメコイ部」の迷走と健闘
「桜」と「緑」の2人の女子高生が、乙女の恋を助ける「ヒメコイ部」として頑張る百合コメディ。百合恋愛のとらえ方が終始ポジティブなところが好印象でした。ただし、少年誌のギャグ漫画を思わせる独特の絵柄や、パンツ全見せなどの下品ギャグは、読み手によって好き嫌いが分かれるかも。個人的には「百合も多様化してきたなあ」と面白く受け止めましたけど。
「百合」のとらえ方がポジティブ
学園理事長である桜のバアさんからして、女学生時代に「お松っちゃん」との苦しい恋を経験済みという設定がまず楽しかったです。風紀委員「白百合」さんの母親が女子同士の恋愛を糾弾する理由が
という、要するに「失恋のハライセ」(p. 81)だったりするところにもウケました。昨今では、百合を「異端」「禁忌」扱いしない作品はどんどん増えつつありますが、3世代にわたってまで女のコ同士で当たり前に恋をしている世界を描いてくれたのは、この漫画が初めてでは? この風通しのよい世界観には、ニヤリとさせられました。女は魔物ですわ ちきしょうあんなに愛し合ったのに
百合姫っぽくない作風です
少年誌系のやや古めのギャグ漫画っぽい絵柄や、桜の恥じらいゼロの言動(乳は見せるわパンツは見せるわ)などは、百合姫の諸作品の中ではかなり異質な感じ。「百合と言えばキラキラフワフワな乙女の嬉し恥ずかしキャッキャウフフ」とお思いの方には、少々衝撃的な作品かもしれません。
でも、こういう作品が出てきたというのはすなわちジャンルの多様化の表れであり、慶賀すべきことだとあたしは思うんですよ。キラキラフワフワも悪くはないんですが、それが「百合と言えば絶対にこう」のように規範化されてしまったら、結局ジャンル全体が袋小路に陥ってしまうのではと思います。百合姫は芳文社の「つぼみ」に比べると作風の幅が狭い印象があったのですが、そろそろ認識を改めた方が良いのかもしれませんね。
なお誤解がないように申し添えておきますが、「キラキラフワフワ」路線ではないにせよ、「嬉し恥ずかし」な部分はきっちりと仕込まれた作品ですよこれ。特に緑から桜への想いが白眉です。本編で少しずつ気持ちが盛り上がっていくところといい、描き下ろし「ボーナストラック・オブ・ヒメコイ」でのアレといい、笑いの中に甘酸っぱい恋模様がほの見えるところがよかったです。
まとめ
独特の作風は多少読み手を選ぶかもしれませんが、女女恋愛に対するリベラルさや、ギャグに隠れた甘酸っぱさなどがよかったです。ゴーイングマイウェイな百合ギャグ作品として、長く記憶に残るに違いない1冊だと思いました。