石壁に百合の花咲く

いちレズビアンの個人的メモ。

『レズビアン(2) 蜜の部屋』(千之ナイフ、青林堂)感想

レズビアン(2) 蜜の部屋

レズビアン(2) 蜜の部屋

美とエロスを追求したレズビアン漫画

先日レビューした『レズビアン 少女愛』の続編です。今回は男性との絡みが一切なく、100パーセント少女同士のお話となっています。全部で7話の短編が収録されていますが、どれも徹底的に「少女たちの睦み合いの美しさ」の描出に力点を置く作品であり、逆に言うとストーリーはあってないようなもの。あくまでも、フェティシズムに満ちたさまざまなシチュエーションでの美とエロスを堪能するための1冊だと思います。ちなみに全年齢向けですが、どのお話もセックスシーンありです。

フェティシズムに満ちた美とエロス

まず場面設定がすごい。ヨーロッパの古い教会、メイドを養成する女学院、雨のプールサイド、放課後の音楽室、浜辺、嵐で孤立した別荘、夜の植物園等々、詩的な美しさに満ちたものばかりで、これだけで既に想像力がかき立てられます。

キャラクタの服装からも、研ぎ澄まされた美意識を感じ取ることができます。特に制服へのなみなみならぬこだわりが面白かったです。緻密に描かれたゴス風メイド服からセーラー服、ワンピースタイプのお嬢様学校風制服、そしてエレベーターガールの制服などが、キャラたちの清楚さと抑制されたエロスのメタファーとして非常にうまく機能していると思います。

また、キャラたちの行動そのものもフェティシスティックでよかったです。タイトル通り甘い蜜のようなお話を集めた1冊ながら、鞭によるお尻叩きから首輪プレイなど、器具を使ってのソフトなSM要素もあるんですよ。少女たちがそれらの行為をあくまで甘美なものとして楽しんでいるあたりが、たいへんエロティックでした。

ストーリーはあってないようなもの

「愛し合うふたりが身体を重ねて親密度を高めていく」という単純な筋立てがほとんどで、どのお話にも起伏らしい起伏はありません。でも、それがどうした。これはあくまでお話のすみずみまで張り巡らされた美的感覚を楽しむための作品であって、この状態で既にパーフェクトなのだと思います。変にドラマ性を盛り込んだりしたら、かえって作品の良さがぼやけてしまうのではないかとすら感じました。

セックスシーンについて

濃厚で、それでいて品のある官能表現がユニークでした。どのHシーンも男性向けエロ作品にありがちなエグさは少なく、かと言って実際のレズビアンセックスともまた違った独特の雰囲気があるんですよ。「ある種の耽美主義に基づいて入念なデフォルメをほどこしたレズビアンセックス」という形容がもっとも正確でしょうか。

まとめ

とろりと甘く蠱惑的なレズビアン漫画です。幻想的なシチュエーション設定も、制服や小道具にみられるフェチなテイストも、そして少女たちの美しさやエロティシズムもみな好印象。ストーリーこそ予定調和的ですが、作品全体にみなぎる独特の美的感覚を味わうだけで十二分に元が取れます。エロありの耽美なレズビアン表現がツボな方におすすめです。