Dollar Bills / 401(K) 2013
米国テキサス州の学校区が、元生徒のスカイ・ワイアット(Skye Wyatt)さんから「部活のコーチに性的指向をアウティングされた」として訴えられ、この元生徒に7万7千5百ドル(約790万円)を払うことに同意して和解に達したそうです。しかしながらこの学校区、コーチがしたことが悪いことだったと認めてはいない模様。
詳細は以下。
Kilgore ISD pays $77K in outing lawsuit - Longview News-Journal: Local News
このアウティング事件が起こったのは2009年のこと。当時16歳だったワイアットさんは、学校のソフトボールクラブのコーチ2人から、ワイアットさんが同性愛者で女の子とつき合っているという噂について質問されたのだそうです。それは事実ではあったものの、ワイアットさんはとっさに否定。コーチたちは憤慨し、ワイアットさんを名誉毀損で訴えると脅し、さらにワイアットさんの母親を呼び出して、おたくの娘はレズビアンだと告げたのだそうです。
ワイアットさんは、このコーチたちは合衆国憲法、州憲法および州のコモンローで保障されたプライバシーの権利を侵害したとしてキルゴア独立学校区を訴えました。公判2週間前の2014年2月21日、学校区がスカイさんに7万7千5百ドルを支払うこと、職員にプライバシーや差別に関する年次研修を受けさせること、職員/生徒/保護者に配るハンドブックやWebサイトに反差別について記載することなどに同意し、和解に達したとのこと。
以下、ワイアットさんの弁護士ジェニファー・ドウン(Jennifer Doan)さんのことば。
「スカイがこの訴訟を起こしたことのすばらしい点は、これが自分のためだけでなく、他の人たちのためのものでもあるということです」
“The great thing that Skye did in bringing this lawsuit was that it was not just for her, it was for others,”
ほんとにそうです。親に同性愛者だとばれたせいで家を追い出されてホームレスになる子だっているんですからね。日本でだって、「お前を殺して私も死ぬ」と包丁持った親に追いかけ回されたなんて話はざらにあります。それでなくとも性とはもっともプライベートなことなんですから、カミングアウトするかしないか、するとしたらいつかというのは当人にゆだねるべきであって、第3者が勝手にべらべらしゃべっていいものでは決してないんです。その意味で、ワイアットさんが泣き寝入りせず法的に訴え、日本円にして790万円ものお金をもぎとったことには大きな意義があると思います。
ただね、冒頭にも書いた通り、この学校区は結局何が悪かったのかわかっていないか、あるいは少なくとも認めたくないようなんですよ。というのは、同日学校区が出した声明には、こうあったそうですから。
キルゴア自治学校区は、従業員のおこないはすべて法にかなったことであったと信じている。
The Kilgore ISD board believes that the actions of its employees were in all things lawful.
じゃあなぜあれだけのお金を払うことに同意したのかという点については、訴訟が長引くと訴訟費用が保険でカバーしきれなくなるから、あくまで「ビジネスとして」同意したんだそうですよ。へー(棒読み)。百万歩ぐらい譲ってそれに同意するとしても、そもそも学校職員が生徒の性的指向を聞き出そうとすること自体がセクハラだと、あたしは思いますけどね。これで少しは痛い思いをして、失礼なふるまいをやめてくれるといいんだけど。