わたしたちは皆おっぱい (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
- 作者: 東風実花
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2010/07/12
- メディア: コミック
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おっぱい大好き少女の友情ギャグ漫画
おっぱい大好きな中学1年生・鎌上貴子を中心とする友情物語。読み始めこそ「ただのおっぱいフェチなヘテロ女子の『女同士はノーカウント☆』系の話かも」と警戒したのですが、その予想はいい意味で裏切られました。おっぱい部分もとても面白かったし、その上で貴子の友人たちも全員一癖あるところがなおよかったです。タイトルはむしろ「わたしたちは皆ヘンタイ」にした方がいいんじゃないかと思うほど。友情部分もよく練られており、「おバカで爽やかで、かすかに百合な友情もの」としておすすめです。
「女同士はノーカウント☆」ではありません
まず貴子の人物紹介からして「むっつりおっぱい大好きっ子」なところがポイント。そう、貴子は、同性同士であることを免罪符にあつかましくセクハラするような、よくある痴女タイプの百合キャラなんかではないんです。むしろその逆。燃えたぎるおっぱい愛と、秘めたる欲望を知られないようにという苦悩とのギャップが、貴子というキャラの醍醐味だと思います。
そんな貴子も話が進むごとに着々とおっぱい友達(おっぱいのでかい友達とか、微乳の良さに開眼させてくれる友達とか)を増やしていくんですが、その過程が意外と地に足がついているところも面白かったです。典型的なのが、第5話のお泊まり会のエピソード。オタ向けコンテンツでは、女だらけのお泊まり会というと、もうお約束的に「風呂場での触りっこ」だの「着替え・睡眠中の生ポロリ」だのが描かれるものだと思います。でも、あれってあくまで男性による男性のための「女ってきっとこんなことやってるんだぜ(ハァハァ)! 俺たちも混じりてえよな(ハァハァ)!」という妄想具現化サービスだと思うんですよ。この作品は、もっと女のコ寄りの視点から「お泊まり会におけるおっぱい」を描いてくれていて、ニヤニヤさせられました。あの細やかでリアル感あふれる演出、最高です。
わたしたちは皆ヘンタイ
貴子だけがヘンタイなのではなく、貴子の友達連中も皆それぞれ方向性の違うヘンタイなところが面白かったです。つまり、「女なのにおっぱい好きなんてヘンタイだけど、あたたかく見守ってあげましょう」みたいな上から目線なお話ではなく、
「内容は違うけど…わたし達は妄想仲間でしょ」
「うん…良かった…!」
とか(p. 51)、
「イヤ――ッ!! こんな変態と友達になりたかったなんて――――!!」
「お互い様――!! それにっ!」(間)
「もう友達でしょ!」
とかいう会話(p. 79)が頻発する物語なんです。この「あなたもわたしも皆ヘンタイ」な空気が大変居心地よく、楽しめました。
友情部分もいいですよ
女のコたちの感情のやりとりがきめ細やかで、微百合な友情ものとしても全然いけます。特に貴子が、いざという場では「わしづかみのチャンスをみすみす」(p. 126)逃してまでも友達を守るところにぐっときました。また、この部分に限らず友情展開のところの決めゴマがいちいち深く、正統派少女漫画の文法を踏襲しているところもよかった。やはりこれはおっぱい「だけ」の微エロ漫画などではなく、おっぱい神にあたたかく包み込まれた友情物語なのだと思います。
その他いろいろ
- 瑠海音(ルミネ)が「貧乳ツインテールツンデレ」というありがち属性固め打ちなところが、最初はちょっと気になりました。属性ってスパイスみたいなもので、それだけではおいしい味は出ないと思うんです。話が進むにつれてもう少しダシが効いたキャラになって来たので、ほっとしましたけど。
- 読み切りシリアス作品「海と泡沫」の痛々しい思春期ぶりもよかったです。ほのかに百合な結末も。
まとめ
真正面から百合なお話というわけではないのですが、おバカでかわいい友情ストーリーとしておすすめです。あふれるおっぱい愛が楽しいし、生活の中のおっぱい描写がそこらの微エロ漫画より頭ひとつ抜け出ているところもよかった。何より、貴子がひとりヘンタイ視されるのではなく、「わたしたちは皆ヘンタイ」的なゆるさがあるところが最高でした。2巻以降も楽しみ。