それでもやっぱり恋をする。 (IDコミックス 百合姫コミックス)
- 作者: 倉田嘘
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2010/12/18
- メディア: コミック
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絵は綺麗でオチもハッピー。ただし、詰めが甘いところも。
ネトゲや裏BBS、イラストSNSなどを触媒として深まる絆を描く百合短編集。相変わらず端正な絵柄が魅力的です。結末のハッピーさもここちよく、特に全部の話がつながるエピローグ「intermission」が楽しかったです。ただし、一部の作品でストーリーに詰めの甘さがみられるところはやや残念。
絵の吸引力がすごいです
少年誌または青年誌寄りの端正な絵柄はさらに緻密さを増しており、特に表情の吸引力がすごいです。中でも、第2話「BBS」の主人公・郡山さんの太眉の魅力にはノックアウトされまくりでした。背景やモブまで手を抜かない画面づくりも、とてもよかったです。
ハッピーなオチもいい感じ
どの話も、ほのぼのとしたハッピーエンドが味わい深かったです。ハッピーな部分に至るまでの波風も、ネットユーザにとって身近なものばかりで、感情移入しやすいと思います。特に第4話「BLOG」の主人公の、「自分たちの関係は、ブログにさえ書けないような『良くないこと』なのか」(要約)という苦悩のくだりは、いちレズビアンとしてうんうんとうなずきながら読みました。周囲に全伏せしなきゃならないつらさや怒りもわかるし、うかつな情報開示を止めたい恋人の気持ちもわかりますからね。そこから軽いひねりを加えて、意外で、かつ希望に満ちた結末に着地していく流れが、とても面白かったです。その延長にある後日譚「intermission」も、ネットがレズビアン・コミュニティに与えたプラスの面を確実にとらえていて、楽しく読むことができました。
ただし、一部詰めが甘い感じ
第1話「WIRED」と第2話「BBS」は、主人公が都合良く惚れられすぎな気がします。また、第3話「PICSEE」では、悪役があまりにも親切に「これからの犯行計画」をしゃべってくれすぎでは。どれもページ数の都合なのかもしれませんが、なんとかもう少し話を練り込んでほしかったところ。
まとめ
一部に脇の甘さも感じられるものの、「ネットとレズビアン・ラブ」というテーマでうまくまとめあげられた良作だと思います。キャラたちの生き生きした表情や共感しやすい題材、幸福感あふれるオチなどが、とてもよかったです。